■sculptor 2021 (2021年)

Yann Vasnierの調香のまま、リフォーミュラしたのだそう。

ジュニパー、アイリス、シプリオール

オリジナルが透明感のあるフェンネルアイリスだったのに対し、リフォーミュラとなった香りはアニスの部分が全くなくなり、代わりに土っぽいシプリオールとアロマティックなジュニパーに置き換わりました。アロマティックなジュニパーとアイリスがフレッシュに広がるのですが、同時にアーシーなパーツも香り、そこから少しオイリーにも感じられるウッディムスクへと変化していきます。アイリスだけではなくヴァイオレット調の香りも強くなったようで、例えるならアクリル樹脂の調香から大理石の彫刻へと変化したよう。どちらも個性的で楽しませてくれます。(09/09/2022)


■actor (2021年)

若手のジュニアパフューマーGael Monteroを起用し、アクターを表現。他の誰かになりきることは、物事を違った視点で見ることができる。様々なキャラクターとなり、他人の人生を生きることが、俳優という生き方である。

ピンクペッパー、ローズ、フランキンセンス

香りとしては比較的わかりやすいスパイシーなアロマティックローズです。メンズっぽい側面がありつつ、フェミニンにも感じられる側面があるのがローズの利点で、メンズっぽくするために少しアロマティックなトーンを強調したようです。クラリセージやゼラニウム、アンバーウッディ系の比較的ドライな香りを入れて、全体的にはオリエンタルというよりもシャープなスタイルとなっています。もちろんユニセックスで楽しめるローズで、トップからフランキンセンスは感じられますが、後半の方が顕著となります。どっしりと存在感のある香りではなく、場所に馴染んでわからなくなるような、周囲に溶け込みやすい香りです。(09/09/2022)


■Painter (2018年)

Jordi Fernandezによる調香で、テーマは画家。

ブラックペッパー、シーウィード、ケード

弾けるスパイスを微かなスモーキーノートが支えるスパイシーで個性的な香りで幕開けです。どことなくアニマリックではないウード風というか、昔からあるインセンスの黒方に近いようなスパイシーウッディで、ケードの肌への残り方が、実にインセンスを焚いた時の残り香のようで、少し画家のイメージとは離れてしまいますが、お香が好きな方には良いのではないでしょうか。ただ1つ、この香りはとても軽いのです。スモーキーなウッディノートなのだから、もう少しどっしりと厚みがあっても良さそうなのですが、この香りは消えてしまいそうな儚さを感じる濃度で香り、あっさりと終わってしまうのです。ベースに厚みを持たせるか、濃度をもう少し上げていた方が、お香好きな人たちの支持は得たのではないかと思います。でも、とても素敵ですよ。(30/07/2019)


■Ballerina (2018年)

Jordi Fernandezによる調香で、テーマはバレリーナ。

ホワイトアンバー、アイリス、ブラックカラント、ローズ

バレリーナと言えば、ロシアのバレエ団がパリ公演をしたことをきっかけにバレエシューズのレザーの香りが大流行し、シャネルがCuir de Russieという香りを発売したという逸話があるほどレザーを印象付けられていますが、こちらはレザーではなくアイリスで表現しています。しかも、ブラックカラントやローズが香る、フルーティーフローラルなアイリス。それは、バレリーナの衣装をイメージしたふわふわとしたピンクとホワイトのイメージで、とても可愛らしく香ります。香りはやがてたっぷりのムスクに包まれて肌に馴染んで消えていくのですが、可愛らしさはそこまで長く持続しませんので、最後はシックに終わります。(30/07/2019)


■Sculptor (2018年)

Yann Vasnierによる調香で、タイトルは彫刻家。

アイリス、スターアニス、フェンネル、パチョリ

何の彫刻なのか。それは石なのか木なのか。どうもこの香りは石から削り出すという彫刻家をイメージしたようで、フェンネルとアイリスがとてもアロマティックに香ります。アニスというよりもフェンネルの香りがそのままで、それが爆発するような香り方ではなく、フレッシュな香りとムスクに包まれて、ふわふわと香るのです。アニスやフェンネルを強く打ち出した香水はゲランのアクアアレゴリアくらいしか思い浮かびませんが、これは久しぶりに良いコンビネーションだなぁ・・・と使いたくなったのでした。(29/07/2019)