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様々なキンモクセイ


キンモクセイは中国原産の常緑樹です。雄株と雌株があるのですが、日本に入ってきたのはほぼ雄株のために実がなるところをあまり見かけません。アジア特有の香りとしての認識が高く、ヨーロッパやアメリカなどではあまりメジャーではないために、随分と長い間香料として使われてこなかったようです。でも、白ワインに花の香りを移した桂花陳酒等は有名ですよね。後はお茶とか。どちらにしても産地である中国がメインです。

日本人にはとても馴染みの深い花で、昭和生まれの方々には「トイレの芳香剤」としての記憶が強いと思います。これは、比較的簡単に再現が出来たからだそうです。(そこまで生花に近くはなかったのですが)それだけではなく、もともとキンモクセイの香りはトイレの近くに植えられていたという習慣があったんです。思い返せば、うちの祖父母の家もトイレの横に大きなキンモクセイがありました。1年にたった1週間しか開花時期がないのに、芳香剤として植えられていたんですね。


精油は今でも中国が産地で、少ないながらも生産されています。生産量が少ないことに加えて、開花時期が短いためにとても貴重な精油となっています。大量生産品に使うほどの量はないので、きちんと生産をコントロールしているニッキアフレグランスにのみ、天然香料が使用されています。

今年、このキンモクセイの香りを摘み取り、アルコールに浸した浸出液と、ホホバオイルに浸した浸出液をそれぞれ作りました。すでにアルコールにもホホバオイルにも香りが移りこんでいます。この2つの生花保存液を使用し、オフ会を開催したいと思います。(1ヵ月半後には完全な浸出液が出来上がっていると嬉しいのですが・・・)

また、通常ですとオフ会にて香りの比較を行うところですが、キンモクセイの開花時期にはキンモクセイの香りの香水をお探しになられる方がぐぐっと増えますので、今回はフライングで先に手元の香りを比較したいと思います。

日時:2007年11月23日(祝)、24日(土) 14:00〜20:00
場所:杉並区高円寺 有限会社ドゥエッティ(Map)       
参加費:1000円

23、24日共に満員に近く、当日キャンセルや連絡なしでの不参加、という方もいらっしゃいましたが、基本的にしっかりとした方が多いようで、ナンの問題もなく2日間終了しました。無断欠席されると、二度と参加申し込み出来ない雰囲気になってしまいますので、連絡くらいは欲しかったところ。
今回も香りを14種類と幅広く集めてのオフ会でした。この他にキンモクセイのチンキと、ホホバオイルの浸出液を作り、それも活用しての比較となりました。いつものようにアンケートもお願いしまして、まとめてみました。今回は生花そのものがない分、敢えて「生花に近いもの」という項目を無くしてのアンケートです。
1、昔懐かしい系
2、精油系
3、あまりオスマンサスを感じないもの
4、好きな香り
という4つの項目でアンケートを実施しましたところ、いつもと違い今回は結構結果が偏りました。偏ったというか同じような意見が多かった、ということです。精油っぽい香りはレザー、スモーキー、ウッディ、薬っぽい、ワイルド、渋いという表現が多く見られました。そうなんです、精油は生花の華やかさよりもどっしりとした「エキス」なんですよね。逆に考えるとキレイすぎる香りというのは精油ではない、ということがわかります。参加者の皆様には、1番の精油希釈を香った頂いた上で、それを基準に「精油っぽいもの」と「そうでないもの」と分けて頂きました。

※アルコールに漬けたチンキと、ホホバオイルに漬け込んだ浸出オイルは、アルコールの方が濃すぎて生花の香りとはかけ離れてしまいました。ムエットを放置すると欠片は感じるのですが、良い香りとは言えないです。ホホバオイルの方は、付けてしばらくすると生花のふくよかな香りが出てきます。香りを再現するのにアプリコットを使用するということで良く理解出来るフルーティーな香りになっています。

オスマンサス(キンモクセイ)の比較
1、La via del Profumoの「Osmanthus」
もう、果てしなくワイルドなエッセンス。精油の希釈ですが、精油の力強さをとても強く感じる香りです。パチョリのようなアーシーさを感じる少しパウダリーで薬っぽい香り。あぁ、薬っぽいという表現が一番ぴったりなのかも。この香りを存分にいかし、香水としてまとめたのがFrutti Paradisiです。オスマンサスアブソリュートの香りがお好きな方にはとってもおススメ。

2、Keiko Mecheriの「Osmanthus」
日本では「フルールドオスマンサス」として表記されていますが、オフィシャルサイトでは「オスマンサス」なんですよね。タイトルが変更なのかな。香りはあまりオスマンサスっぽくないです。オスマンサスをテーマとしながらも、少しフルーティーなフローラルに仕上げた、という印象。

3、The Different Companyの「Osmanthe」
トップはそれほどオスマンサスっぽくはないのですが、ミドル以降というかトップがひと段落した後に香りが顕著に現れます。精油の強い香りではなくて、風に乗って漂ってくる、キレイ目なオスマンサスの香り。

4、Ormond Jayneの「Osmanthus」
タイトルはオスマンサスですが、オスマンサスっぽさはとても少ないです。少し瓜系のすっきりさも入ったシアー系のフローラル。

5、Annick Goutalの「Extrait d'Annick」
ライラックやハニーサックルがあるにしても、メインはオスマンサスです。精油に感じる強さはないのですが、とてもキレイにまとまっているオスマンサスだと思います。

6、大分香りの森博物館の「キンモクセイ」
完全な合成香料なのに、とてもキレイにまとまっているオスマンサスです。オスマンサスってば安くてもこんなにキレイな香りが作られるのだと、ハッとする香り。

7、Hermesの「Osmanthe Yunnan」
トップはシトラスが、ミドル以降にはオスマンサスが少しスモーキーさを伴って香ります。もともとの精油が薬っぽいスモーキーさを持っていますからそのままなのですが、精油と比較するとやはりとてもキレイにまとまっています。シトラスとアプリコットはやっぱりオスマンサスと良く合うんですね。

8、Ayala Moriel Parfumsの「Kinmokusei」
キレイなオスマンサスではなくて、精油に香るワイルドな系統。精油をきちんと使用しているとこのようにワイルドで少しレザーっぽい香りになっていんですよね。

9、Paco rabanneの「Ultraviolet」
調香の中にオスマンサスがあるということで、少しフルーティーさを持ったオスマンサスが香ります。ただ、やはりメインではないので調香の一部、ですから、基本的にはフルーティーフローラルとして可愛らしくまとめられた香りです。

10、Parfumerie Generaleの「Un Crime Exotique」
こちらもメインではなくてオスマンサスを使用した香りと言う感じです。基本的にはほんのり甘いシナモンティーの香りです。その中に少しだけ香るフルーティーさがオスマンサスなんだろうなぁ。

11、Parfume d'Empireの「Osmanthus Interdite」
精油っぽいオスマンサスにレザーが絡み合うユニセックスな香り。トップノートはやはりシトラスが聞いていてフルーティーになっています。

12、武蔵野ワークス「金木犀」
うーん、フルーティーなオスマンサスなのですが、あまり生花っぽくないです。精油っぽさもないですし、生花っぽいかと聞かれると微妙ですね。ミドル以降にオスマンサスっぽさは出てきますが、今度はキレイな香りではなくて「欠片」になってしまっています。精油っぽくもなく、生花っぽくもない微妙な香り。(スクールの生徒さんが作った感じ)

13、香りの16区「金木犀」
もう作られていないのかもしれませんが、熊本のワークショップからの香水です。 こちらも典型的なトイレタリーのオスマンサスなのですが、香り自体はとてもフルーティーでそこそこ生花に近いです。

14、パームツリーの「フルールドキンモクセイ」
精油の香りです。持続はとても短いですが、きちんと精油を使用していたことがわかる香りになっています。だから早々と廃番になってしまったんでしょうね。高価ですからあの価格では販売し続けるのが難しかったのだと察します。美化していない精油の香り。

15、Serge Lutensの「Nuit de Cellophane」
香りの核にオスマンサスがありつつも、全体的にはメインとは言えずにフルーティーフローラルな化粧品っぽい香りとなっています。純粋に金木犀を楽しむことは難しいです。(ルタンスらしくない香りです)

16、Ireneの「桂花香水」
中国のコスメメーカーのカジュアルフレグランスで、タイトルは直球ながら香りはシトラスフルーツとアプリコット風な香りがフローラルと混じるというもの。うーん、金木犀ではないです。

17、Balletの「金芭蕾」
日本円で65円程度のお土産品なのですが、シトラスノートが落ち着くときちんと金木犀らしさが顔を出してきます。金木犀の軽やかなコロンという雰囲気で、精油っぽくもなく使いやすくて良い香り。

18、Acqua di Stresaの「Acqua di Stresa」
精油のキンモクセイそのものの渋さ、レザーノートは強くなく、シトラスフルーツに囲まれて爽やかで使い安いキンモクセイになっています。北イタリアのストレーザはキンモクセイと椿の花が街のシンボルフラワーのために、こうした香りが作られました。(Profumeria Nicchiaにて発売中)

19、Acqua di Stresaの「Acqua di Stresa fresh touch」
18番の香りをよりフレッシュに楽しめために、と作られた香りなのでキンモクセイっぽさを楽しむのであれば18番の方が良さそうです。あまりに生々しいキンモクセイは好まない方が多いので、少しニュアンスだけ感じたい、楽しみたいという方には良いのかもしれません。本当にアクセント程度のキンモクセイが香ります。(Profumeria Nicchiaにて発売中)

20、Reger & Galletの「Fleur d'Osmanthus」
オレンジたっぷりのボディスプラッシュのミドルノートに少しキンモクセイを感じられるかな?という香り。ボディスプラッシュにしては持続が良いものの、生花の香りの良さはほとんど感じられないので要注意。キンモクセイはあまり感じられないけれど、主成分のIonone βは感じられます。

21、Sharini Parfumes Naturelsの「Jardin d'Osmanthus」
2010年秋の限定品。価格は高価でしたが、本物を嘘偽りなく使用した豪華な香り。100%天然香料を使用し、綺麗に綺麗にまとめたのがこの香りで、アブソリュートの持っているレザー感というか渋みは比較的少ないためにさっぱりと使える本物の香り。

22、YS Uzac の「Lale」
オスマンサスアブソリュートを本気で使用して且つ、とても使い安いフルーティーフローラルにまとめた商品。Shariniと比較するとこちらの方がアプリコットが強く出ていて可愛らしいフルーティーフローラルになっています。キンモクセイの天然香料は風に乗って流れてくる生花の香りとは違いますので、これくらいフルーティーにした方が生花っぽさは感じられると思います。

23、Oliver & Co. の「Vetiverus 11-11-11」
上記1番にあるLa via del Profumoのオスマンサスを使用したような、そのままのワイルドなキンモクセイが広がります。本気で良質なオスマンサスアブソリュートを使用したこの香水は2011年11月11日に限定11個の発売だったのですが、再販を検討しているそうですから買い逃した皆さまはオフィシャルサイトを要チェックです。これぞ、本物を使用した本物の香りなのです。


ワイルドなオスマンサス(精油っぽいもの)
La via del Profumoの「Osmanthus」
■精油ならではのワイルドさが満開です。このアブソリュートを使用したFrutti Paradisiがとてもステキです。
パームツリーの「フルールドキンモクセイ」
■精油の香りを少し柔らかく香る程度に希釈したもの。コロンくらいで、左のものよりライト。
Ayala Moriel Parfumsの「Kinmokusei」
■精油の強い香りにレザーが加わった渋めの香りで香りはあまり楽しくないです。
オフ会参加者のアンケート結果
1、La via del Profumoの「Osmanthus」
2、Annick Goutalの「Extrait d'Annick」
3、Ayala Moriel Parfumsの「Kinmokusei」
4、パームツリーの「フルールドキンモクセイ」

キレイなオスマンサス
Annick Goutalの「Extrait d'Annick」
■精油のワイルドさをとてもキレイにまとめているオスマンサス。
The Different Companyの「Osmanthe」
■香り自体の組み合わせがとてもキレイだと思います。良さが響きあっている感じ。
Balletの「金芭蕾」
■Yves Rocheのように安くても楽しい製品があるぞ、と思わせてくれる香り。
Acqua di Stresaの「Acqua di Stresa」
■フレッシュでフルーティーで使いやすくまとめました、という雰囲気のカジュアルなキンモクセイ。
YS Uzac の「Lale」
■アプリコットを生かしたフルーティーフローラルなキンモクセイ。
Sharini Parfumes Naturelsの「Jardin d'Osmanthus」
■質、香り共に本物なのですが、残念ながら2010年の限定品。

あまり感じないもの
Keiko Mecheriの「Osmanthus」
■フルーティーフローラルとしてはキレイな香りなのですが、オスマンサスを期待すると少し違うかなー、と。
Ormond Jayneの「Osmanthus」
■こちらもオスマンサスっぽさを期待すると・・・。
Parfumerie Generaleの「Un Crime Exotique」
■これは調香に使われている、というだけですね。
オフ会参加者のアンケート結果
1、Paco rabanneの「Ultraviolet」
2、Parfumerie Generaleの「Un Crime Exotique」
3、Ormond Jayneの「Osmanthus」
4、Keiko Mecheriの「Osmanthus」
5、Ayala Moriel Parfumsの「Kinmokusei」

昔懐かしのトイレタリー系
大分香りの森博物館の「キンモクセイ
■精油っぽさは全くないのですが、昔懐かしいオスマンサスです。
香りの16区「金木犀」
■トイレタリー系というにはとてもキレイな香りだと思います。
武蔵野ワークス「金木犀」
■生花のクセを全くなくしてしまって、使いやすくまとめた香り。完全芳香剤系。
オフ会参加者のアンケート結果
1、武蔵野ワークス「金木犀」 (刺々しい、フルーティー過ぎる、分かりやすい香り、肌に使いたいとは思わない)
2、香りの16区「金木犀」  (合成っぽい、甘くて美味しそう、フルーツが強い、優しい香り)
3、大分香りの森博物館の「キンモクセイ (生花っぽい)

総括
皆さん、精油をしっかりと香っていただいたおかげで、精油っぽいものとそうでないもの、精油のクセを生かしたもの、殺してしまったもの等見分けるこど出来たかと思います。精油のクセを生かすにはレザー、アイリス、パチョリなどアーシーなもの、パウダリーなものなどを組みあわせると素敵なようですよね。後はお茶系にしてしまうというのもひとつだと思います。精油は足し算は出来ても引き算がなかなか出来ませんから、クセは生かすしかないのです。また、クセが強いこともあって精油のどっしりとした香りが強く出ているものは一般的に好まれにくいということもアンケートによく現れていました。昔懐かしいトイレタリー系の香りのトップ3は全て日本製というのが面白いですよね。きっと調香された方もその世代なのだと推測されます。ただし、トイレタリー系は肌に付けたいとは思わないようですよ。好きな香りのランキングではかなり低いランクで同率となっていましたから。また、懐かしいと思う3種はフルーティーさが強く出ているのも特徴です。

好きな香り ■オフ会参加者のアンケート結果
1、Hermesの「Osmanthe Yunnan」
2、Parfume d'Empireの「Osmanthus Interdite」
3、The Different Companyの「Osmanthe」
4、Annick Goutalの「Extrait d'Annick」
5、Parfumerie Generaleの「Un Crime Exotique」

日本人に好まれるのはジャンクロードエレナの作り出すような、すっきりとしたフローラルなのですね。生々しい精油の香りであったり、トイレタリーのようなフルーティー過ぎるキンモクセイはあまり人気がないようです。生花に近いとか、精油っぽさが強く出ているものは、質が良くとも好まれるとは限らないという良い例だと思います。僕はこの中だとキンモクセイを楽しむのであればアニック、香水として調和が良いのはパルファムドエンパイアかなぁ、という感じです。(26/11/2007)

個人的には簡単な香料で再現が出来てしまうので、個人で調合したものが1番納得の出来る金木犀となりました。調合香料として調香体験セミナーで使用している香料なのですが、簡単にしすぎると武蔵野ワークスのようになります。芳香剤を彷彿させるシンプルレシピでは香水としての面白みにかけるため、やはり少量でも精油を加えていくことが再現のコツなのかもしれませんね。この調合香料を使用して香水を組み立てると金木犀の香水が簡単に作れます。2009年9月の調香体験セミナーは、この調合香料を手作りしていく、という内容です。(02/08/2009)

 

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