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Sampleレヴュー

■Mastin (2015年)

悩める魂よ、妨げるものがないならばここにきて語るが良い・・・と地獄に来た2人を呼び込んだ場面の三行詩。テーマは従うことを好まなず大胆な選択をする人、自分の運命を切り開く人たちの香り。タイトルは古いフランス語で「自由に生きる」という意味。

“Soon as the wind in our direction sways them,
My voice uplift I: o ye weary souls!
Come speak to us, if no one interdicts it.”

トップ:サフラン、カルダモン、ローズ、ホワイトウード
ミドル:ローズ、アイリス、オレンジブロッサム、ジャスミン、シダーウッド、ホワイトウッド
ベース:ブラックウッド、ムスク、ウード、アンバーグリス、アンバー、イエローサンド

ホワイトウード、ブラックウッド(ウード系の香料)、ウードとあるだけに、ウードが主軸な香りだと想像して香ると少し意外な香りかもしれません。ダークなウードではなくサフランの効いたふんわりとしたオリエンタルウッディなのです。もちろんウードのニュアンスも感じられるのですが、全体的に平坦というか、凸凹した香料が全くなく、全てが1つの香りとなって伸びやかに広がっているのです。アンバー系のウードを軽やかなフローラルノートとムスクで柔らかく包み込んだ香りで、最後はアンバーウッディノートが残りますので、大胆、奔放、自由というよりとても穏やかな印象で、重すぎず軽すぎずとても良いバランスのユニセックスな香りだと思います。(12/02/2016)


■Ensis (2015年)

飛び立った鳩が、心のままに住処に帰るかのように。それは、導かれるように家に帰る運命のような感覚。ということで、テーマはそのまま運命の香り。考えなくても家には帰れるという帰省本能のようなイメージを運命と関連付けて説明しています。

“As turtle-doves, called onward by desire,
With open and steady wings to the sweet nest
Fly through the air by their volition borne,”

トップ:ベルガモット、パンジー、グリーンリーフ、カシス
ミドル:ブラックカラント、ローズ、ライラック、スズラン、オゾンノート
ベース:ココア、パチョリ、アンバーノート、ムスク、スティール

香りに導かれて帰る、というなら納得です。号砲のようにパワフルなブラックカラントがグリーンにスパークしてスタートするのです。トップからミドルはブラックカラント一色で、それらをグリーンノートやオゾン、フローラルノートが補佐しているのですが、付けた瞬間のインパクトは大。ブラックカラントはトップで香る香料ですので、そこまで持続をするわけではないのですが、配合が多いことでミドル以降もニュアンスを引きずって香っています。ココアやパチョリは最後の最後にニュアンスとして登場するのですが、ブラックカラントとグリーンノートを押さえるほどのものではなく、最後まであまり主張することなく消えていきます。時間と共にブラックカラントもグリーンノートも穏やかになり、やがてはオゾンムスクとなって消えていきます。運命を感じさせるものはこれほど大きな印象だ、ということなのでしょうか。(12/02/2016)


■Mea Culpa (2015年)

神曲の第5歌の冒頭、Loveで始まる三行詩が3つ続くのですが、その2つ目の詩。愛されることに抗うことなど出来る人がいるものかと、心を虜にされてしまった様子を描いています。だから香りは平静を装うとしてもその壁を崩して心に入り込んでくる刺激的な香りに。タイトルのメアクルパは罪を認めることを意味しています。

“Love, that exempts no one beloved from loving,
Seized me with pleasure of this man so strongly,
That, as thou seest, it doth not yet desert me.”

トップ:フランキンセンス、レッドサンド
ミドル:パチョリ、シダーウッド、バーチ、パウダリーノート
ベース:ムスク、バニラ、ベンゾイン

刺激的というよりも個性的。香りの軸はたっぷりのパチョリで、スイートパチョリに少しスモーキーノートやウッディノートを加えたもので、スパイスで刺激的にしているわけではありません。フランキンセンスもたっぷりあるそうなのですが、それをパチョリが覆い隠してしまっているようで全くそれらしさを感じません。パチョリの中の揮発性の高い部分がトップで渋くスパイスのように弾けた後は、柔らかくしっとりとしたオリエンタルなパチョリへと変化して落ち着きます。愛の物語を表現する香りとしては異質で、タイトルのように罪深い、というイメージに合わせた香りだということが読み取れます。オリエンタルなパチョリがお好きな方であれば外すことのない香りだと思います。(11/02/2016)


■Irae (2015年)

神曲の第5歌の最後、Loveで始まる三行詩が3つ続くのですが、この3つ目の内容がテーマ。Cainaは地獄の一番深い場所であり、一番罪深き魂の行き場所。2人の愛はそこへ自分たちを導くものであった、と。香りは、自分の心の奥深くまで響くようなミステリアスな香りとのこと。何をも恐れず、愛というものの価値を信じている者たちの香り。ちなみにタイトルは「怒り」の意味。

“Love has conducted us unto one death;
Caina waiteth him who quenched our Life!
These words were borne along from them to us.”

トップ:ベルガモット、カカオ、トンカビーン
ミドル:山椒、ニガヨモギ、コリアンダー、メタリックノート
ベース:ローズウッド、オークウッド、アンバークリスタル

怒りというタイトルを表現した香りであることが、山椒がトップで弾ける様子から感じられます。山椒の主成分はローズウッドやコリアンダーと同じくリナロールなのですが、主成分ではない部分がパッと散って、そこからスパイスの中のリナロールが一斉に広がります。メタリックノートはあまり強くはなく、基本的には少し甘いスイートベースでスパイスたちをまとめたというもの。トップに配置されたカカオは全く感じられず、トンカビーンはミドルになってようやく感じられるかな、というところ。時間と共にアンバーウッディノートが出てきますので、第一印象ではなく、最後までニュアンスを確認してから購入された方が良さそうです。とても穏やかなラストノートですよ。(10/02/2016)


■Kashimire (2015年)

Magnificatの詩の直前の三行詩で、どうしたら愛は認められるのかと、叶わぬ恋に心を痛めている様子です。叶わぬ恋とアーサー王の伝説のドラゴンを重ね、この香りはこれから対峙すべき大きな問題に立ち向かうべく自分自身のエネルギーのシールドで守るという香り。

“But tell me, at the time of those sweet sighs,
By what and in what manner love conceded,
That you should know your dubious desires?”

トップ:アンバー、コパイババルサム、カシミア
ミドル:バニラ、ゼラニウム、イランイラン、サンダルウッド
ベース:ラブダナム、ベチバー、パチョリ、ムスク

かなり甘いパウダリーなスイートノートでゼラニウムを包み込んでいるというのが最初の印象でした。樹脂系の甘さ、アンバーノートが主体となっているため、全体としてはどことなくオポポナックスベースに通じる香りとなっています。後は調香にはないアーモンドの欠片が感じられたり、イランイランの中のフローラル感が顔をのぞかせたりしますが、後半はスイートムスクとなって肌の上に薄いヴェールのように広がって薄れていきます。基本的には柔らかで甘いスイートムスクかな、という感じですね。それほどウッディノートは強くなく、アンバーほどどっしりとしたオリエンタルさもありません。こうした香りの中にゼラニウムを使うこと自体が珍しいと思うのですが(通常であればローズです)、その部分が案外持続しているのがポイント。香りのシールドで守るという意味合いにぴったりな第2の素肌になる香り。(10/02/2016)


■Magnificat (2015年)

惨めで悲哀に満ちた中で幸せだったころを偲ぶより、幸せな記憶が忘れられないことほど悲しいものはない、と叶わぬ恋を嘆いている内容です。タイトルのマニフィカートは、ルカ福音書の中で受胎告知を受けたマリアが神に感謝する賛歌のこと。

“And she to me: there is no greater sorrow
Than to be mindful of the happy time
In misery, and that thy teacher knows.”

トップ:イランイラン、ローズ、ストーンパウダー、アンバー
ミドル:コットンキャンディー、ゼラニウム、サンダルウッド、アンバー
ベース:ムスク、バニラ、ベンゾイン、パチョリ、サンダルウッド、フランキンセンス

惹かれあいながら一緒になれない恋物語の中盤は、かなり甘いグルマン寄りの香りとなっています。トップではアーモンドっぽいニュアンスが弾け、そこからどんどんバニラをメインとしたグルマンノートへと切り替わっていきます。トップからラストまで甘い。パチョリ、アンバーノートやウッディノートの欠片こそ感じられるものの、オリエンタルというよりもやはりグルマン寄りなまとめ方で、あまり大きく変化することなく、しっかりとしたクリーミーなスイートパウダリーノートが肌に残ります。(09/02/2016)


■Alibi (2015年)

パオロとフランチェスカがアーサー物語の不義の恋物語を読んでいる場面の三行詩で、気晴らしに・・・と恋に捕らわれた物語を2人で読んだ。でも、自分たちの心には不安などなかった・・・という内容。タイトルはそのままアリバイ。

“One day we reading were for our delight
of Lancelot, how love did him enthrall.
Alone we were and without any fear.”

トップ:サイプレス、ベルガモット、マンダリン、ソルト
ミドル:ベチバー、シダーウッド、エレミ、ピート
ベース:カシミア、パチョリ、レザー、ベンゾイン、ムスク

ソルトノートがどのように香るのか、いかにアロマティックになっているのかがポイントだと思うのですが、これは精油感の強いベチバーを主体とした香りです。トップの時点ですでにベチバーが香り、少しアロマティックだな、と感じた瞬間にターンしてベチバー一色となります。土臭いベチバーではなく、とても精製されたシンプルさを感じますので、精油ではなく単品香料で再構築したものなのかもしれませんね。どちらにしてもベチバーが少しエレガントな雰囲気に感じられますので、女性の皆さんにも安心して使って欲しいベチバーです。レザーもパチョリもシダーウッドも全てが微かなアクセントと言う感じで、ベチバーを支えています。特にラストのベチバーとムスクのコンビネーションはエレガント。(09/02/2016)


■Mirabile (2015年)

パオロとフランチェスカが読んでいた本(アーサー物語)の中に登場するランスロットとグネヴィアの恋物語。その本を読むと2人はそそのかされたり青ざめたりした、だけど打ち負かされたのは一カ所だけだった・・・という内容。下記の三行詩をテーマとして描いたのは母親の愛情のようです。それは悪霊を払いのけるパワーがある、と。

“Full many a time our eyes together drew,
That reading, and drove the colour from our faces;
But one point only was it that o'ercame us.”

トップ:バニラ、モルト、オポポナックス
ミドル:ラム、ダヴァナ、ブルボンゼラニウム、ブッチュ、ラベンダー、ローズ、ミルク
ベース:バニラ、パチョリ、クローヴ、トンカビーン、ムスク

グルマン系の香りの中にラベンダーとゼラニウムを入れるなんて、個性的すぎて理解不能な気がしたのですが、調香そのままにバニラの中からゼラニウムとラベンダーが香る、という個性的なものとなっています。トップではかなり強くフルーツがスパークし、フルーティーなバニラという可愛らしいテイストだったのですが、すぐにゼラニウムとラベンダーが香るのです。フルーツはトップの一瞬で消えてしまうため、可愛らしさは持続をせず、アロマティックなバニラという何ともユニークな香りが肌に残ります。バニラとミルクで甘く柔らかな母親のイメージを表現したのでしょうが、パウダリーな要素が全くないことが意外でした。(08/02/2016)


■Amans (2015年)

ラテン語のアマンス・・・恋人や愛する人を意味する言葉がタイトルで、この香りの三行詩は、

“Kissed me upon the mouth all palpitating.
Galeotto was the book and he who wrote it.
That day no farther did we read therein.”

トップ:ベルガモット、レモン、カルダモン、ピンクグレープフルーツ
ミドル:ローズマリー、ナツメグ、ゼラニウム、オゾンノート
ベース:ローズウッド、パチョリ、トンカビーン、ムスク

プッシュした瞬間にオゾンノートだと感じたのですが、すぐに香りはカルダモンのスパイシーさとローズマリーのピネンの香りに切り替わり、アロマティックなフレッシュノートとなりました。たっぷりのシトラスは1つ1つわからないものの全てを軽やかに持ち上げ、アロマティックなハーブたちをオゾンノートが微かなアクセントとなってとりまとめています。トップでは微かなアクセントだったこのオゾンノートは、持続がとても長いので、ミドルからラストではキーノートへと切り替わっていきますので、苦手な方は要注意。ナツメグやパチョリは際立たず、ローズウッドというよりもリナロールが強めな軽いウッディノートと言った方が良さそうな、軽やかなベースノートがムスクと共に伸びやかに続き、少しメンズ寄りのユニセックスなテイストとなって薄れていきます。これはパオロとフランチェスカが読んでいた本(アーサー物語)の中のランスロットとグネヴィアの恋物語の三行詩なのですが、淡い恋を表現するには少しメンズっぽいかもしれません。ガレオットがテーマということなのでしょうか。(08/02/2016)

 

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