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Sampleレヴュー

■L'Astre (2023年)

Paul VacherがAva Gardnerに出会った時、あまりの魅力に思わずSortilegeの広告塔を務めてはくれないかと依頼したのが始まりだそう。その成功の後に彼女は自分のための香りをオーダーメイドで作ってもらったそう。そのタイトルはスター。何十年もの間非公開とされていたそのフォーミュラを、彼女の財産管理人と遺族と共に新たな形でリリースすることになっりました。調香はRodrigo Flores-Rouxが担当。

 

 

マグネティックフローラルアコード、アンバー

トップ:フェンネル、カルダモン、レッドジンジャー、タイム
ミドル:ジャスミン、イランイラン、チュベローズ、オレンジブロッサム
ベース:アンバー、スエード、トルーバルサム、バニラ

50年代の上流階級のニュアンスを豪華なフローラルブーケで表現したそうで、香りの軸はフローラルブーケにあります。オリエンタルなベースに支えられたセクシーなジャスミン、それらを彩る酸味や甘さを湛えたフローラルノート。カルダモンが個性的なアクセントを添え、タイムはレザーに重なりそっとフローラルブーケを支えています。それでもベースノートは強く前に出ることはなく、香りの軸は飽くまでもフローラルブーケにあり、いつの時代も好まれる華やかなフローラルブーケが広がっていきます。(20/04/2023)


■Ferveur (2022年)

Paul Vacherが80年代まで生きていたとしたら、フレッシュな香りが好まれ始めた時代を読んでこうした香りを作り出しただろう、ということで生まれた香り。調香はRodrigo Flores-Rouxが担当。

 

 

トップ:ベルガモット、クラリセージ、マートル、サイプレス
ミドル:アイリス、ローズ、コリアンダー、シナモンリーフ
ベース:バニラ、スティラックス、トルーバルサム、パチョリ、ベチバー、フランキンセンス、レザー、アンバー

フゼアではないメンズ香といったところでしょうか。アロマティックなラブダナムとも言える香りで、香りの軸はラブダナムの効いたアンバーノートにあります。正直、彼の調香にはラブダナムが多く、かなり多用されているため、またかと思ってしまいましたが、オリエンタルでダークになタイプではなく、アロマティックな仕立ててあり、重くない分オリエンタルというよりもセミオリエンタルの方が合いそうなタイプです。タイトルは熱情。心から湧き上がる熱情を、アンバーノートに託した香り。(20/04/2023)

 

 

■Tilleul (2020年)

Quentin Bischの調香で作られた新たな香り。パリのシンボルとも言えるリンデンは、6月になるとその香りを漂わせ、ヴァカンスが間もなくスタートするというわくわく感を演出します。心が少し浮き立つ香りに感じているのかもしれません。Le Galionの庭を彩る木々の中にもシンボリックな大木があり、愛らしいハート型の葉が木陰を作ります。

 

 

トップ:リンデンブロッサムアコード
ミドル:ハニー、アンブロキサン
ベース:ムスク

リンデンブロッサムはキュウリのような青さとハニーノートが中心にあり、ミモザからアニス調の部分を抜いたような香りなのですが、これは強いハニーノートのハニーフローラルとなりました。またグリーンノートよりも際立つのはローズで、グリーン系のローズ香料を軸に組み立てたということがわかります。リンデンブロッサムからはハチミツが実際に採取されるほどなのですが、実際に樹木の下で香る生花の香りよりもずっとハニーノートが強くなっていて、ハニーフローラルとして広がります。トップでスパークしたハニーフローラルノートと、肌に残る穏やかなハニーフローラルは少しニュアンスが違いますので、時間によって変化はしているのですが、全体的にハニーフローラルという枠からは外れることなく香り続けます。少しシンプル過ぎると感じた方は、ローズやスズラン、アイリスなどを重ねても楽しめる1本です。(10/05/2021)


■Tulipe (2020年)

Thomas Fontaineの調香で新たに作られた香り。ボードレールの「旅への誘い」という詩の中に登場する黒いチューリップと青いダリア。それらは錬金術によって作られた、いわば奇跡の象徴でもある、というもの。

 

 

トップ:アカシア、ガルバナム、グリーンチューリップ
ミドル:ジャスミン、イランイラン、カナンガ、ナルシス
ベース:アイリス、ホワイトムスク、ホワイトシダーウッド

実際のチューリップに香りの記憶がある方はあまり多くはないと思いますが、実は品種交配により様々な芳香種が生まれており、その香りは様々な特徴があります。ローズ調のもの、アニス調のものなどがある中で、とてもユニークなのは薬品のようなスパイシーさを持つものが少なくないことです。偶然につい先日チューリップマニアの友人と芳香成分について話をしていた際、日本の研究結果について教えたばかりだったのですが、農研機構の研究では9種に分けられています。

 

 

Thomas Fontaineはチューリップをどのように表現したのかというと、ハニーフローラルでした。トップでは良い香りというよりもどこかリアルすぎるほどの生花感が広がり、その生花感が微妙な感じであったのですが、時間と共にハニーラクトニックなフローラルへと切り替わり、カナンガが強く感じられるようになりました。カナンガとはインドネシアを中心に栽培されているイランイランで、マダガスカルやコモロなどのイランイランとは近縁種であるものの樹形や花弁数が違い、イランイランよりもグレードは劣り、石鹸やキャンドルに使用されている精油です。でも、とてもイランイラン調のセクシーなフローラルで、これからもっと注目されているだろうと友人たちと話をしていたところでした。イランイランだけでなく、カナンガで強化された滑らかなフローラルにハニー調のアカシアが重なり、艶めかしく広がっていきます。チューリップらしさはどこにあるのか別として、イランイランをとても美しい形で楽しめる1本なのではないでしょうか。最後はウッディノートやジャスミンの欠片がムスクと共に肌に残ります。(07/05/2021)



■Champs de Mai (1930/2020年)

Quentin Bischによって復刻となった5月の園という香り。だから、香りの軸はローズで、イメージしたのはパリのバガテル庭園。

 

 

トップ:アプリコット、センティフォリアローズ
ミドル:ロージーフォリア、ペタリア
ベース:アンブロキサン、ニンフェアル、ポマローズ

まず、Le GalionはAETHERで合成香料に焦点を当て、Corps Volatilsで合成香料のみの香りと、天然香料のみの香りをリリースし、それらをミックスすることで新たに生まれる楽しさを表現しました。その流れにある復刻品は、Givaudanが2016年にリリースした最新のフローラルノートが使用されました。ロージーフォリアは中国のGivaudanでスズランの生花の香りの分析をしていて発見されたスズラン調のローズノートです。ペタリアは少しパウダリーなローズ、ピオニー調の香りで、ニンフェアルはとても安全性の高いクリアなスズラン調のグリーンフローラルです。ベースノートのポマローズは微かにドライフルーツ調のあるフルーティーなローズ調の香り。

そこから読み取れることは、とてもフレッシュで明るいエアリーなローズだろうということでした。予想通りに、少し金属的なスズラン調のローズが広がってのスタートで、ハニーフローラルのベースにスズランが明るさを与え、ローズガーデンだけでなく、同時に満開を迎えるウィステリアやピオニーをも思い起こさせるブーケとなって広がります。ローズは生花らしさがあまり感じられませんし、少し金属的なスズランノートがあることで、バガテル庭園そのものを写実的に表現したのではなく、現代の新香料でデザインしたという香りとなりました。アンブロキサンは強くはなく、それらしさを感じさせることなくフローラルノートを支えています。(06/05/2021)

 

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