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Sampleレヴュー

■L'Iris de Fath (2023年)

1947年に発売されたIris Grisが、2018年にPatrice Revillardによってパルファムとなって再販。とても人気を博したパルファムの発売から5年を経て、EdPが発売となりました。Le Galion、Lubin、Jean Patouなどの再生に尽力したThomas Fontaine氏が、5年前の展示会でパルファムを試して驚かれていたことを思い出しました。パルファムの濃度を下げることで、パルファムを使用しない人たちをも魅了したいという目論見だったのですが、濃度を下げたらバランスが崩れてしまい、結果として再調香したのだそう。使用されているアイリスの香料はFirmenichのもの。

 

 

トップ:ヴァイオレットリーフ、ベルガモット、ピーチ
ミドル:アイリスバター、ジャスミン、トルコローズ、ヴァイオレット、ライラック、カーネーション、イランイラン
ベース:ベチバー、ベンゾイン、トンカビーン、ムスク

展示会で試した際、ムエットですでにその品質の良さにため息が出た香りでした。サンプルの用意はまだなかったのですが、その場でサンプルにして渡していただけたため、レヴューが可能となりました。

そんなにいろいろ入っているの? と不思議に思うほどパウダリーでウッディなアイリスが広がります。アイリスのフレグランスとしては金字塔なのではないでしょうか。アイリスの香料のアイリスらしいトップノートから、ウッディノートな残り香までが、様々な香料に支えられて伸びやかに広がり、全てがアイリスを邪魔することなく、アイリスのシングルノートのように香り続けます。何度も試しているとヴァイオレットリーフがアブソリュートであったり、ベチバーが支えていることが感じられたりしますが、基本的にはアイリスをリッチに楽しむための1本です。30mlのEdPが265ユーロで発売に。この価格は仕方がない。(22/05/2023)


■Jasmin de Toscane (2023年)

Jean-Christophe Heraultによる調香で、トスカーナに咲くサンバックジャスミンをテーマとした香りに。

 

 

トップ:グレープフルーツ、フリージアアコード、ペティグレン
ミドル:インディアンジャスミン、サンバックジャスミン、タスカンサンバックジャスミン
ベース:シンフォニド、ベンゾイン、ヘーゼルナッツアコード

香りはフルーティーなサンバックジャスミンでスタートです。ジャスミンの香りはピーチなどフルーツを入れると華やかになり、ジャスミンの中のワイルドな部分が軽減されるのですが、この調香はまさにそこを意図したのか、とても美しいフルーティーなジャスミンとなって広がります。サンバックジャスミンのもつスッキリとした部分をフルーツが盛り立て、春に咲くハゴロモジャスミンのように明るく広がるのです。どこまでも香りはジャスミンで、フルーツが抜ける頃からサンバックジャスミンというよりもインディアンジャスミンに感じられるようになるのですが、安定剤のようにベースに配されたオリエンタルノートがインディアンジャスミンと相性が良いのです。最初から最後まで、配された全ての香りはジャスミンたちを彩るブーケの中のカスミソウのような役割で、ウエディングにぴったりなフローラルです。(19/04/2023)

 

 

■Le Loden (2018年)

ジャックファットが愛用していた衣類の中にローデンという厚手の防水服があったそう。それに彼はウールでドレスを作ったり、ダークグリーンのローデンジャケットを愛用していたりしたことから作られた香りで、調香はLuca Maffeiが担当。

トップ:グリーンマンダリン、ベチバー、ジンジャー、ピンクペッパー
ミドル:ゼラニウム、ベチバー、ラズベリーリーフ、ジュニパーベリー
ベース:イランイラン、ベチバー、タバコ、パチョリ

液体はテーマに合わせてグリーンとなっていますが、香りはブラウンなイメージのベチバーです。トップからベースにかけて、長くベチバーが軸となるように、数種を重ねているのでしょう。とても香ばしい精油のベチバーが、温かみのあるアロマティックウッディとなって香り、その他全てのものはベチバーという骨格に付随した微かなアクセントです。ベースのタバコとパチョリが感じられるようになると少しメンズっぽいかな、とも思いますが、ベチバー好きな方ならば間違いなく楽しめる香りだと思います。(09/08/2019)


■Velours Boise (2018年)

ベルベットウッディというタイトルは、冬に羽織られたイヴニングガウンを思い起こさせるもの。調香はLuca Maffeiが担当です。

トップ:ベルガモット、ダヴァナ、スパイス、マテ
ミドル:イモーテル、ウイスキー、キャロットシード、パチョリ
ベース:ニューカレドニアンサンダルウッド、アルメニアウッド、ガイヤックウッド、アンブロキサン

第一印象はシナボンでした。それはシナモンが甘く、少し香ばしく香ってスタートしたからです。甘苦いイモーテルにスパイスが重なり、更には少しハニー調の甘さも感じられるようになってきます。それらをグルマンに感じさせないのがウッディベースで、ChanelもCoco Noirから産地を切り替えたニューカレドニア産のサンダルウッドが使用されています。品質が良くてオーストラリア産よりも人気なんですよ。個性的だけどとても楽しめる香りとなっています。(09/08/2019)

 

 

■Red Shoes (2018年)

1948年のバレエ映画Red Shoesのため、バレリーナの衣装を担当したのだそう。1950年に彼は自身のモデルベッティーナのために、同じ名前の赤いドレスをデザインしました。調香はCecil Zarokianが担当。

トップ:ブラックカラント、レッドベリー、グレープフルーツ、アルデヒド
ミドル:ダマスクローズ、ゼラニウム、ジンジャー、ピンクペッパー
ベース:パチョリ、カシミアウッド、ムスク

ハッ、これはアルデヒドだったのか。と、調香を後から見て気づきました。可愛らしいベリー系のフルーティーフローラルがメタリックに香ってきたのです。それは通常良くあるアルデヒドではなく、少しマリン系、オゾン系のアルデヒドで、可愛らしさをとてもクールなスタイルへと変えています。ブラックカラントとグレープフルーツはともに苦みのあるフルーツとして相性も抜群で、レモンやベルガモットよりも引き立て合う組み合わせです。彼女は少しシャンパンっぽいニュアンスを表現したかったのかもしれない、と感じたのはLes Liquides ImaginairesDom Rosaを彷彿とさせる香りだったからでした。同じくカシスとグレープフルーツにメタリックなローズを合わせた香りですから。(08/08/2019)


■Tempete d'Automne (2018年)

秋の嵐というタイトルは、ジャックファットのモデルだったベッティーナに付けられたあだ名。それは、ジャックファットが彼女の髪を1センチにしてしまったから。そのおかげで彼女は神々しくなったようです。

トップ:ベルガモット、オレンジ、マンダリン、ピンクペッパー
ミドル:シナモン、コリアンダー、イランイラン、ホワイトブロッサム、ラベンダー
ベース:サンダルウッド、トンカビーン、ミルク、ムスク、レザー

ラベンダーをアクセントに使用することで、とてもマニッシュなフェミニンさを表現したのだと思いますが、香りはシナモン調のオリエンタルです。決して悪くはないのですが、どうしてもとてもユニークなVelours Boiseを香ると、Velours Boiseの方に軍配が上がり、こちらが平坦に思えてきます。ただ、Velours Boiseのシナモンは持続をしないのに対し、こちらはシナモンからやがてミルキーなサンダルウッドへと変化していくミルク調の香りですから、根本的には別の香りなのですが。とても冬に合いそうな温かみを感じるミルキーな香り。(08/08/2019)

 

 

■Lilas Esquis (2017年)

アートディレクターのRania Naimは最初からレッド、パープル、ゴールド、ピンクの4つのカラーを決めていたそう。その色を元に調香をしたのはLuca Maffeiです。彼にとって初めてのライラックを軸とした香りになりました。ライラックはシナモン調の成分を含んでいるのですが、液体を透明にして最後に着色する必要があったため、合成香料の中でも透明なものを使用したそう。シナモン調の香りの香料は黄色が多いのです。また、使用したリンデンブロッサムはアブソリュートだそうですよ。

トップ:ベルガモット、ヒヤシンス、ブルーベル
ミドル:ライラック、ヴァイオレットリーフ、アンジェリカ、リリー、マグノリア、リンデンブロッサム
ベース:アンブレット、アンブロキサン、ムスク、アンバー、ウッディノート

なるほど、ライラックですね・・・という香り。ヒヤシンスとライラックを軸としたグリーンフローラルで、成分的に見ても二つはとても相性の良いフローラルです。シナモン調のフローラルノートがリンデンへと引き継がれ、さっぱりとでも少し個性的に輝きます。リンデンブロッサムのアブソリュートはタバコっぽいニュアンスを含んでいるのですが、その部分は前に出過ぎることなく、基本的には少し柔らかめなヒヤシンスとライラックがムスクに付けていくというのが全体像で、不思議なことに最後はフィグのようになって消えていきます。(19/05/2017)


■L'Oree du Bois (2017年)

テーマカラーはゴールド。L'Oree du Boisは、1949年にRita HayworthがAli Khanと結婚した際に着ていたというJacques Fathのドレス。それは白黒写真でしか残っていないので白ですが、結婚指輪はゴールドで、ウエディングにゴールドカラーは欠かせないと感じたRania NaimとLucaはこの香りをミモザでゴールドに。

トップ:ベルガモット、イエローマンダリン、ネロリ
ミドル:ミモザ、オレンジブロッサム、ブルーム、イランイラン
ベース:サフラン、クミン、シナモン、サンダルウッド、ハニー、アンバーグリス、ムスク

香りは、トップからミモザらしいテイストを感じさせつつも、どこか懐かしいクラシカルさを湛えたミモザで始まります。少しグリーンで少しハニー。でもキュウリのようなグリーンではないため、生花そのものの香りではありません。飽くまでもブーケとして成り立っているミモザなのですが、予想していたよりもずっと深みのある香りです。この中に彼はFirmenich社の天然香料である特別なハニーオイルを使用したそう。クミンは感じられないものの、おそらくハニーとミモザにクミンを合わせてカッシア風のミモザノートにしたのでしょう。Rosso Epicureoもそうですが、とてもシックです。(19/05/2017)


■Rosso Epicureo (2017年)

Lucaは、IFF傘下のLaboratoire Monique Remy社のチュベローズを使用し、結婚式の赤のドレスをイメージして調香したのだそう。セクシーさは、カシスとシャンパンローズでカクテルのキールロワイヤルを作り、赤に合わせてみた、と。美食家、快楽主義者の赤きカクテル、ですね。

トップ:ブラックカラント、山椒、ベルガモット、ビターオレンジ、プラム
ミドル:チュベローズ、ローズ、オレンジブロッサム、ジャスミン、イランイラン
ベース:パチョリ、アンバー、バニラ、ムスク

チュベローズ自体、花が白いため、どうしても赤いイメージにはなりづらいのですが、そこを敢えて使ってみたのが彼のチャレンジでした。香りは確かにチュベローズを軸に、フェミニンなフローラルとしてまとめられています。でも、トップでは微かな酸味、シトラスがあり、ベースのパチョリも感じられ、ホワイトというよりももう少し色のついたイメージなんですよね。セクシーでフェミニンなフローラルブーケですが、華やかというよりシックで、少しクラシカルに感じられるほどです。チュベローズの中にはピーチがあるのですが、そこを強調したFracasのようなタイプではなく、もっと穏やかでシンプルなムスクに溶け込んだチュベローズの香りです。(18/05/2017)


■Les Frivolites (2017年)

Jacques Fathによるランジェリーコレクションをタイトルとした香りでテーマカラーはピンク。Lucaはピンクでランジェリー、このタイトルを聞いた時、何故だかわからないけれど、マリーアントワネットを思い浮かべたのだそう。だからローズドゥメイにマカロンのようなイメージを重ねたのだと。皮膚感を出すためにスエードを使用したそう。

トップ:ベルガモット、オスマンサス、ピンクペッパー
ミドル:ローズドゥメイ、ライチ、ラズベリー、ヘリオトロープ
ベース:スエード、アイリス、サンダルウッド、アンバー、ムスク

Lucaによる4種の中では一番わかりやすくて使いやすい香り。ローズが軸ということもあり、でもローズだけではなく可愛らしいフルーツもあり、さっぱりとまとめられています。でも、パウダリーさが上品に香りますし、押しつけがましいようなフェミニンさはありませんので、春風に揺れるワンピースのようにふわふわと可愛らしく香るのではないでしょうか。このイメージならばランジェリー風というコンセプトにとても合致しているのかも。スエードは強くなく、可愛らしいまま消えていきます。(18/05/2017)

 

 

■Vers Le Sud (2015年)

コルシカ島やトスカーナの丘を散歩するイメージで作られたウッディマリン。

トップ:グリーンリート、レモン、ラベンダー
ミドル:マリンノート、フローラルノート、フィグリーフ、ヴァイオレット
ベース:オークモス、ムスク、ウッディノート

Curacao Bayの方にフィグが感じられましたが、こちらも確かにフィグリーフです。グリーンノートが生き生きと香り、マリンノートは強くはなく、ラベンダーが少しだけメンズっぽく感じさせますが、それもトップだけで薄れ、全体としてはとてもユニセックスなまとまりに。Curacao Bayの方が果肉っぽいフィグだったのに対し、こちらの方がグリーンが強くリーフ系なのが違いです。また、こちらはフィグが軸となっていますが、Curacao Bayはトップからミドルで消えていくのも違いですね。夏らしい爽やかなグリーンフィグから、フィグウッディとなり、最後にモスっぽいテイストが感じられるようになって消えていきます。(17/05/2017)


■Curacao Bay (2015年)

ブルーキュラソーというとカクテルが浮かびますが、青い海をイメージした香りに。

トップ:レモン、タンジェリン、ペティグレン、オレンジ、グリーンノート
ミドル:マリンノート、フランジパニ、ブラックカラント
ベース:ムスク、アンバーグリス、ウッディノート

マリンノートがどこまで主張しているのかがポイントなのですが、マリンノートだと言われなければわからない程度のアクセントです。それよりもブルーではなくクリーンのフィグリーフ系の香りがシトラスと共に弾け、爽快なシトラスグリーンで始まるのです。その後は南国を感じさせるプルメリアがフィグリーフと共に香るのですが、どちらもココナッツを含むのが特徴で、微かなココナッツ香がクリーミーに香り、良いアクセントとなって香りをまとめています。メンズでもなく、レディースでもなく、ユニセックスなシトラスグリーンフローラルからやがて、最後になってマリンフローラルがムスクと共に香るようになります。(16/05/2017)


■Green Water (2015年)

このブランドの中では歴史的なヒットとなった香りを、Cecile Zarokianの調香で現代風に再解釈した香り。オリジナルの名前を踏襲していますが、香りは全くの別物です。

トップ:ネロリ、ベルガモット、マンダリン
ミドル:ミント、バジル、タラゴン
ベース:ベチバー、オークモス、アンバーグリス

タイトルに恥じない、タイトル通りにグリーンな香りで始まります。このシリーズは全てカラーを大切にしており、それはブランドがファッションブランドであったことに繋がっていきます。ドレスの生地の色ですね。グリーンはミントとバジルがシトラスに持ち上げられてスパークし、爽快に幕開けた後、それほど強くはないベースノートへと引き継がれていきます。Vers Le Sudの方がグリーンというイメージは強く、こちらはもっとアロマティックな精油感の強い香りに。精油の使用率が高いからかもしれませんが、持続は一番短いです。(16/05/2017)


■Pour L'Homme (1998年)

オリジナルの調香はOlivier Gillotinによるものだったようですが、Panouge社によって別の香りとなったようです。

トップ:コリアンダー、セージ、ジュニパーベリー、スイカ、グレープフルーツ、レモン
ミドル:ゼラニウム、ジャスミン、ミルラ
ベース:ムスク、タバコ、バニラ、アイリス、パチョリ、サンダルウッド

香りはアロマティックなオリエンタル香で、ハーブが甘く香ります。大きな特徴はないものの、典型的なメンズのフゼアではなく、アクアノートでもなく、タバコレザー系のダンディな香りでもなく、色で例えるならライトブラウンなソフトタッチのオリエンタル香となって肌の上で消えていきます。力強いメンズ香になっているわけではなく、個性的な面もない分、初心者が手を出しやすい香りなのではないでしょうか。(25/05/2012)

 

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