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Sampleレヴュー

 

■Maracaibo (2023年)

8つ目の香りはChris Mauriceが担当、キャップはイエローに。マラカイボ湖をタイトルとした香りで、今のベネズエラ北部に位置する巨大な湖で、湖底と湖岸に油田が発見されたことで有名になりました。また、カタトゥンボの雷(稲妻)という音のしない雷が発生する地域で、原理が詳しく解明されていないため、将来的には初のユネスコ自然現象に認定される可能性も。1時間に3,600本もの稲妻が観測されたことから、世界で最も稲妻が多い場所としてギネスの認定されています。この現象を、現地のワリインディアンたちは何百万もの蛍のせいだとし、神々への敬意とし、ユパク族とワユ族は高みにある永遠の輝きと定義しています。発雷確率140〜160日/360日ということなので、旅行者たちは高確率で稲妻を見ることが出来ているのではないでしょうか。

トップ:ピニャコラーダ、シナモン
ミドル:ココナッツ、ココナッツミルク、カラメル
ベース:アーシーノート、サンダルウッド、ベチバー、シダーウッド、バニラ、ムスク

トロピカルなココナッツが弾けると思ったら、意外や意外、でもテーマにぴったりなジェオスミンが弾けました。それは雨上がりのカビっぽい匂い。トップノートで弾けて消えましたが、雷鳴轟く雰囲気は、トロピカルな香りに湿気を足したことで俄然リアルに感じられ、土っぽい残り香へとけん引されていきます。トロピカルなトーンが強すぎるわけではなく、ウッディムスクも穏やかで、オリエンタル過ぎないところも好感触。好き嫌いは分かれる香りなのかもしれませんが、絵画を見るように楽しめるというか、雷鳴の動画ならいくらでも見てられるという方におススメ。(23/08/2024)


■Kintu (2022年)

7つ目の香りのタイトルはインカの人々の言葉、ケチュア語で神々への捧げもののことだそう。Kintuの儀式は、神々の世界、人間の世界、死者の世界というアンデスの宇宙観を象徴する3枚のコカの葉を使って行われ、花の形に並べられた葉が山の精霊に捧げられる。アンデスの他人事は今でもKintuの儀式で神のご加護、守護、豊作など祈りを捧げています。

トップ:ブラックペッパー、ガルバナム、コパイババルサム
ミドル:ローズ、ガイヤックウッド、パチョリ、トルーバルサム、ぺルーバルサム
ベース:ウード、アンバー、ムスク、アニマルノート、サンダルウッド

ガルバナムが強いとオリエンタルなグリーンになるので、そこを確認してみるとガルバナムはほとんどわからないほどで、全体としては少しスパイシーなオリエンタルでした。比重はベースノートに置かれ、重低音のようにじわりじわりと広がる香りですが、アンバーウッディノートやムスクなど、香りにあまり関与しない軽やかなトーンをたっぷり使用することで重くないオリエンタルに仕立てた印象で、ローズは感じられるものの、パチョリローズ、アンバーローズというほどの強さはなく、ほとんど感じられない方の方が多いのではないかというバランス。また、アニマルノートも強くはないため、安心して使えるオリエンタルです。この香りならばチョコレートではなくカカオがピッタリ。(22/08/2024)

 

 

■Delta (2021年)

デルタとは三角州のことですが、オリノコ川の三角州のことだそう。このブランドの名前にもなったいるNueva Granadaと呼ばれた地域は、スペイン人征服者たちが切り開いた領土であり、そこから遠征隊によってスペインに運ばれたのがココアやシナモン、バニラだったのだとか。でも、そうした香りは使われていないんですね。

トップ:ペティグレン、ベルガモット、アーシーノート
ミドル:アンジェリカ、オークモス、ヴァイオレットリーフ、シダーウッド
ベース:ラブダナム、アンバー、ベチバー、オポポナックス、カシミア

これはまたユニークなところを攻めてきた香りです。シトラスノートと共に少し漁港っぽくも感じられる、海藻にも似たヴァイオレットリーフアブソリュートが広がるからです。ヴァイオレットリーフの香料とアブソリュートは香りが全く違い、アブソリュートを使用しているとそれだけですぐわかります。これはその良くわかるクセの部分を土っぽい雰囲気と、強すぎないウッディノートでまとめたというもので、イメージはそのまま「未開の地」。マリンノートを使用せず、オークモスとヴァイオレットリーフアブソリュートを用いて川のニュアンスを出しているんですね。6種の中では一番ムスクが強く残る香りで、好きな方にはたまらない、クセになるタイプだと思います。(05/10/2022)


■Bahia (2021年)

Buena Venturaという港湾都市をテーマとした香り。ヨーロッパと日本からの物資がそこに到着し、そこからスペインに送られたという中継地点でもあったのだそう。そして、そこにはそうした積荷を狙う海賊がいたことから、荒海を航海した船に積まれていたスパイス、ポマンダー、フルーツや植物などを香りにしたもの。

トップ:ローズ、ピオニー、サフラン、ベルガモット、ピンクグレープフルーツ
ミドル:カシミア、オーキッド、トンカビーン、イランイラン
ベース:ムスク、アンバー、レザー、ミルラ

な、なんだこれは!! と驚いてしまった香り。それは懐かしいクッピーラムネを思い起こさせる少しパウダリーなラムネ感がフルーティーに広がったかと思った瞬間、レザーに切り替わるのです。まさにクッピーラムネなレザー。レザーと言えば海賊のイメージにもつながるかと思いますが、積荷にありそうな感じではないですよね。でも、これはこれでとても楽しいのでアリでしょう。系統としてはシトラスノートがあればGuerlainのHabit Rouge調かな、といったところ。ラムネの部分の持続は長くはなく、仄かなレザーウッディムスクが肌に残ります。(05/10/2022)


■Amaranto (2021年)

コロンビアと言えば誰もがイメージするのがコーヒーでしょう。その焙煎していない豆の色がモチーフに、コーヒー農園を香りにしたようです。それはコロンビアの中心地であるボゴタとメデジンの中間地にあるエネルギーに満ちた土地。コロンビアの小説家Gabriel Garcia Marquezの代表作である「百年の孤独」の登場人物であるAmarantoの名前がタイトルに。

トップ:タイフローズ、フィグ、レザー
ミドル:ベンゾイン、シプリオール、バニラ、オーキッド、サンダルウッド
ベース:アンバー、アミリスウッド、ムスク、ホワイトムスク

フィグが香るのにフィグだと気づかないほど、オリエンタルに包まれて始まります。とてもニッチフレグランス的な香りで、レザーがトップに、ベンゾインやシプリオールがミドルに配されているのは、それだけ全体のトーンが重めだということなのですが、たっぷり使用しても重くならない軽いアンバーウッディノートのバランスを多くすることで重すぎない香りとなっています。香りはコーヒーではないし、コーヒー農園をイメージさせるようなものではないけれど、土臭いシプリオールがオリエンタルノートをまとめ、フィグがアクセントとなってとてもユニークに香ります。でも、典型的なアンバーグリスノートがとても強いので、苦手な方は要注意です。(04/10/2022)



 


■Selva Negra (2021年)

アマゾン川源流をイメージした香り。そこには蛇男と少女の悲哀の伝説があるそう。映画を学んだ彼らしく、イメージを映画で伝えているのですが、Fitzcarraldoという映画を思い起こさせるそう。この映画の内容はとても深くて書くと大変なのですが、妖しいまでのジャングルが人間の運命を支配していると。タイトルは黒い森(ジャングル)。

トップ:サンバックジャスミン、マンダリン
ミドル:カシミア、オーキッド、プレシャスウッド
ベース:アンバー、ホワイトムスク

強いて言えば、6つの中では一番フローラルノートを感じる香りです。それでもフロリエンタルなまとまりで、決して可愛らしくはありません。カシュメランというウッディムスクの香料が軸となっていて、そこにオーキッドやカーネーション、ジャスミンなどに使用される軽やかなフローラルノートがたっぷりと重なっているのです。コロンピアの国花はオーキッドですから、もっともっとオーキッドをいかした作りでも良かったのではないかと思うのですが、ブラックオーキッドのようなイメージであればこうした香りなのかもしれません。後半になってジャスミンがしっかりと感じられるようになり、フローラルムスクが際立つようになります。(04/10/2022)


■Agua de Indias (2021年)

Cartagenaというコロンビアの海側にある町に沈む夕陽をイメージした香り。ユネスコの世界遺産に指定されているとても美しいバロック様式の街並みで、コロンビアの小説家Gabriel Garcia Marquezが大絶賛したそう。

トップ:トマトリーフ、バニラ、レザー、ベンゾイン、スパイス
ミドル:ラブダナム、クラリセージ、ガルバナム、アイリス
ベース:バニラ、サンダルウッド、トルーバルサム、ミルラ、ムスク

ガルバナムとアイリスがオリエンタルに広がるという、モダンクラシカルなスタイルで、スパイスがガルバナムのグリーンと共にスパークして始まります。ガルバナムの量は多くはなく、ミドルではなくトップで薄れ、そこからはオリエンタルがメインとなっていくのですが、このブランドはとにかくオリエンタルが多く、全体のトーンが重めです。でも、濃度的にはEdTに感じられるほど軽いのです。こちらの香りも安心してたっぷりスプレー出来るモダンクラシカルなオリエンタルで、残り香のオリエンタルノートの中ではミルラが効いています。(03/10/2022)


■El Dorado (2021年)

エルドラドとは神話に登場する楽園のことですが、最初にコロンビアをNueva Granadaを発見した遠征隊たちは、その場所をエルドラドだと伝えたそう。それは、金が多くあったから。コロンビアにはDoradoというインディオの伝説が残っており、それがまるで徳川埋蔵金のように人々の興味を惹いたのでした。今も見つからない黄金郷をイメージした香り。

トップ:ベルガモット、レモン、ペッパー、ジュニパー、ヘンプ
ミドル:フランキンセンス、パイン、アイリス
ベース:アンバー、バニラ、サンダルウッド

どうして黄金郷がフランキンセンスをメインに組まれたのかわからないのですが、良くあるパターンとしてはシトラスノート、オレンジブロッサムやハニーなどでゴールドを思い起こさせます。でも、この香りにはその部分がありません。ただただフランキンセンスがアロマティックに弾け、ラクトニックなサンダルウッドに包まれて香るというもの。特にラストノートはサンダルウッド一色で、フランキンセンスとのコンビネーションは寺院のようです。6種の中では一番穏やかさを感じる香りですね。(03/10/2022)

 

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