■Baba Yaga (2014年)

ロシアでは誰もが知っている魔女の名前で、スラヴ民話に登場します。子どもをさらって食べるという内容で、子どもたちに恐れられているのだそう。森の中に住んでいることから、秋の香りは森の奥のイメージに。

トップ:ベルガモット、オレンジ、マンダリン
ミドル:シナモン、ナツメグ、クローヴァー、ピンクペッパー、ペッパー
ベース:レザー、ケード、アイリス、パチョリ、ジュニパーベリー

シナモンをアクセントとしたレザーの香りが秋の香りとなりました。4種の中では一番肌馴染みが良く、シナモンを始めとしたスパイスたちがとてもカッコよくレザーに重なって香ります。調香したCecileはこうしたオリエンタルベースの香りが得意ですので、安心して香っていられるバランスの良いスパイシーオリエンタルで、レザーがスモーキーでもなくワイルドでもなく、オリエンタルに溶けて香るところにユニセックスらしさを感じます。この香りのみEdPとEdTがあり、EdPは208.33ユーロなのに対し、EdTはブラックボトルで145.83ユーロとなっています。調香は同じで濃度だけが違うそうですよ。もちろんEdTのリフィルも発売されています。(16/08/2019)


■Djelem (2013年)

太陽はいつもセクシーな香りで私たちを陽気にする。タイトルは1971年に発売されたジプシーの歌から。ジプシーたちにとって国歌のようになった歌で、生粋のロシア人は、ジプシーたちの歌が大好きで、惜しみない賛辞を贈るのです。ボトルはジプシーのドレスをイメージしたものとなりました。

カーネーション、クローヴ、アンバー、イモーテル、ヘイ

まさかこれが夏の香りだとは・・・と一瞬たじろぐほどのスパイシーオリエンタルで始まります。少しクラシカルなアンバーノートにクローヴなどのスパイスが重なり、枯れ葉が溜まった秋の森のように感じられるのですが、そこでジプシーたちが歌い踊るのは夏なんですね。トップではチョコレートのような香ばしさが感じられたのですが、時間と共に干し草のアニスと甘く苦いイモーテルに支えられたオリエンタルとなって消えていきます。(16/08/2019)


■Vy Roza (2013年)

ロシア人にとっても春は自然の目覚め。ウキウキする待ちわびた生命の季節で、アレクサンドル・プーシキンの小説Eugene Oneginのヒロイン、Tatianaがモデル。その中で、「君はバラの花だ、美しきタチアナ」という一節があるため、香りはローズをメインに、ライラック、スズラン、グラスノートなどとなりました。

グラスノート、ローズ、ライラック、スズラン、ウッディノート

少しハニー調のフローラルがとてもリアルなライラックを成し、それがローズとグリーンノートを包み込んで香ります。このライラックノートは好き嫌いが分かれそうですが、リアルなライラックを感じさせる香りです。もっと賑やかでフレッシュな明るいフローラルを想像していたのですが、とても甘いフローラルでフレッシュさはありません。こうしたこってりとした甘さがとてもロシアという寒い国を思わせます。でも、春らしさは感じられないところが、国による感覚の違いですよね。スイートフローラルからやがて、香りはこってりとした石鹸のようなハニームスクとなって落ち着きます。(15/08/2019)


■Albho (2013年)

タイトルはロシア語で白鳥を意味しているのですが、それはインナーピース、穏やかな心を象徴するものだからなのだそう。ロシアではチャイコフスキーの白鳥の湖などにも登場する白鳥ですが、ロシアの冬はコントラストの季節。外は凍えるほど寒いのに、家の中は暖かだということをインナーピースとして表現したのかもしれません。何よりも四季の始まりが冬だというのが日本とは違いますよね。

トップ:ミント、ユーカリ
ミドル:パイン、シダーウッド、ガイヤックウッド
ベース:ベンゾイン、トルーバルサム、ラブダナム

ミントとユーカリで冬の冷たい空気感を表現したトップで始まる、とてもユニークな香りです。このトップの爽快感はナチュラルな成分ながらケミカルに感じられるほどスッキリとしており、香りはそこから冷たいけれど暖かいという樹脂系のオリエンタルウッディへと変化していきます。シベリアパインの森タイガの冬というイメージにぴったりで、静かな空気感を漂わせたオリエンタルとなって薄れていきます。(15/08/2019)