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Une Ile Pluvieuse / ユヌ・イル・プリュヴィユーズ


<香 調> アロマティックフローラルウッディ
<仕 様> ユニセックス
<容 量> 50ml
<濃 度> Extrait de Parfum

トップ
グレープフルーツ、花粉、ヴァイオレットリーフアブソリュート、レインノート
ミドル
ピオニー、ライラック、ミモザアブソリュート
ラスト
アンバーグリス、ベチバー、カラムス、パチョリ、ヒノキ、オークモスアブソリュート



2021年発売で、三島由紀夫の「潮騒」(1954年)をテーマにした香り。物語の舞台は伊勢にほど近い鳥羽の島で、島の中でも一番遠くにある神島(旧歌島)です。神島は鳥羽と愛知県の渥美半島の中間にあるのですが、もう一つの知多半島で生まれ育った僕にとってはとても馴染みの場所。鳥羽は小さな頃にフェリーで家族旅行した場所でもあります。

 

 

その小さな島の中で繰り広げられた初恋が描かれているのですが、噂が早い田舎の様子、身分違いの恋、純朴な青年と一図な少女。学歴よりも裕福さよりも最後は男らしさで周囲を認めさせた主人公。その二人をそっと後押しする友人たちがアクセントとなり、描かれています。

 


吉永小百合が主演で映画化。

 

古代ギリシアの神々の純愛を描いたダフニスとクロエのプロットを生かした小説として、舞台を日本の神々に置き換えた内容として描かれた小説で、難解な他の小説とは違い、青春の純愛物語を牧歌的に描いたものでした。その純愛のどの場面を切り取ったのかによって、香りはいかようにも変化していくわけですが、調香を担当したEuanは苦労したそう。

 


後年に山口百恵、三浦友和で映画化。

 

舞台が島であり、漁村であることから考えて、マリンノートは必須だったよう。でも、生々しい漁港の匂いはリゾート地の清々しいマリンノートとは別物です。ヴァイオレットリーフアブソリュートはその生々しい漁港の匂いを表現するのにぴったりで、オークモスアブソリュートを合わせることで強化させているわけですが、そこが強すぎると使いにくい個性となってしまいます。雨を感じさせるカビっぽいアクアノートを重ねることで、海から上がって来た海女の様子、海女小屋の様子を思わせる香りとなりました。もちろんそこには若者の初恋が加わるわけで、ハニー調のフローラルノートが加わったのです。ベースにあるカラムスもとても使いづらい個性的な香りですが、漁港の雰囲気に青さを加えるアクセントとなっており、全体としては違和感なくまとめられています。

 

 

必要以上に美化された香りではなく、舞台と心情に沿って作られた香りであることが感じられるのですが、ある意味とても個性的で、万人が好むタイプではありません。でも、今の時代にはとてもマッチした、これぞマニア好みな香りなのです。物語のどの部分を表現しているのか、香りの変化と共に想像をしながら楽しめる香りとなっています。台風の翌日は、千切れた枝葉が吹き溜まり、青い匂いが漂いますが、神島を台風が吹き荒れ、草花をまき散らして過ぎ去った後の平穏な日々、という印象です。タイトルは「雨の島」。ハッピーエンドのラストノートまで、ゆっくりお楽しみください。

(04/03/2022)

 

 

 

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