ギリシア神話の中に登場する、アポロンに愛された美少年Kyparissos(キュパリッソス)が、自身が可愛がっていた黄金の角をもった牡鹿を、誤って投げやりで殺してしまったことを悔やみ、悲しみ、神々に永遠に嘆くことを誓ったため、悲しみの象徴として糸杉に姿を変えたという神話が残っています。彼の名前が由来となり、ラテン語のCupressusへと変化した後に、Cypressという名前になったようです。

この樹木自体は地中海地域に広く生育しており、特にイタリアに行くとそこら中に植わっている見つけやすい樹木です。樹形も手入れをすることなくストレートな形になるため、手入れがしやすいという点でも人気なのでしょう。

精油はリーフ系の香料と同じく多量のピネン系の成分を含んでいますので、すっきりとしたアロマティックな香りが特徴で、実際に葉をつぶした時に香る香りととてもよく似ています。(実際の葉の方がフレッシュな分グリーノートが強くて軽やかです)

比較的入手のしやすい、あまり高くはない香料ですから国内でも入手しやすい精油の代表でもあるのですが、なかなか見かけないアブソリュートも細い流通で市販されています。アブソリュートは精油と全く違った香りとなっていて、アロマティックなレジン系の香りがするのです。似ている系統で言うと、ファーニードルとファーバルサムの違いのような感じでしょうか。サイプレスアブソリュートと言わずに、サイプレスバルサムと言っても良いくらいのドライフルーツ様のレジンノートが香るのです。精油は淡黄色ですが、アブソリュートは濃い緑褐色で、高沸点部分にこの部分が存在するため、水蒸気蒸留では蒸留に時間がかかりすぎてしまうのだとか。精油はトップからミドルで香るのに対し、アブソリュートはミドルからベースにかけて香る重みのある香りです。

(03/07/2015)