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■香料植物の宝庫、北チュニジアのナフザを目指す。

 

 

チュニジアの民主化運動、ジャスミン革命から5年。23年間の独裁体制こそなくなったものの、体質そのものが何一つ変わっていないこともあり、5年前に戻りつつあると言われてしまっているチュニジア。この国の産業は全てが海外資本であり、何一つ自国の産業とは言えないのが実情だと語るガイドの言葉が意味するように、豊かな国造りは国内から・・・という声が高まってきているのでしょう。

近郊の街とは違い、チュニジアらしい観光資源に乏しく、観光マップにも街の名前が見つからないような北チュニジアのネフザという街を目指すことになったのは、その地に住む若者から連絡をもらったことがきっかけでした。

 

 

チュニス市内を早朝に出発し、2時間程度だよ、という街へ向かう。チュニス市内を抜けると景色は一転して田舎の牧歌的な風景へと転じ、チュニジアにいることを忘れてしまうほどの光景が続きます。

 

 

あまりに美しい景色に思わず車を止めてもらい、外に出て空気を吸いながらの休憩。白と黄色のキク科の植物が大地を彩っていた4月半ば、一番この国が美しい季節だよ、とのこと。丘は多いけれど高い山や森は少なく、頂上までこうした草原の風景が続いています。

 

 

十字路というのは、人の往来があるわけで、マーケット日和だったよう。

 

 

シチリアもそうだったけれど、とにかくシトラス果実が豊富なこと豊富なこと。それ以外のフルーツはいちごだけですから。

 

 

この国に限らず、片方の靴だけ並べられていることが多いのは、盗難を防ぐため。片方では盗んでも意味ないですもんね。

 

 

モロッコと同じく、デーツの一大産地なのがチュニジア。お土産品ではなく、市民のおやつとしての需要が多く、街中ではあちらこちらで売られていました。デーツって、蜂蜜入りの干し柿のようなイメージだったのですが、チュニジアのこれはただただ干しただけのもの。ただそれだけで濃厚な甘さが広がるのです。味は小豆に干し柿を足した感じ。美味しいですよ、素朴で。

 

 

使われなくなったトロッコの上に、鳥が巣を作っていました。この距離で見えている鳥って大きくない?

 

 

辺りを見渡すと、鳥の巣だらけ!! これ、コウノトリなんです。とても大きな鳥で、飛ぶと余計に大きくなって迫力があります。電柱に巣をつくるため、電力会社が巣を作れないようにしているそうですが、渡り鳥であるコウノトリは、毎年ここに飛来して子作りをするのだそう。産婦人科医夫人であるマダムにとっては思いもかけないめぐり合いでした。だって産婦人科にとってはシンボルじゃないですか。

 

 

途中でちょっとした休憩を入れてたどり着いたのは11:00、この景色の中でした。右に見えている森には何やら下草として白い花の咲く灌木が一面に植わっており、樹木の葉の濃い緑と星のように散らばる白い花が見事なコントラストを醸し出していました。ここで止まったのは検問があったから。そう、一年前に起きたバルド国立博物館のテロ事件も記憶に新しいかと思いますが、この国はテロや事件がまだ多い国。国として観光者を管理したいらしく、個人での遠出のツアーは難しく、全て代理店経由にして欲しい、と言われたことを思い出します。この日はなんと往復で7度も検問があったんですよ!!

この時、検問所の横にあったカフェにユーカリの精油が大きなペットボトルで置かれていました。香ってみると、慣れているユーカリと全く違います。不思議に思っていたユーカリの香りもその後に謎が解けることとなります。

 

 

ネフザの街に入り、Hotel Alrawabiのカフェで皆さんとお茶を。そこで合流したのはAla Edine Dhaouafi君とMastouri Aliさんでした。Edineは僕がコンタクトを取っていた若者。大学で植物学を学び、これから精油の販売を行いたいと考えているそうで、チュニジア、特にこのネフザにある植物についての知識は全てインプットしているようです。Mastouriさんは彼の先生だと紹介されました。

「とにかく、サンプルを用意してくれ」

と、事前に説明したこともあり、真っ先にサンプルを出してくれました。でも、香ってみてびっくり・・・。そのほとんどが香り慣れている精油たちと違うのです。部位も一緒、学名も一緒? え? こんなに違うの? 一同が驚いたその植物たちを実際に見に行くことに。百聞は一見にしかず、です。

 

 

Edineにハーブ畑を見たいのだと伝えていたのですが、ワイルド農法だから森に樹木と一緒にあるよ。と、ちょっと答えが曖昧だった理由がここに来て明らかとなりました。

彼らは植えていなかったのです。

 

 

森の下草で見た白い花々は、なんとなんとなんと、予想していなかったラブダナムでした。栽培というよりも「自生」なんです、これら。畑ではなくそのままなんです。ということは、この森は宝の森?

 

 

植物に詳しい僕でさえ、知らない植物があります。これはナンだかわかりますか?

 

 

Edineが見せてくれたのは、2種類のラブダナム(ロックローズ)でした。細い葉のものは一般的に良く見かけるタイプのものです。園芸種には葉の広いタイプのものもあり、花も白ではなくピンクやミックスがあったりするのですが、このような葉先が少し丸いタイプのラブダナムを見たのは初めてです。しかも、園芸種ではないのですから。Halimium halimifoliumという名前で、なんとそっくりな黄色の花が咲くのです。黄色のラブダナムの花なんて見たことないよ。Halimium halimifoliumからは香料の採取を行っていないそうですが、今後行う予定とのこと。今まで体験したことのないラブダナムがここには存在するわけです。テンションが上がる!!

 

 

ラブダナムの灌木の近くにたくさん植わっていたのは、Pistacia lentiscusという植物。ピスタチア・・・という学名ですがピスタチオではありません。これはマスティック、レンティスクと呼ばれる香料樹木なのです。僕も初対面で大感動。まさか、ここでマスティックを見られるなんて。マスティックはギリシアが一番有名で、半透明なレモン色の樹脂が採取でき、それをお菓子(クッキーやアイスクリーム)や化粧品に使用する、ということは知っていましたし、樹脂自体も所有しているのですが、樹木となると話は別。ちょっと折ってもいい? と聞くと、どうぞどうぞ、と枝をくれました。枝から香る香りはリナロールの多いすっきりとしたフレッシュなアロマティック香で、精油そのものではないにしろ明らかに今までに体験したことのない種類です。マスティックの精油は近年の人気で、香水の中にも良く見かけるようになってきました。でも、高い。樹脂から精油を得ているのだとばかり思っていたのですが、こちらでは枝葉から蒸留するそうです。もっとピネン類の多いアロマティックな香りなんでしょうね。ちなみに、このマスティック、オリーヴの栽培が始まる前までは、果実から植物油を得ていたそうです。今のチュニジアは広大な土地でオリーヴを栽培していますから、これはもう忘れ去られた樹木。それが、こんなに価値のある樹木だったと、今になって気づいたわけです。まさに、宝の森。

 

 

こちらはユーカリの森。ユーカリは雨が少ない乾燥地帯でも育つ強靭な樹木ですから、南部の砂漠に続く地域でも頻繁に街路樹として植えられていました。でも、この国の、この地域のユーカリは他の地域のものと違っていたのです。どこが違うかわかりますか? (ちなみに、上記画像の中で下草として生えているのはラベンダーとマートルで、ユーカリだけが植樹だそう)

 

 

この森にあった3種のユーカリの葉。丸い葉は若い葉で、成長と共に細長くなりますよね。でも、ここにあったのは、一番左にある先の尖った丸葉だったのです。1つ上の画像を見て下さい。成長しても葉の形は変わりません。学名はEucalyptus citriodoraだそうですから、取り残された島で固有種が増えたように、この土地には固有種が多く育っているそうなのです。ちなみに精油はシネオールが極端に少ない(湿布香の薄い)香りで、フルーティーな香りを有しています。

 

 

近年では葉からの精油も流通していますが、アロマセラピストの皆さんも葉だけでは何の植物かわからないのではないでしょうか? 実があるとわかりやすいのですが。

 

 

これが、このナフザで育っているジュニパーベリーなのです。そう、上記の葉はジュニパーリーフなんですよ。このベリーは直径が1.5cmほどもある巨大なベリーを実らせていて、とにかくそのサイズにびっくり。樹高も身長より遥かに高かったですよ。

 

 

細葉の良く見るタイプのユーカリだって大木になっています。わかりますか? その下草たちが全て、自然のままの香るワイルドプランツなのです。

 

 

下草として多くあったのはマートルでした。画像の上方がマートルで、下の方はマスティックが映っています。畑ではなく、山にあるなんて。

 

 

これも日本で見かける植物とは違って見えます。ホースミントなんですよ。葉の形も茎の様子の日本のホースミントと違いますよね。精油の香りももちろん違っていて、少しローズ調のウッディさをもった深みのあるミントの香りです。この他にもワイルドキャロットの精油があるのですが、全然土臭くなく逆にフルーティーなんですよ。驚いて聞いたら、種子ではなく花穂を蒸留して得ているのだそう。部位でこんなに香りが変わるんですね。サイプレスも随分印象が違っていました。

 

 

広大な敷地の中に、蒸留所が点在しています。ここでの蒸留は終わり、6月にはもっと大きな蒸留釜を購入してたくさん蒸留する予定だとか。この他に勉強用の部屋も用意されていました。皆さん学ぶためのスペースなのです。・・・何故?

 

 

蒸留は見られないのか、と聞いた僕らに対し、デモンストレーションなら・・・と始めてくれたのはラベンダーの蒸留でした。決して豪華ではない、とても小さな簡易的な蒸留器ですが、仕組み自体は理解ができますよね。水蒸気が出始めて5分ほど経つと外まで良い香りが広がり始めました。

 

 

蒸留していただいたのは、ユーカリの下草として自生していたスコッチラベンダー。

 

 

彼らの取り組みというのは、Maison Nature des Mogodsと呼ばれているものだそうで、WWF、Sylvagri、BIO tunisiaやFoundation Slow Food pour La Biodiversite、そして国からのODAを受けて作られた学校の運営です。先生であるMastouri Aliさんは、こちらで野菜作り、蜂蜜、蒸留の3つを教えているのです。それらは全てがつながっており、野菜を作る堆肥は蒸留後の残留物から、畑とハーブの花から蜂蜜が取れることに。彼らの蜂蜜や取り除かれたワックス類は化粧品だけではなくて医療にも使われているそう。

 

 

Bioで育てた野菜の美味しさを皆さんに知ってもらいたい、と。世界中では当たり前のことでも、この国での理解度はまだ低い上に、野菜そのものの摂取量も低いのが現実。訪れる方たちは、野菜の美味しさを知り、学んだ上で国から土地を借りて農業を行う。とにかく知ってほしい、広めてほしいという心から、巣立つ生徒さんたちに課しているのはただ一つ、「訪問者は無償で受け入れること」。

 

 

大切なことは、昔からある自然の恵みを、育て守りながら恩恵を受けていくこと。チュニジア国内にBIOを謳う精油会社は他にもあるかもしれない。でも、ここで作られた製品は間違いないよ、と笑います。彼らの精油はまだ小ロットで、昨年の分は全て販売してしまったそう。だから手に入れるとしたら今年の蒸留直後のものを狙わないと難しいでしょう。価格が少々高くとも、彼らの精油を使うことが別の援助になる。そして我々は、他国にはない珍しい香料が得られる。始まって数年の取り組みですが、内容はとても濃く、楽しい視察となりました。施設の皆さんに感謝!!

(06/05/2016)

 

 

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