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Sampleレヴュー

■Wavechild (2024年)

Jerome Di Marinoの調香で初のマリンフレグランスに。LAから1時間ほど南下したカリフォルニアのHuntington Beachで波を楽しむサーファーたち。サーフ文化にはサーフミュージックがあるわけで、音楽とは切っても切れない関係。もちろんボトルはブルーとなりました。

 

 

トップ:オレンジ、マンダリン、レモン
ミドル:スイカ、ココナッツ
ベース:アンバーウッディ、ココア、アンバーグリス

サーフとなれば外せないのがマリンノート、そしてサンオイルのココナッツでしょう。マリンココナッツをアクアティックな瓜系ノートでまとめたマリン過ぎないトロピカルな香り。ムエットではあぁ、マリンココナッツね。と、とても分かりやすい、誰もがイメージする香りだったのですが、トロピカルカクテルのようなシトラスとココナッツが弾けた後、普通は持続をするココナッツが聞き分け良く引き潮のように流れていき、アクアティックというよりも塩っぽいウッディムスクへと引き継がれていきます。ムスクが強くはないのはココナッツの残り香がムスクっぽく香っているから、ココアもアンバーグリスも強くはなく、アンバーウッディノートも主張するほどではないため、近年嫌悪されがちなアンバーグリス強めなラストにはなりません。Huntington Beachがアメリカだからなのか、とてもアメリカ人が好むシンプルなテイストで、シャワーで海水を洗い流す前の肌の香りのよう。(26/03/2024)


■Sonic Flower (2023年)

バンドのフロントマンである女性を、音の花と名付けた香り。LA生まれ、LA育ちというKate Clover。彼女はExSageというバンドで活動しながら、ソロでも活躍している次世代のパンクロックスタイル。彼女を広告塔に起用しての香りとなりました。調香は引き続きJerome Epinetteです。

 

 

トップ:ピンクペッパー、キャロットシード
ミドル:アイリス、ジャスミン
ベース:アンブロキサン、カシミアウッド、スキンムスク

フェミニンだけどどこかアーシーなアイリスムスクを目指したようです。アイリスムスクそのものは清潔感のある洗い立ての理念を思い起こさせる香り。そこにスズランを合わせると洗剤を思わせる香りになるのですが、ジャスミンにすることでフェミニンなサイドを表現。そこに女性らしい素肌感としてたっぷりのムスクを。でも、土っぽいパウダリーなキャロットシードをカシュメランと共に使用してあるのです。トップでこそピンクペッパーが少しフルーティーに弾けますが、基本的にはキャロットシードをアクセントとしたアイリスムスクが軸であり、ムエットよりも肌の方が香りたちの確認がしやすいタイプです。近年多い強めのアンブロキサンではなく、ムスクの中に溶け込んでいる、密やかなアクセントに留まっているため、苦手な方も気にしなくて良いバランスで、潔いほどシンプルな香りです。(26/05/2023)


■Purple Mantra (2022年)

1968年ビートルズはヨギに会うためにインドを訪れ、長い瞑想を体験してアルバムを作ったということにインスパイアされたもの。調香は引き続きSerge de Oliveiraです。

 

 

トップ:ラベンダー、フリージア、ピンクペッパー
ミドル:アイリス、マジョラム、フローラルノート、クラリセージ
ベース:フランキンセンス、ミルラ、アンブロキサン、ムスク

瞑想というキーワードから導き出されたのは、おそらくラベンダーとフランキンセンスでしょう。そこにシトラスノートの代わりにシトラスフローラルウッディなフリージアを、ペッパリーなフリージアのアクセントにピンクペッパーを配置したのでしょう。全体的にはフローラルではないものの、フランキンセンスが程よく効いたスイートオリエンタルへと変化していきます。マジョラムはタイムのような香りがするのですが、そこは強くはなくアロマティックノートとしてラベンダーを補佐するアクセント。でもラベンダー自体が強くはないため、メンズっぽくは香っていないのです。フランキンセンスの香水はたくさんありますが、他社製品と比べてみると、少し個性に欠けて感じられるかもしれません。特筆すべき特徴がないのです。ムエットではフランキンセンスが主体にはあまり感じられなかったのですが、肌では顕著に出てきますので、お試しの際は是非肌に乗せてご確認下さい。(08/07/2022)


■Ten Fifteen (2018年)

ブランド名がそのままタイトルに。このホテルは、様々なロックミュージシャンたちが宿泊し、逸話が残っているLAのライオット・ハウス(Continental Hyatt Hotel)の1015号室なのだそう。ロックの聖地となっているホテルで、1972年にローリングストーンズのキース・リチャーズとザ・フーのキースムーンが部屋から駐車場にテレビを投げたのが1015室でした。当時はそういうことが、無茶苦茶するのがロックであり、カッコよかったんですよね。調香はJerome Epinetteが担当です。下記もちょっとギラギラとしたイメージで撮影してみました。

 

 

トップ:サフラン、マンダリン
ミドル:アイリス、ヴァイオレット
ベース:サンダルウッド、パピルス、ガイヤックウッド

サンダルウッドアイリスなのかと思っていたら、メンズっぽい要素はあまりないのに、メンズっぽく感じられるとても穏やかな香りでした。通常のトップノートに当たる部分がとても少なく、弾けるようなスタートがありません。危険な香りもせず、ロックのイメージもなく、香ってくるのはモノクロのフィルムをゆっくりと見ているようなイメージの香りでした。サフランとアイリスがサンダルウッドを柔らかく包むのですが、ヴァイオレットが少しフルーティーなニュアンスで香り、全体をまろやかにしています。トゲトゲしたロック調ではなく、賑やかなジャズでもなく、渋めなブルース調がイメージされた香りでした。(09/07/2019)


■Hollyrose (2017年)

70年代、サンセット大通りを歩くティーンたちのグループというイメージで作られたブラックレザーローズで、Anita Pallenberg、Bebe Buell、Pamela Des Barresなどがハリウッドでミューズとして活躍していた時代へのオマージュ。あの頃の人たちは、ちょっと変わったファッションを着ることがステイタスで、パンクでありロックだった、と。調香はJerome Epinetteです。

トップ:ブラックペッパー、ブラックカラント
ミドル:ローズ、オーキッド
ベース:レザー、パチョリ

ローズが強いのか、レザーが強いのかでフェミニンになったり、マスキュリンになったする調香ですが、トップの時点ですでにスモーキーなレザーが香り、レザーローズで始まります。スモーキーな部分はトップで火薬のように消え、ローズがどんどんくすんだ色合いになっていく、つまりはゆっくりと萎れて枯れていくような印象の香りとなって香るのですが、トップは少しメンズっぽいかな、と感じたものの、それ以降はとてもユニセックスなまとまりで、このブランドの中では一番女性が使いやすい香りなのかもしれません。とてもカッコいいレザーローズですよ。価格も他のものよりも10ユーロ高い130ユーロとなっています。(09/07/2019)

2021年に発売となったSweet Leafの方が、全ての方が使いやすいユニセックスとなりました。(21/05/2021)


■Yesterday (2017年)

この香りは、ビートルズがホテルのシャワールームで歌っている画像を見て、その空間がどんな香りなんだろう、と想像したことから始まっています。だから、Yesterdayであり、メンズライクな香りなんですね。調香はAmelie Bourgeoisが担当です。

 

 

トップ:ベルガモット、カルヴィ、スイートオレンジ、バジル、タイム、カルダモン
ミドル:ラベンダー、ルバーブ、ダヴァナ
ベース:ベチバー、サンダルウッド、ムスク、アンバーウッディ、トンカビーン

それぞれにYeaterdayにつながるエッセンスで、カルダモンはバスルームのシャワースチーム、ベルガモットは若いころの気持ち、ラベンダーは精悍な印象を、笑顔をアップルで、懐かしさをダヴァナで、腕相撲した思い出をベチバーで表現。最後はアンブロキサンでまとめた、と。ラベンダーとゼラニウムで、少しメンズに傾けた香りとなりました。

昔のメンズのシェービングソープはラベンダーを効かせたフゼアが多かったのではないでしょうか。ラベンダーを軸としたフゼア調でありながら、それでもどこか清潔感を感じるソープ調のムスクに包まれ、とても柔らかく仄かな香りとしてまとめられています。ですから、ガッツリとしたダンディなメンズ香ではなく、女性らしい香りが苦手な女性であればこうした香りがフィットするかもしれません。ムエットではカルダモンも印象的でしたが、肌ではラベンダーが薄っすらと香るムスクとなっていて、仄かなアニス調の甘さがアロマティックに香り続けます。シャワールームの弾ける飛沫というよりも、シャワー後に肌に残った香り、という印象でクラシカルではなく新しいフゼアの形と言えるでしょう。(30/03/2017)




 

■Blomma Cult (2015年)

1960、70年代の性の解放とヒッピー文化をテーマとした香り。タイトルのBlommaはスウェーデン語で花と咲くを意味する言葉で、カルト文化の開花を表しているのでしょう。精神と肉体が解放されたら・・・彼はそれを少し挑発的なむき出しの欲望として表現したようです。調香はAmelie BourgeoisとAnne-Sophie Behaghelが担当。

 

 

トップ:ベルガモット、ライラック
ミドル:カシュメラン、パチョリ、ヴァイオレット
ベース:シナモン、バニラ、ホワイトムスク

カシュメランを軸にフローラルにした、ということなのですが、フローラルノートの中でもあまりフローラル感の高くないヴァイオレットを軸にしているため、華やかで豪華、フレッシュで明るいものではなく、セクシーでダークなトーンに歪んだオリエンタルウッディとなっています。確かにヴァイオレットは香りますが、それを全てカシュメランが包み込み、アクセントとしてパチョリとシナモンが香るのです。シナモンがとても効果的に使用されており、スパイシーでパウダリーなニュアンスがパチョリと相性良く混じり、とてもユニークな香りとなっています。パチョリもシナモンもバニラとの相性は抜群ですから、甘さを加えたことで安定感のある香りに感じますね。香り自体はとてもシンプルなのですが、トゲトゲしたようなツンツンと弾けた香りを感じる辺りが、少し挑発的というイメージにつながっているようにも感じたりして。(14/10/2015)


■Electric Woody (2015年)

彼にとって最初の香りの中でも一番彼らしいのはこれではないでしょうか。彼が初めてギターケースを開けた日の思い出。それは90年代初め、12歳の頃父親に買ってもらったギブソンだったそう。香りの記憶は、ウッディだけではなくラッカーやメタリックな香りも交じっていたと。この香りはあの日に生まれたのだと言っています。調香はAnne-Sophie Behaghelが担当です。

 

 

トップ:ナツメグ、レモン、セージ
ミドル:シダーウッド、オークウッド
ベース:アンブロキサン、アイリス、ムスク

香りは案外すっきりとしたスパイシーなアンバーウッディで始まります。シダーウッドというかおが屑系のパウダリーなウッディノートではなく、やはりアンブロキサン(アンバーグリスノート)のようなキリッとした硬質、ミネラルっぽい雰囲気があった方がエレクトリックという雰囲気に通じています。時間と共にスパイスが薄れ、アイリスがおが屑香と重なり、いわばギターケースの中のニュアンスへと変化していきます。柔らかだけどどこが尖っている、そんなアンバーウッディ系の香りを軸としたユニセックスな香り。(13/10/2015)

 

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