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Madame Butterfly II / マダムバタフライ II


<香 調> パウダリーウッディムスク
<仕 様> ユニセックス
<容 量> 50ml
<濃 度> EDP

トップ
ピンクペッパー、マルメロ、タジェット、ペティグレン、アンジェリカ
ミドル
ガルバナム、フランキンセンス、ラズベリー、チューリップ、アイリス、チェリーブロッサム
ラスト
ムスク、アンバーグリス、シダーウッド、サンダルウッド、パチョリ、トンカビーンアブソリュート



2018年10月発売。最初の香りに選ばれたのは、プッチーニのオペラ、蝶々夫人の第二幕でした。ボックスにはイメージイラストの描かれたカードが入っているのですが、そこに書かれているのは、

 

花となり、岩場に咲いていたかった。
雫となり、あなたの頬を濡らしたかった。

マダムバタフライIIは、再生の物語です。
女性らしさと自立性というものに疑問を投げかけ、異議を唱え、新たに定義する物語。

 

蝶々夫人の内容については広く知られているものではありますが、簡単にまとめると、アメリカ海軍士官と結婚した蝶々夫人が、帰国してしまった夫を、帰国後に生まれた子どもと共に待つ3年の間に、彼は本国で再婚してしまっていたというもの。彼は奥さんを連れて来日し、子どもをアメリカで育てたいと申し出ます。彼女は悲しみながらも潔く決意して子どもを渡し、父の短剣で自害したのです。

 

 

物語の中には、夫が来航すると知り、迎え入れるため部屋中を春の香りにする場面(第二幕第一場)があります。そこにはスミレ、リリー、チュベローズ、ローズ、ヴァーベナなど、様々な芳香花が登場しますので、その待ちわびる心地と、その後に訪れる喪失感のようなものをテーマとすると、一番わかりやすいというか切り取りやすい部分だと思います。現に資生堂長崎の地域香水を制作した際、その部分をモチーフとしました。また、Histoires de Parfumsは、本編ではなくクラシカルな日本人という雰囲気で、パウダリーフローラルウッディを1905 Madame Butterflyとして発売しましたし、Parfums MDCIのCio Cio Sanは、マダムバタフライというオペラの世界観ではなく「日本」というテーマに感じられるフルーティーフローラルでした。

でも、この香りは子どもを託して自決する最後の場面から生まれたのです。まず香るのはアニスのようなセリっぽい香り、つまりアンジェリカシードとアイリスのコンビネーションでした。

「不名誉に生きるならば、名誉に死すべし」

と刻まれた父の短剣で自害した蝶々夫人ですが、女性らしさを問う問題は今の時代でも同じですよね。「女性らしくしなさい」という言葉が象徴する問題を、女性らしくはないユニセックスな香りでまとめたのです。それは良薬のように微かな苦みを伴うパウダリーアロマティックで、決意の現れたペティグレンやアンジェリカの苦み、肌の白さや白粉を思わせるアイリスやトンカビーン、昇華していくような祈りのフランキンセンス、そして最後はサンダルウッドを軸とした全てを包み込むウッディムスクとなって肌に溶けていきます。

 

 

最初に記載をした春の花を飾る場面であれば、一途に夫の帰りを待つ、可愛らしいフローラル、それもフルーティーフローラルになっていたかもしれません。そうではなく、全てを覆い隠して降り積もった雪原のように、静謐を湛えたラストへと導いたのです。もともと蝶は羽化することで、生まれ変わりを意味しますし、輪廻転生の象徴でもありますから、この物語は美しい自己犠牲の後が、ほのめかされていたのかもしれません。

 

 

日本をテーマとした香りを作る際はユズ、アイリス、ヒノキが多いと思いますが、ベースの軸がヒノキであったら、それは柩を思わせていたかもしれません。それはそれでミステリアスかもしれませんが、美しい余韻を是非音楽と共にお楽しみいただきたいところ。

 

 

この香りは、The Eccentric Opera (エキセントリックオペラ)として活躍され、Ensemble Planeta (アンサンブル・プラネタ)のプロデュースなどを手がけているコンポーザーでありアーティストの書上奈朋子さんとのコラボとなりました。もちろん選ばれたのは第二幕の中で一番有名なアリア「ある晴れた日に」。強く生まれ変わり、勝利を得た女性を表現したこの曲は、彼女のアルバムRequiemに収録されており、オフィシャルサイトからアルバムを購入するとサンプルをいただけるそう。薬事法がありますので、CDにサンプルを入れて販売するのは難しいのですが、帯の下の部分に入れられるよう、極細のインセンスのようなサンプルとなっています。Spotifyでも聴けますので、ご興味のある方は是非。レクイエムというアルバムタイトルがストーリーにぴったりで、手助けも出来ずただ見守るしかない羽化していく姿を、息を殺して願うような曲となっています。曲のさわりだけこちらから。

 

 

(06/06/2019)

 

 

 

 

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