*Log in
 *Log out
 *My account

| Top | Books | Topics | PMF | Q & A | Making | Essential | profice sns | Perfumers |  PRESS |
  

■トルコのラベンダー畑

 

 

トルコの香料として有名なものは、何を差し置いてもまずはローズでしょう。隣国のブルガリア、北アフリカのモロッコ、そしてトルコが3大ローズの産地です。トルコの中でローズの街、ローズの産地として有名なのは、南部のアンタルヤからバスで2時間半ほどの距離にあるウスパルタ(Ispartaと書いてウスパルタと読みます)。その近郊に蒸留所があることは以前から知っていたのですが、3月末に出かけたとしても見られるものなどないと思っていました。ローズは5月だし、ラベンダーは6月ですからね。ところが、アンタルヤに到着したその日の夜に、アンタルヤにいるのなら是非、ウスパルタに来て欲しいと連絡があったのです。何故なら、ちょうど今ラベンダーの蒸留をしているから・・・と。

え? ラベンダーが咲いている季節ではないのでは? ウスパルタは気候が違うの?

立ち寄ってもらえるようにリップサービスで言ったのかと疑ったほど。実際に見られなかったとしても、街を見るだけでもイメージはつかめるよね、と出かけることにしたのでした。

 

 

アンタルヤのオトガル(バスターミナル)も他の街と同じように市内の外れにありましたが、結構長距離の発着が多いらしく、朝から賑わっていました。いつものように行先を継げると、チケットブースへ案内してくれ、時間と発着番号を教えてくれます。そこへ行くとバスが待っている・・・というとても簡単なバスの旅。

 

 

乗り込んだ社内もとても綺麗で、出発すると有名なコロンヤのサービスが始まりました。トルコのコロンヤは、とても軽いいわゆるコロンのようなもので、手のひらにパシャパシャと振りかけてもらい、それで手や顔を拭きリフレッシュするというもの。さっぱりとしたフェイスシートの代用みたいなものです。トルコに来たらまず体験したかったコロンヤもここでクリアに。このバスはスタッフも乗り込んでいて、お水のサービスなども気を配ってくれます。

 

 

海側のアンタルヤを離れたバスが内陸に向かうと、このような風景に。ここは本当にトルコなの? 牧歌的な草原に、雪を抱いた山々が連なる様子はスイスかと思うほど。とてもトルコとは思えないよ、と感じてしまいましたが、冬はスキーなどのウインタースポーツも有名なのだそう。トルコは広いし、湖も山も多いのだから、さぞかし美しい景色が多いことでしょう。

 

 

ウスパルタのオトガルで待っていてくれたのは、Hasanさん。ウスパルタの市内からさらに40分ほど内陸に入ったKeciborluという村に彼の蒸留所はあると言います。でも、何はともあれまずは食事でしょう、と彼はとてもローカルなレストランに連れて行ってくれました。

 

 

田舎のおもてなしというのはどこでも温かで、さぁ、食べて食べて食べて!! と、次々運ばれてきたピデ(トルコ風ピッツァ)とケバブたち。野菜の肉、ソーセージのグリルは間違いのない美味しさ。ピデはひき肉とスパイスの組み合わせで、餃子の具に似ています。もちろん、それももうお馴染みの美味しさ。あっという間に食べつくす彼に合わせて頑張りましたとも。でも、食べきれずに残りはテイクアウトとし、夜もピデとなりました。この時、初めて塩味のヨーグルトドリンクを飲んだのですが、これはダメでした。ヨーグルトは健康的なのに、塩味が強すぎて身体に悪い。ピデに振りかけるトッピングとしてハーブや唐辛子、サラダ用にはザクロのシロップがあったのですが、その他に梅にも酸味のものがありました。ウルシ科の果実の粉末だそう。これは謎のまま・・・。

 

 

トルコのデザートは死ぬほど甘い。イスタンブールでは一口、二口でリタイアしてしまったため、おもてなしと言えど、こ、これは・・・。でも、彼は携帯の自動翻訳を使い、

「あなたの食べているところを見てみたい」

と、変な訳で迫ってきたのです。(あなたに食べてみて欲しいの誤訳でしょう)
それはチャレンジするしかないじゃないですか。意を決して食べたら、なんとか完食。これは、細い細い糸のような揚麺をに、ハチミツの入ったシロップとサワークリームをたっぷりと乗せた冷たいデザートで、上にはクルミとピスタチオが乗っています。結構贅沢ですよね。ご馳走様!! と、帰ろうとしたところにまたコロンヤが。こちらではシトラスのコロンヤだけではなく、ローズのコロンヤもありましたので、二つとも試しましたよ。

 

 

結構離れているんだなぁ・・・と思いながら、Keciborluに向かいます。彼は、自分の蒸留所が100%オーガニックだということを繰り返し繰り返し、それもウンザリするほど繰り返します。今でこそ世の中はオーガニックで当たり前、オーガニックではないローズウォーターを探す方が大変なほどだと思うのですが、トルコでのオーガニック需要というのはまだ低く、世界に遅れを取っています。ウスパルタの市内、そこから延びる国道の至る所にローズを使用した製品を販売するショップが点在していましたが、どの商品も天然香料を使用していないのだと説明してくれました。お土産用で買う価値はないと。

携帯の自動翻訳はいつも微妙な訳を返してきますが、伝わらないほどではないので、英語が堪能ではない彼との会話のツールとなりました。そんなこんなでたどり着いたのは、村の畑。そう、春まだ浅いこの季節は、ローズの新芽がちょうど動き出した頃でした。わかりますか? これがローズ畑なんです。一面の・・・というところまではいきませんが、こうした畑が至る所に点在していました。合算するとかなりな広さですよ。

 

 

ちなみに、5月であればこんな風景が見られます。今年は5/20がローズフェスティバルなのだそう。

 

 

すっかり枯れ果てた畑を見てハッとしました。下に葉が覗いているこ、これは・・・。一面に枯れた茎が見えているそれは・・・

 

 

貴重なアイリスの畑だったのです。トルコでアイリス!! 今は生育期で蒸留はしていないようですが、根が成長したら、原料の根のままで香料会社へ売るのでしょう。溶剤超出は田舎では難しいですからね。でも、アイリスの花の季節はローズと似ていますのでローズと一緒に見られるならばラッキーですよね。

 

 

そして、最後にたどり着いたのはラベンダー畑でした。ちょっと今まで見てきた畑と違います。それは樹形です。通常は機械で刈り取りをしやすいよう、トンネル型というかかまぼこ型に育てていくのですが、こちらではこんもりとした丸い山形に。これをどうやって刈り取るのか、とお聞きしたらチェーンソーのようなものでバリカンのように刈るのだと。一応、機械で刈るよと説明されました。この村にはこうしたラベンダー畑がローズ同様至るところに点在しています。

 

 

畑からさほど遠くない場所にあった蒸留所は彼の家の敷地内にありました。手作りのような小さな蒸留釜は各国で見ましたが、仕組みは同じでもこちらは冷却部が大きくて使いやすそう。そこにラベンダーと水を直接投入します。そう、これは水蒸気蒸留の中でも直接蒸留といういわば茹でる方式。

 

 

そこで初めて知ったのです。彼らが蒸留しているのはドライラベンダーであると。ラベンダー色の抜けてしまったそれは、あれ? 茎が少なくない? ひょっとして花穂だけ? なんて聞いてみたら、これでも全草なのだそう。もみ殻みたいですから、芳香は紛れもなくラベンダーでした。

 

 

接合部を泥に浸した布で巻いていくスタイルも各国同様です。これでいざ、蒸留がスタート。下の窯に薪をくべていくのですが、その薪はリンゴの枝でした。ローズやラベンダーの産地ということから想像も難くないと思いますが、寒冷地のフルーツであるリンゴやチェリーの産地でもあるのです。冬は春に向けて余計な枝を整理する季節。それを使用していたのでした。

 

 

途中、知り合いだという方々が撮影に訪れました。それは、毎日蒸留しているわけではないから。そう、彼らの本業は蒸留ではありません。普段は図書館員だって!! 乾燥されたラベンダーを供給に合わせて蒸留していたんですね・・・って、ここでもう1つ大切なことが判明です。彼らの商材はラベンダーウォーター、ローズウォーターであって精油ではなかったのです。化粧品用の蒸留水がメインであり、精油は二次産物なんですね。どうして? と聞くと、販売するほどの量が得られないからだとのこと。

 

 

さぁ、蒸留を待ちましょう・・・と奥様がチャイ(紅茶)とケーキをふるまって下さいました。素朴で美味しいケーキと、トルコのチャイは相性もぴったり。やはりこちらのご家庭でも上下二段のやかんを使用していましたよ。上には紅茶を煮だした紅茶が、下にはお湯が入っており、各自が好みに合わせて濃度を調整して飲むというスタイルです。画像のコップには半分の紅茶が注がれていますが、この後お湯でコップを満たすのです。ハーフ & ハーフが基本?

 

 

蒸留を待っていたら日が暮れると心配していた僕に、1時間半くらいで終わるよという彼。その言葉通りに、今まで体験したことないほど勢い良く蒸留され、あっという間に完了。ラベンダーの収油率は高いことで知られていますが、こんなにオイルが溜まるとワクワクしてきます。

 

 

少し放置してハイドロゾル(ラベンダーウォーター)部とオイルが綺麗に分離するのを待ちます。その上で上部のオイルを抜き取り、ペットボトルに入れていくのです。最後、オイルと水のギリギリの分離分は合わせてそのまま抜き取り、前日のものと合わせて分離分を抜き取る、という理にかなった手法。この時、最後の最後に取ったオイルを含んだ蒸留水の部分を僕の衣服にスプレーしてくれたため、帰りのバスの中はとても心地良いラベンダーの香りに包まれていました。いえ、服はその後も良い香りを漂わせていましたよ。

 

 

結局、こちらでは500mlのラベンダーウォーターとローズウォーター、そして30mlほどのラベンダーオイルと2mlほどのローズオイルをお土産に頂きました。このローズオイルは貴重なトルコローズオットーで、きちんと結晶化しています。ローズオットーはブルガリアでも高価なのだから、トルコローズとなるとさらに高価なもの。ローズウォーターはオーガニックだから飲めるよ、なんて。この後、ミラノの展示会が待っていた僕にとっては結構な荷物となってしまいましたが、きちんと全てを安全に持ち帰りましたよ、日本まで。

ラベンダーは日常的にどうやって利用しているの? と聞いた僕に彼らはハゲに効くんだと説明してくれました。ホントに? ラベンダーオイルを5、6滴頭皮に馴染ませるのが昔からの使い方だって。

 

 

さぁ、これが彼らの最後の仕事。ラベンダーウォーターを専用の容器に移し替えます。でも、濾しただけ。これを一晩置くと透明になって落ち着くといいます。

 

 

ラベンダーの蒸留は南仏やブルガリア、それこそ日本でも北海道や長野などで体験が出来る、蒸留としてはさほど珍しくないハーブです。でも、やはり田舎の小さな蒸留所でこうした人たちの手間を経て出来上がっていくものなのだと再確認することで、商品への思い入れや価値の理解が深まるというもの。貴重な体験が出来ました。だって、他国とは少し香りが違うのですから!!

この後、バスに乗る僕をバス停まで見送ってくれたHasanさんがトランクから出して持たせてくれたのはたっぷりのクルミでした。でも、クルミはかさばるよ〜。

 

 

まさか、ミラノでの最初の夜に、クルミのから剥きをすることになるとは思ってもみませんでした。でも食べてみたら・・・なんか甘くない?
翌日にNishaneのMert君が説明してくれたのは、ウスパルタがクルミの産地として有名であるということ。そして、その地のクルミは他のものより甘いのが特徴なのだと。なんと彼のお父さんはウスパルタのご出身なのでした。

クルミは炒ってサラダに合わせてミラノでも食べましたよ。もちろん持ち帰りましたので、今でも美味しくいただいています。

アンタルヤはトルコの中でも南に位置していることで、情勢を鑑みると旅行を見合わせる方も多いのが現状です。でも、シリア国境はまだまだ先の地域で、危険など感じない地域ですから、是非日本の皆さまにも訪れていただきたい場所です。

(06/04/2017)

 

 

<profice fragrance magazine Topに戻る>

profice〜香水のポータルサイト〜