Cecile Zarokianによる調香で、タイトルのアニというのは、アルメニア人によって建国され、シルクロードの中継地点となった古都。今やゴーストシティとなった古都は、2016年に世界遺産に認定されました。まだ日本人にはあまり馴染みのない秘境の遺跡です。Aniという言葉はトルコ語で記憶という意味があり、制作中に亡くなられたという友人に捧げられた香りだそう。

Cecile Zarokianと言えばオリエンタル。彼女の作り出す香りはオリエンタルがとても多いのですが、依頼側が望むのか彼女がただ好きなのか、今回もオリエンタルとなりました。トップでは質の良いシトラスがスパイスと共にジューシーに弾け、そこからミドルを飛ばしてベースへと引き継がれます。ミドルノートはどこに? 全くその存在を感じないままシルクのように滑らかなウッディオリエンタルへと変化して肌に溶けていきます。スパイス貿易で栄えたであろう都市を、かつての繁栄を懐かしむかのように吹く穏やかな風を、ベンゾインの効いた、でもとても軽やかなオリエンタルで届けてくれます。そう言えば有名なアルメニアペーパーインセンスもベンゾインでしたよね。

(28/05/2019)