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Sampleレヴュー (Collection Black : ex. Huitieme Art)

■Mad About You (2019年)

2017年にThe Kissという展示会が開催された際、Antony Squizzatoというアーティストの作品と、若きフランス人小説家Cecile Coulonにインスパイアされ、ソーシャルネットワークの時代のネオロマンチシズムをテーマに作ったという香りで、ウッディヴァイオレットとブラックティーアブソリュートを軸としたもの。

 

 

パウダリーノート、チェリー、ヴァイオレット、リコリス、フローラルノート、ウッディノート、ブラックティー

そう言えば、あまり強いグルマンはないよね・・・と香ってみると、チェリーが勢いよく飛び出しました。あなたに夢中というタイトルのキスはチェリーで表現され、そのフルーティーさとグルマンな甘さがヴァイオレットに包まれて広がっていくのです。チェリーは爆弾のようなトップノートで引き下がり、そこからはヴァイオレット調のウッディグルマンとして引き継がれていくのですが、予想していたほどレザーやブラックティーは強くはなく、フルーティーオリエンタルとなって落ち着きます。もともとラズベリーやストロベリーはヴァイオレット調の香りを軸に組み立てられるため、フルーツとはとても相性が良いのです。ともすれば可愛らしいファッションフレグランスになってしまうギリギリの調香ですが、ヴァイオレットウッディを軸にしたことで大人っぽくなり、最後はグルマンらしい少しクリーミーなスイートムスクが肌に残ります。

当初はパリの店舗のみでの販売でしたが、今ではオンラインでも発売されている香りです。(01/03/2021)


■Mecanique du Desir (2018年)

彼の父はクラシックカーのコレクターだったそうで、ヴィンテージエンジンの素晴らしさを教えてくれたそう。黒くなったエンジングリースの匂い好きだった10代の頃の記憶。Jacques Lacarriereの"This beautiful and vivacious today"という書籍を読んだ時、Black Mucusの隠された詩に気づき、この香りを作ることになったのだとか。男の子は誰でも車いじりが好きだろう? それを女性のように扱うんだよね、と展示会で説明してくれたことを思い出しました。

 

 

トップ:アルデヒド、カシス、マンダリン
ミドル:ヴァイオレットリーフ、ガイヤックウッド
ベース:ムスク、アニマルノート、アンバー

ガッツリとエンジンオイルの香る男っぽいスタイルかと思いきや、彼らしいアプローチでした。それはその中にとても優しい女性像が反映されていたから。アルデヒドはワックスのように弾けるのではなく、ダストっぽい雰囲気を漂わせ、ペアやグリーンアップル系のフルーティーノートと共に始まります。随分可愛らしいフルーティーさだと思っていると、その中から少し金属的なダストノートが登場するのです。ムスクも多めでアニマリックな部分は少なく、ガイヤックウッドも強くはなく、少しメタリックなウッディムスクへと変化して落ち着くのです。ただムスクは結構多めですので、残り香は続きますが、おそらくスズラン系もシンプルなフローラルノートを多めにして軽くしているのでしょう。ムスクの中にそうしたスズラン調のフローラルが見え隠れしていますから。少しやんちゃな男性像をイメージしていると、とても優等生的で驚かされますが、そこが紳士的な彼らしいところだと思います。(26/02/2021)


■Superlady (2017年)

マグノリアは9000万年以上前から地球上にあった、という事実。そして樹齢は100年に及ぶこともある、という事実を、女性のシンボルとしてエデンの園に咲く花々の香りにしたもの。

トップ:マグノリアアコード、グリーンリーフ
ミドル:キャンディーアップル、グリーンフルーティーグルマンアコード
ベース:パチョリ、シスタス、ベンゾイン、ホワイトアンバー

バブルガムをイメージしたようなキャンディーアップルを入れた、彼にとっては初めてのキュートさを打ち出した香り。さぞかし可愛らしくなっているのだろうと思いきや、フレッシュフローラルが効いていて、あっさり目なフルーティーフローラルへと変化して落ち着きます。しかも、グリーンノートが効いていたり、パチョリが少し香っていたりして、フルーツは主体ではなくアクセント程度に留められています。全体的なトーンはとても日本人向きなあっさりとした香りで、彼のラインの中では珍しくビギナー向けの香りと言えます。(13/12/2018)


■Liqueur Charnelle (2014年)

近年、お酒をテーマとした香りたちのリリースが続いていますが、彼はコニャックの評価に必要なエッセンス(バニラ、プラム、カラメル、オレンジ、アプリコッ)や原材料などの香り(リンデンブロッサム、ブドウの花、ブドウの蔓、ヴァイオレット)などから作り出したオリジナルアコードを使用して、コニャックのブーケというテーマでまとめた香り。

ブロンドタバコ、ブラックペッパー、ピンクペッパー、トンカビーン、ラズベリー、パウダリーノート、ウッディノート

全体的にはフルーティーなウッディという印象でまとめられた香りです。スパイスはあるものの、フルーツと一緒にトップで弾けてあまり後を引かず消えていきます。フルーツは持続をするのですが、それを覆うようにどっしりとウッディノートが香りっており、可愛らしいフルーツの印象ではありません。タバコのアブソリュート感もありませんし、コニャックの雰囲気も(そのものでは困りますが)飽くまでもニュアンス程度ですので、香水としてとてもステキな香りにまとまっています。彼は本当にウッディノートが好きだなぁ・・・といつも思うのですが、こちらも主体はウッディノート。今年6月にフランスで開催された香料見本市でも新たな新素材が公開されましたが、彼は常に新素材を積極的に取り入れていますので、こちらの香りにもそうした最新のウッディノートが使用されているのかもしれませんね。

彼のラインの中では、女性が安心して使える香りであり、男性がクールに使えるウッディフレグランスだと思います。(24/09/2014)


■Poudre de Riz (2012年)

2012年に発売された10番目の香りで、タイトルはライスパウダー、つまり米粉のこと。Henri Barbusseが1908年に書いた小説「Hell」の中の「閉めきった部屋の空気は、石鹸、フェイスパウダー、コロンなどが混じった重苦しい空気で満ちていた」という一節にインスパイアされたものだそうです。

ティアラフラワー、ココナッツミルク、バニラ、ライス、メープル、カラメル、サンダルウッド、アイリス、シダーウッド、トンカビーン、ベンゾイン、トルーバルサム、ダマスクローズ

香りは確かにパウダリーフローラルです。甘くしっとりとしたパウダリーさではなく、ヘリオトロープでもなく、アーモンド香(Benzaldehyde)が印象的なアーモンド調のパウダリーフローラルで、重くなりがちなベースノートの香料たちをフローラルノートで持ち上げて軽くしているという印象を受けます。Coumarinも効いていますので、フローラルノートがもう少し前に出ていたら桜っぽい印象に感じられるものとなっていたかもしれませんね。香りの持続もとても良く、最後は仄かなオポポナックスベースにも似たスイートパウダリーなアンバーノートが肌に残って消えていきます。(07/03/2014)


■Monsieur (2013年)

オーベルニュ山地を含む黒い森、マッシフサントラル山地の滝から流れてくる春の水をイメージした香りで、タイトルは直球のムッシュー。

パチョリ、シダーウッド、ベチバー、サンダルウッド、ポプラアブソリュート、オークモス、ボワ・ドゥ・アンサン、パピルス

ほとんどウッディノートの香料ばかりなのに、ムエットで試したときは一瞬ラベンダー? と思うほどアロマティックな香りでした。彼に伝えると、ウッディノートばかりなのに様々なハーブが入っているかのように香るのが面白いんだよね、と。そんなアロマティックな部分を過ぎるとパチョリが利いた柔らかなウッディノートへと変化します。パチョリとベチバーをウッディノートが包み込んでいるという雰囲気で、パチョリとオークモスがありながらシプレにはなっていません。オークモスは強く前に出てくるわけではないのですが、きちんとエクストラクトを使用しているようですよ。ボワ・ドゥ・アンサンとは、フランキンセンスとシダーウッドを同時蒸留したRobertet社の香料なのですが、最後の最後になって肌に残る香りの中にそれを感じ取ることが出来ます。基本的には天然香料のみで作られた雰囲気で、ムッシューというほどメンズではなく、ウッディノートがお好きであれば女性でも使えそうな香りです。(30/09/2013)


■Myrrhiad (2011年)

早くも発売された新作のテーマはミルラで造語です。エジプト人が太古の昔からキフィに組み込んで使用してきたミイラの語源ともなったミルラ。神秘の香りを彼はブラックティーとバニラでレザー調にまとめました。

ミルラアブソリュート、ブラックティーアブソリュート、バニラ、リコリス

ミルラそのものにはあまり強い甘さはないのですが、この香水はかなり甘くしてあります。甘く少しスパイシーさの漂う香りの中にじわりじわりと広がり始めるのがミルラで、バニラが沢山香る中で出てくるということはかなりの割合でミルラを入れているはずです。ミルラそのものの持つドライフルーツのようなスパイシーな菌類系(椎茸みたいな)の香りを感じさせてくれつつ、バニラだけではないオリエンタル香に落ち着きます。そこまでレザー調ではないですし、ブラックティーアブソリュートの持つスパイシーな部分が(紅茶の香りではないのです)ミルラのくすんだ部分とうまく調和していることに新しさを感じました。ミルラそのものの香りを良く知っている方は、きちんとミルラが香っていることに気づくと思いますが、ご存知ない方はどの部分がミルラなのかわからないと思いますので、基本的にはスパイシーバニラ(美味しいミルラ)だと思って下さい。この新作はボトルラベルのような赤褐色の液体をしているのですが、着色ではないようです。(29/11/2011)


■Ambre Ceruleen (2010年)

パウダリーなオポポナックスとエアリーなアンバーをオーガニックなモロッコ産のヴァーベナでアクセント付けしたもの。

オポポナックス、トンカビーン、サンダルウッド、モロッカンヴァーベナ

パウダリーなアーモンド系オポポナックスウッディノート・・・という感じです。ゲランの使うオポポナックスベースとはまた少し違い、甘く優しいクリーミーなオポポナックスが肌に残ります。アーモンドやヘリオトロープの香りが結構入っているようで、アーモンド石鹸風になるので、ベタベタしない甘さがお好きな方にはぴったりなのではないでしょうか。ムスクも結構強く入っているのですが、ヴァーベナの強いレモン香はトップノートの一瞬でお役目終了です。(12/07/2011)


■Sucre d’Ebene (2010年)

貿易風に乗って香る、甘く甘く優しい香り。

ブラウンシュガー、ハマメリス(マンサク)、ベンゾイン

トップにベリー調のフルーティー香を伴ったフルーツカクテル系の香りです。ブラウンシュガーも強くなく、マンサクの香りもどれだか分からず、ベンゾインもなりは潜めています。このフルーティーな部分がマンサクなのでしょうか? いえ、でも生花のマンサクに香りはなかったように思うのですが・・・。フルーツジュースのように瑞々しく飲み干せてしまいそうな香りです。彼特有の個性はあまり見られませんので、ラインの中では比較的使いやすい可愛らしさをもった香りです。(12/07/2011)


■Ciel d'Airain (2010年)

嵐の前触れを予感させる曇り空が広がるコモ湖(北イタリア)の果樹園・・・というのがテーマ。

フレッシュフルーツエクストラクト、ペアツリーリーフ、オリーヴの枝、アンバーグリス

ペアっぽいというよりも咲きに広がったのはフィグです。フィグ&ペアのフルーティーなジューシーさにアンバーウッディノートが強めに香り、フルーティーウッディな香りになっています。可愛らしい定番の流行香とは別物で、ともてナチュラルな夏の香りに感じます。フルーティーな香りが薄れるとココナッツとムスクの香りが肌に残りますから、基本的にはココナッツが苦手ではない方向けですね。アンバーウッディノートがしっかりとしていますから、ユニセックスなフルーティーさになっています。(11/07/2011)


■Vohina (2010年)

桃の樹の下に座って寛ぐ様子をイメージしたもの。光り輝く干草の上に座り、桃の花の香りを楽しむ・・・、そんな片田舎の夏の日の午後の様子を香りとして表現したもの。

ピーチブロッサム、ラヴェンダーハニー、ヘイ

甘い甘い甘い雰囲気をイメージしていたのですが、なんのことはないさっぱりテイストのハーバルなフルーツ香です。ピーチそのものというほどのフルーティーさではなく、こちらは合成香料なのでしょうけど、その奥からラヴェンダーハニーというよりもラヴェンダー系ウッディノートが広がります。ヘイもその後ろからくすんだような甘さと共に香っており、美味しいフルーツではありません。飽くまでも空気感をそのまま形にして表現してみた、というものですね。彼らしい個性的な香りだと思います。フルーティーさが持続しない点がユニセックスな感じです。(11/07/2011)


■Aube Pashmina (2010年)

朝露に濡れたハーブガーデンを散歩する朝の光景で、Aubeは夜明けの意味ですから夜明けのカシミア。

バジル、ローズマリー、トマトリーフ、ゼラニウム、ブラックカラントエクストラクト、サテンウッド

これはもうどの香料を使用しているのか分かってしまうくらいトマトリーフが強いです。Givaudan社のTomato Leaf Givco 224を軸にしてカシスの甘酸っぱいグリーン香とハーブを重ねていった香り。グリーンなのにフルーティーというこの組み合わせはカシスならではなのですが、慣れていないとバランスを取るのに苦労します。全体としてはハーブを生かしているのですが、フルーティーな部分もそこそこ持続をし、最後は柔らかなカシミア調になって落ち着きます。雰囲気は全く同じではないのですが、この青さとフルーティーさは資生堂の初代のInouiやChant du Coeurをお好きな方には良さそうです。(11/07/2011)


■Manguier Metisse (2010年)

フルーティーなマンゴーがトロピカルなフランジパニと出会った、マンゴーの混在香。

マンゴーエクストラクト、マンゴーバーク、フランジパニ、ティーリーフ

マンゴーエクストラクトがナチュラルなのかもしれませんが、香り自体はそれほどナチュラルで美味しいマンゴーではなく、バニラの強いグルマン系の美味しいフルーティーバニラになっています。確かに南国フローラル調の香りも強いので、彼の作り出したマンゴーアコードにフランジパニを合わせてバニラで閉じた、という感じの香りです。彼の作り出す香りでParfumerie Generaleの中には1つとしてなかった雰囲気ですので、彼にとってはこういう可愛らしい香りを生み出すことがチャレンジだったのではないでしょうか。ラストノートはL'Artisan ParfumeurのL'Eau des Merveilleusesを彷彿とさせる香りで終わります。(11/07/2011)

 

 

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