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Sampleレヴュー

■Ierofante (2022年)

タイトルはイタリア語Hierophantから来たもので、タロットカードの教皇です。コロナ禍以前より4年かけて2022年に発売となった香りで、調香はLuca Maffei。彼にとっての教皇は、暗黒の時代に勇気を見出すことの象徴であり、古代ギリシアのエレウシスの秘儀(女神デーメーテールとペルセポネー崇拝のために伝承されていた祭儀)を司る数少ない神権メンバーの1人だそう。エレウシスの秘儀がどのような儀式だったのかは秘密が多く、詳細が明かされていませんが、死と再生の神として、幾世代も受け継がれていく永遠の生命を象徴したもので、密議によって死後の幸福を得られるとしたもの。この儀式を人類が直面している問題や課題から逃れるために、ロケットで脱出することに転じたのです。僕は発売当初、コロナ禍から抜け出すロケットに思えました。また死と再生というのは、胆嚢破裂によって九死に一生を経たオーナーのJosephにとって、とても近しいテーマです。

 

 

また、とても難解なのは、黄金の夜明け団(Golden Dawn)のTree of Lifeでは、Hierophantが2番目のWisdomから4番目のMercyに続く道で、それが木星におうし座を通じて作用する黄道帯とされているのです。Josephはおうし座から馬力やエンジンを連想し、ガソリンへとつながったのだそう。またそにたどり着く過程には、オープンカーを運転していた際にガソリンとレザージャケットが燃える匂いがして車から飛び降りたという経験にも基づいています。胆嚢破裂手術から一命を取り留めた後だったため、彼はその時の体験を天へ向かう戦車のように崇高な感覚だったとしています。

 

 

トップ:スエード、ガソリンアコード、ナツメグ
ミドル:スティラックス、スモーキーレザー
ベース:ゴールデンアンバー、カシュメラン、ベチバー

香りはスパークするような激しいものではなく、高濃度だけど軽やかな今の時代の流行そのもので、ムスク強めのスエードがガソリンだったのか、という少しゴムのような香りと共に広がります。レザーもウッディノートもオリエンタルなベースもとても主張が少なく、スポーティーではないけれどシンプルな骨格がアメリカ人好みなところでしょう。確かに個性的ではあるけれど、使いにくいタイプではなく、BvlgaliのBlackのムスクたっぷりスエードバージョン風な感じで、あっという間にラストノートにたどり着き、そのラストノートが持続をします。滑空機が水面ギリギリを飛んでなかなか着陸しない様子を思い浮かべてしまいました。この中に使用されているStyrax pyrogeneは、スティラックスの樹脂を熱してから得るという少しスモーキーなタイプのスティラックスなのですが、Ierofante自体はそれほどスモーキーな香りになっているわけではありません。50mlのExtrait de Parfumが235ドルで発売に。濃度は22%だそう。22%でこれだとムスクや軽いノートがかなり多く使われていることだろう。(21/06/2023)

 

 

■Venetian Belladonna (2016年)

Pierre Constantine Guerosによる調香で、テーマはベラドンナ。そのままBella Donna、つまり美しい女性という意味ながら、死に至ることもあるという強い毒草の代表格。でも、容量を守れば薬になるという、まさにブランドのテーマにぴったりの植物です。リヴィアがアウグストゥス皇帝を毒殺した時に使用されたという甘い香りの毒で、北イタリアの魔女が男性を虜にする際に使用した媚薬だそう。

 

 

ブラックカラント、バイオレットウォーター、プラム、スルタネン、スティラックス、アンブレットシード、サンバックジャスミン、ハニー、アイリス、チュベローズ、パチョリ、ラブダナム、スエード、サフラン、ビーワックス、サンダルウッド、ベチバー

このラインをとても象徴するような香りです。サンバックジャスミンを軸にハニーフローラルでまとめた上に、スエードやパチョリ、ラブダナムでくすんだオリエンタル調の香りを足したのですから。トップではスパイスのようなアロマティックノートが弾けましたが、一言では言い表せないような渋いフローラル感でありながら、シプレでもなくフゼアでもなく、全く新しい形のアロマティックレザリーフローラルとしてまとまっています。全体のアクセントとしてブラックカラントを感じるのですが、調香にはないんですよね・・・。と、オフィシャルサイトで確認をしたら記載がありました。それに後半は埃のようなダスティノートも感じます。(24/10/2016)


■Midnight Datura (2016年)

Lisa Fleischmannによる調香で、テーマはダチュラ。時折フレグランスのテーマにも取り上げられるナス科チョウセンアサガオ属の植物。エンジェルトランペットは下を向いて咲くのに対し、チョウセンアサガオは上を向いて咲くのが特徴で、興奮、麻酔作用があることで知られています。

 

 

グリーンリーフ、マンダリン、ベルガモット、ダヴァナ、ラム、ジャスミン、チュベローズ、マグノリア、スズラン、ローズ、ヴァイオレット、ラベンダー、ヘリオトロープ、ダチュラアコード、クローヴ、ナツメグ、ペッパー、バルサム、パチョリ、バニラ、サンダルウッド、シダーウッド、アンバー、ムスク

これが彼女のデビューフレグランス、つまり最初に手がけた香水になるそう。かなり複雑に絡み合ったフローラルで、ローズとヴァイオレットの少しリップスティック調の香りにパウダリーノートやヘリオトロープを足し、スイートウッディでまとめたといったところでしょうか。スパイスも効いていますので、クローヴやナツメグっぽさもあるのですが、甘さの中に溶け込んで良いアクセントとなっています。10種のフローラルノートを使用し、腐敗していく官能的なニュアンスをラムやスパイスが表現したそうです。(24/10/2016)


■Digitalis (2016年)

代表作として有名なのは、Tom FordのBlack OrchidやJo MaloneのWhite Jasmine & MintというDavid Apelによる調香で、テーマはジギタリス。キツネノテブクロ(foxglove)とも呼ばれる大型の植物で、園芸品種も多く見た目も美しい花を咲かせる。ジギタリスのジギタスとは、ラテン語で指の意味で、花が指サックに似ていることから名付けられたそう。指サックってそんな昔があったの? 全草に毒があるが、ベラドンナやダチュラ同様に薬にもなり、少し魔女系のイメージがある植物。

 

「Digitalis」の画像検索結果

 

ガルバナム、アイリス、キュウリ、バジル、ペッパー、オゾン、コリアンダー、フローラルオゾン、ヴァイオレット、ネロリ、ローズ、ジャスミン、リンドウ、フランキンセンス、ファーン、モス、ヴァイオレットリーフ

オゾンノートとヴァイオレットリーフにガルバナムを合わせたこのラインの中では唯一のグリーンな香り。基本的にグリーンなのですが、ヴァイオレットとネロリがモスと共に香るという少し捻った調香で、とてもシャープな印象を受けます。他の香りたちがどちらかというと手ごわそうな陰と陽を合わせたものなのに対し、こちらは透明感を感じさせつつ綺麗な毒を混ぜたような印象で、ヴァイオレットリーフが少しスパイシーに感じるほど鮮やかに香ります。このジギタリスは森のエルフやフェアリー(妖精たち)を呼び起こす植物とされていることから、妖精の棲む不思議な森をオゾンを使って表現したそう。(24/10/2016)


■Bloodflower (2016年)

Alexandra Carlinによる調香で、テーマはトウワタ。あまりメジャーではない植物ですが、キョウチクトウ科の多年草で、赤とオレンジの小さく可愛らしい花を咲かせます。この植物の茎からでる乳液が有毒で、この植物を食べる蝶やバッタなども毒素を体内に蓄えることで外的から身を守るのだそう。Opal nera sambucaという黒色のサンブーカというアニスやリコリスの甘いリキュールにブラッドアコードを入れて表現したそう。

 

「Digitalis」の画像検索結果

 

リコリス、アニス、ブラッドアコード、クローヴァー、アイリス、ダークローズ、アンバー、パチョリ

とてもユニークな香りです。香りの軸がはっきりしないというか、今までにないタイプなんですよね。どことなく鉄分のようなメタリックな匂いがすると思ったら、血の匂いのアコードが使用されていました。それでしょうね。アニスとアンバーの中に鉄分があり、アクセントとしてローズがある、という感じでしょうか。あまり普段使用しないタイプの、使いにくい(量によっては悪臭になる)香料を敢えて使用することで個性的にした香りと言えそうです。(24/10/2016)


■Hemlock (2016年)

Christelle Lapradeによる調香で、テーマはソクラテスが獄中で毒殺された(服毒による死刑執行)際に使用されたと言われているドクニンジン。古代ギリシアでは、有罪を宣告された囚人の処刑に利用されたのだそう。だからイメージは邪悪な黒い液体に。

 

「Digitalis」の画像検索結果

 

ラム、ピンクペッパー、ベルガモット、クラッシュリーフ、ホワイトフローラルアコード、シナモン、クローヴ、サンバックジャスミン、スティラックス、ブラックビニールアコード、ブラックマグノリア、シクラメン、ソルトアコード、ベンゾイン、バニラ、スエード、サンダルウッド、パチョリ、トンカビーン、ムスク、アンバーウッディノート

トップからスパイスが甘く香るのですが、すぐに香りのキーノートが判明します。それはジャスミン。ジャスミンを軸に、その周りに様々なスイートノートとスパイスを配置し、風邪薬のシロップのようにトロンとした甘さで包み込んで表現しています。マリンノートに近いソルトノートもしっかり香り、透明感というアクセントというか、スパイスのようにも感じられる香り方をしているのがユニークなところ。全体としては甘い漢方薬をジャスミンでまとめたという雰囲気です。(24/10/2016)


■Lily of the Valley (2016年)

Nathalie Benareauによる調香で、テーマはスズラン。そう、スズランは活けた水を飲んだだけで死に至ることもある毒性植物です。スズランの可憐なスズランを黒いヴェールで包み込み、涙を表現するために湿ったニュアンスを加えたそう。それは、イエスキリストが処刑された際、聖母マリアが流した涙がスズランとなったと例えられるから。

 

 

ベルガモット、ネロリ、デューイーペタル、カシス、スズラン、オレンジブロッサム、ダークローズ、ジャスミン、ブラックレザーグローヴアコード、ラブダナム、ベチバー、バニラ、サンダルウッド

テーマがテーマなだけに、Caronのように美しいスズランになることはなく、少しアクアティックというか濡れた葉(デューイーペタル)のグリーンが印象的なトップで始まります。ネロリやシトラスもトップで弾けるのですが、スズランらしさがあまり強くはないというか、グリーンフローラルを軸に、アンバーレザーをベースにして組まれています。時間と共にレザーに変わっていくという、可愛らしさがないばかりか、最後がとても苦渋くなるスズラン。(24/10/2016)


■Mandrake (2016年)

Carlos J. Vinalsによる調香で、テーマはマンドレーク。引き抜くと悲鳴を上げ、それを聞くと死んでしまうという植物。実在するナス科の植物で、ハリーポッターにも登場した魔術に使われるハーブです。知らなかったのですが、シェークスピアの真夏の夜の夢で、男性器不全の治療薬として(増強剤)使用されたそう。実際の植物はレッドアップルの香りがするそうですよ。悲鳴を表現するために甲高い音をイメージした香りも使用したのだとか。

 

 

アップル、ポメグラネイト、パーチリーフ、パーチルート、ベルガモット、マンドレイクフラワーアコード、ルバーブ、カルダモン、スエード、パチョリ、バニラ、サンダルウッド、トンカビーン、中毒アコード

フレッシュノートと共にアップルが爽やかに香るトップです。ファッションフレグランス的なイメージでありながらどこか首をかしげてしまうのは、今までにない組み合わせをどこか感じるから。それは、合成香料のバーチリーフです。通常メンズのフレッシュフゼアなどに使われるキュウリっぽいグリーンノートが、アップルやポメグラネイトと共に香っているのです。スパイス類はトップで消え、ミドル以降はスイートアロマティックな香りとなって広がっていきます。スエードやパチョリは強くはなく、バニラやトンカビーンがスイートフルーティーなベースを形成しています。その部分とバーチリーフとのコントラストが今までにないハーモニーを作り出しているのです。バーチリーフのツンとしたグリーンノートが悲鳴なんでしょうね。(24/10/2016)


■Poppy Soma (2016年)

Emilie Coppermannによる調香で、テーマはアヘンで有名なケシの花。両手サイズの巨大な花を咲かせ、手のひらより大きな実を実らせます。その中にある白い汁を煮詰めて・・・。毎年春になると、東京都薬用植物園で金網越しに一般公開となりますので、ご興味のある方はチェックを。Somaとはベーダサンスクリット語で月の意味で、月が輝くとき、甘い乳液を球根が出すと言われていることから付けたそう。だからチュベローズもあるんですね。

 

「Digitalis」の画像検索結果

 

山椒、カレーリーフ、レッドペッパー、ブラックガーデニア、サンバックジャスミン、レッドローズ、フランキンセンス、ラブダナム、チュベローズ、スティラックス、トンキンムスク

フレッシュフローラルを覆い隠すほどのスパイスで始まります。少しクミンっぽいカレーリーフがアクセントとなり、スパイシーフローラルが弾け、その後ゆっくりとラブダナムがベースにあるフロリエンタルへと変化していきます。スティラックスのハニー調の甘さがラブダナムとマッチしていて、スイートフローラルをしっかりと支えてセクシーに香り続けます。ラブダナムは通常オリエンタルなアンバー系の香りを作る際に使用されますが、フレッシュノートの中で効果的に香らせるというのはとてもユニークです。(24/10/2016)

画像のケシはアツミケシという栽培が禁止されているタイプのケシです。田舎では野生化したものが育ってしまっているのですが、撮影後にきちんと廃棄致しました。小さくても成分的にはモルフィネを有しているそうです。(09/05/2018)

 

 

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