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Sampleレヴュー

 

 

■Peninsula of Love (2022年)

4月の終わりにクリミア半島を旅した思い出の香り。ペニンシュラはクリミアのことだったんですね。黒海から運ばれる潮風と火山から生まれた特殊な黒土。その黒土からエッセンスを得て組み込んでいるのだそう。

ソルト、エアー、パインニードル、ヘイ、アルテミジア、イモーテル、ピスタチオ、ローズマリー、ジュニパーベリー、シーウィード、ブラッククレイ、アンバー

とても表現しづらい特有の香りです。エアリーではあるものの、オゾン系ではなくアロマティックなトーンが強く、かといってピネン系がスパークするわけでもなく、ほの甘いムスクに包まれて広がっていきます。このムスクは熱したアイロンの匂いを思わせる近年個性的な香りに使われるようになった香料が少し含まれているように感じられるのですが、合成香料が強く感じられることなく、天然香料を上手く補佐していて、不思議なスイートアロマティックムスクとなっています。戦火にまみれたクリミア半島が最新作としてリリースされたのは、いつかウクライナの地として戻ってくることを彼女が願っているから。(23/12/2022)


■Amber Necklace (2019年)

琥珀の世界的な産地は黒海沿岸にあります。母の琥珀のネックレスを服の生地にこすりつけると暖かな香りがふわりと香ったのだそう。偽造の琥珀は香りませんが、本物の樹脂の琥珀は香るんですね。その微かな香りを古代の木々の涙の化石とし、ストーリーとして香りにしたもの。琥珀はウクライナの宝だそう。

アップル、アンバー、ウッディノート、レジン、ムスク

天然香料をメインにアンバーノートを作ってみたら、このような形になりそう。アップルをヒントに作られたアンバーは、ラブダナムやベンゾインにカストリウムの少しアニマリックなレザートーンが感じられたり、一筋縄ではいかないオリエンタル色の強い、とても力強いタイプなのですが、良くあるシトラスアンバーではなく、アップルに置き換えた点がとてもユニークで、ハッとさせられます。固定観念は外して自由な発想で楽しまないと、ですよね。(23/12/2022)


■Molfar Forest (2019年)

モルファーとはカルパティア地方の魔術師のことだそうで、昔から森の奥に住み、神秘的な事象を引き起こし、雨や雷を呼び起こし、動物と会話する存在。どこまでが伝承でどこまでが事実なのか、誰もわからない存在。何でも知っていて、何でも出来てしまうため、不用意に呪文を使わず、生き物たちを守っている。

マッシュルーム、パインニードル、エアー、モイスチャー、ウッディ、レジン、アーシーノート、モス、ムスク

とても天然香料の良さが感じられるアロマティックシプレです。パインニードルのすっきりとしたアロマティックノートがモスとウッディムスクが支えるベースに乗って広がるのですが、そう言えばアロマティックなシプレって、今ではそう多くはないのではないでしょうか。天然香料の良さを感じられますが、合成香料なくしては完成しない、洗練されたシプレの形となり、最後はアンバーグリスが肌に残ります。森の香りを作りましょう、となったら多くの方はウッディノートを強くすると思うのですが、森の中では樹木を切らない限りウッディノートは香らず、香るのは森の下草の湿気た香りと、樹木が呼吸することで葉から放たれるフィトンチッドの香りです。Molfar Forestはシプレにすることで森を表現したもので、ハンモックに揺られながら香ったら、森で過ごしているように感じられるかもしれません。あれ? 近くに小川がある? なんて思わせるアクセントも想像を掻き立ててくれます。(22/12/2022)


■Spring over the Dnipro (2019年)

ドニプロ山地の春はいつもライラックで幕開ける。ライラックの森には光が注ぎ、色彩が鮮やかとなり、小動物たちが跳ね回る。

ライラック、ウッディノート、アンバー、ムスク

ハニー、ヘリオトロープ、ローズ、アニスなどでまとめられたトータルとしてライラックアコードとなっています。ライラックの香りに馴染みがある方であれば、そうそうこれだよねという香りで、春の喜びを形にした香り。日本でライラックと言えば北海道が有名ですが、大分でも咲きます。ただ、夏の暑さで弱ってしまうため、少し日陰で涼しいところに植えておかないと難しいようですが。4月も半ばになるとライラックの切り花が出回るのですが、枝を割り、外皮を剥いて湯上げを行うと香りを楽しむことが出来ます。是非、生花と合わせて楽しんでいただきたいシングルノートのライラックです。(22/12/2022)


■Tales of Grandfather Taras (2018年)

夏の終わりの夜、積み上げられた干し草の横でパイプタバコを燻らせながら、目を細めて子どもたちにおとぎ話をする祖父。何がフィクションで何がノンフィクションだかわからないけれど、伝承されていく話の中には古代の神々の知恵が詰まっている。

ミモザ、グリーンコニャック、アルテミジア、スパイス、ヘイ、タバコ、イモーテル、ダスト、レジン、ビターチョコレート、レザー、ムスク、アンバー

これはとてもアルテミジアの効いたアロマティックな香りで始まります、タジェットなどの特有なハーブの煮汁風の香りにスパイスが重なる様子は、どこなく魔女の薬草スープを思わせるのですが、アロマティックなトーンが薄れていくと甘く苦いタバコやイモーテルがレザーと共に広がり、更に世界観は魔女っぽく感じられるようになります。ただ、それらを力づくで軽やかにまとめているのが強いアルテミジアの香りで、ムスクに溶けたタバコアブソリュートとイモーテルが甘苦く肌に残ります。(21/12/2022)


■Partisan Love (2017年)

今必要なのはこの香りなのではないでしょうか。正規軍と戦うゲリラや、党の支持者や党員を意味するパルチザン。ウクライナ人にとっての人生を凝縮したような香りで、夏のハーブ、祖母のブラックカラントティー、熟したリンゴ、地下室の古い木の壁、秋の森のきのこなど、ウクライナ人にとって愛するものを詰め込んだ香り。ビバーナムとはスノーボールと呼ばれる庭木で、ウクライナでは良く見られるシンボル的なものだそう。またセリ科のハーブであるラベッジは恋のおまじないや儀式に欠かせないものだそう。

グリーンリーフ、ブラックカラント、アルテミジア、ビバーナム、アップル、タジェット、イモーテル、ラベッジ、ヘイ、アーシーノート、モス、ウッディノート、スモーク、レザー

とてもリッチなブラックカラントアブソリュートがトップで広がり、驚かされました。これは本物です。そこから可愛らしく変わるのではなく、スモーキーなタールがアロマティックなエッセンスたちを包み込み、地下室や穀物庫のような軒下の香りへと変化していきます。Molfar Forestは深呼吸したくなる清々しさをも感じるシプレでしたが、こちらはもっと地表近くの匂いというか、一番イメージしやすいのは野焼きの後に植物たちが目覚める光景だと思います。アップルの香りが時折ふわっと鼻腔に届くところがユニークです。普通はスモーキーノートにアップルを合わせないですからね。テーマに沿ったとてもユニークな香りです。(21/12/2022)


■Island of the Dead Towns (2020年)

ギリシアにキオス(ヒオス)島をテーマとした香り。トルコのイズミールと目と鼻の先にあり、ほとんどトルコなのではないかという場所にある島なのですが、この島には残虐な歴史がありました。ホメロスが生まれ、最古の赤ワインが作られたという古代文明が栄えた島は、ギリシア独立戦争時トルコ人に子どもも含めた島民たちが虐殺され、200年の間無人島となってしまっていたのだそう。償うことのできない罪の記憶が残る島の風景を香りとしたもの。ドラクロワが描いた「キオス島の虐殺」というルーブル美術館所蔵の絵画も有名です。

ソルト、エアー、スモーク、パインニードル、ヘイ、オリーヴ、マスティック、アンバー、レジン、ムスク

200年間無人島になっていた島は人々が住むようになり、観光もできるようになったわけですが、廃墟となった地区もあります。美しい自然と廃墟という陰と陽の中で陰の方に焦点を当てた香りに感じられます。スモーキーなタールに潮風のマリンノートとパインニードルの爽やかさ。スモーキーなマリンという一見不釣り合いな組み合わせがアロマティックノートを仲介にオリエンタルにまとめられたという香り。もう少し美しい部分も欲しかったかな、と思ってしまいました。マスティックは強いインパクトのある香りではありませんが、そこももう少し主張しても良かったのかもしれません。いえ、価格が高くなってしまいますが。(20/12/2022)


■Black Flower (2017年)

古代アステカの人々が黒い花と呼んだもの、それはバニラです。バニラの魅力を天然香料のバニラアブソリュートと共に天然、合成の4種のバニラを用いて表現したもの。

タバコ、バニラ、レザー、ベンゾイン、ペルーバルサム、カストリウム

最初、チョコレートのように感じられたのですが、バニラのアブソリュートには樹脂っぽい部分や濃厚なリキュールっぽい部分がありますから、さもありなんといったところ。カストリウムとレザーが微かなアクセントとなり、グルマンにはならないオリエンタルバニラとなっています。もう少しタバコが強かったらメンズっぽく感じられていたかもしれませんが、渋さのないクールなオリエンタルを経てクマリンの強いオリエンタルとなって落ち着きます。(20/12/2022)


■Keiko's Tears (2015年)

モクレンの華にまつわる伝説の中で、自分の血で紙の花を蘇らせたというものが日本にあり、その登場人物がケイコなのだそう。愛のために最後の一滴を捧げたことからモクレンが愛のシンボルとなったと。そのような伝説はどう探しても見つからなかったのですが、星の王子様のバラをモクレンに、小鳥を少女に置き換えた内容ですよね。

ペティグレン、マグノリア、サンダルウッド、ガイヤックウッド、トンカビーン

パッと散った精油感はペティグレンとフローラルノートでした。マグノリアの花の香りではありませんが、ペティグレン調のフローラル、つまりネロリやオレンジブロッサムではないフローラルとなっています。マグノリアには少しラクトニックな部分があり、そのラクトニックな部分がサンダルウッドと良く合うため、サンダルウッドが優しくシトラスフローラルを支え、時間と共にチャンパカっぽいサンダルウッドへとスライドしていきます。(20/12/2022)



■Fetters (2019年)

タブーのカテゴリの香りで、テーマとなったのは複雑な人間関係の中で、捨てることの出来ない絆です。束縛というものは、バランスによっては心地良さを感じるものである反面、依存症を引き起こしたり、暴力的なDVを生み出すものでもあります。

ミント、グリーンリーフ、ベルガモット、ラベンダー、麻、ウッディノート、タバコ、チョコレート

大麻、チョコレートにタバコと言った依存症を引き起こす魅惑的なものをミントとグリーンノートでまとめた香り。とてもアロマティックなミントグリーンにタバコやウッディノートが重なり、アロマティックな精油がアクセントとなって広がるのですが、全体的には精油感が強く、美しいハーモニーというよりもとても混沌としたまとまりで広がっていきます。それはそれでテーマに合っているのかもしれませんよね。(19/12/2022)


■Spider (2019年)

死をテーマとした香り。難しいテーマを表現するために利用したのはラテンアメリカの祝日である死者の日(el dia de los muertos)でした。メキシコでの様子が一番有名なのですが、日本で言うお盆のようなもので、先住民たちが死者に捧げる祭礼の伝統行事です。

土、水分、コパル、マリーゴールド、レザー、スモーク、ムスク

水分と言われるとそうなのかもしれないのですが、リアルな草の汁に感じられる青々としたエッセンスに、バジルペーストが重なり、更にレザーやムスクが広がっていくのです。これもやはり全体としては混沌とした匂いで、厚塗りで何を描いたのかわからない抽象的な油絵のよう。抜いたばかりの雑草のような青さ(Isocyclocitral)が抜けるとスモーキーなレザームスクが肌に残ります。死して灰が残るということなのでしょうか。(19/12/2022)

 

 

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