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■Pitti Fragranze 16

 

 

春の展示会は4日間あっても見て回れないのに、今年のPittiは2日間あれば十分でした。今まで、アクセサリーのブースも併設されていたのですが、そちらはなくなり、代わりに書籍のコーナーが設けられました。美しいフレグランスの書籍たち。そして花やアートの書籍の紹介。あぁ、欲しいと思って手にとっては見るものの、分厚いハード書籍を持ち帰るのは用意なことではなく、だったら帰国してからアマゾンで買うよ、という気持ちに。

 

 

14年間、1年に1つずつ新作をリリースしてきたOlivier Durbanoからは、もちろん新作が公開されました。14番目の香りはレアメタルのようなクールな鉱物Pyrire(黄鉄鉱)をイメージしたものに。13は12 + 1と解釈して香りとなりましたが、14は新たな始まりとなりました。新たな始まりという意味合いから、ボトルも今までとは違うものへと変更し、デザインも変更したのです。果たしてその香りは?

 

 

今年の秋から、UNUMとしてスタートしたブランドが、SAUFとNebbiaを中心人物であるFilippo Sorcinelliの名のもとにまとめられ、SAUFはextrait de musiqueとライン名が改められました。そしてボトルもホワイトからダークなものへ、パッケージも凝ったとてもクールなものへと変わりました。新たに加わった香りは2つ、unda maris 8とviolon basse 16で、それぞれ8と16はパイプオルガンに使われているストップ(音色)

 

 

Nishaneからは新作こそないものの、新たなプロジェクトが始動していることを教えてくれました。また、画像のような8種がセットとなったトランク型のコフレも。なんて豪華なセットなのだろう。

 

 

イタリアの中でもシチリア島に焦点を当てたシチリアブランドが初登場。Soul od Sicilyという意味の古いシチリア語をブランド名にしたCiatu(チャトゥー)。デザインが独特で、バス&ボディラインまで幅広くあります。これはシチリアを旅した思い出に出来そうなラインですよね。

 

 

すでにレヴューをしているSoul Coutureですが、あまり素性がわからなかったオーナーのDavide Mattei氏と初対面。そしていつものように調香を担当したMichele Marin氏と共に撮影を。デイヴィッドは長くシューズ業界にいたそう。彼らのボトルはウッディキャップで一見とてもシンプルに見えますが、実際手にしてみると、収まりも良く美しいボトルであることがわかりました。後日、フルボトル他画像を追加予定です。

 

 

Soul Coutureでは、 心臓の中に入っているエッセンスをスポイトで肌に乗せる・・・というデモンストレーションが。感情と香りはいつもセットになるもの。

 

 

初参加だったのはBravanarizというスペインブランド。100%天然香料というどころか、自家製のティンクチャーをも使用したこだわりの香りでデビューです。彼らはもともとスペインの蒸留所で精油を手がけていた農家で、畑ではなく自然に生えている植物からエッセンスを得ています。だから、切り取った風景の中に生えている植物からエッセンスを抽出し、そのままボトルに閉じ込めた、というものなのです。アレルギー性の成分は大丈夫? などと心配になりますが、香りは逸品。しかも、彼らは地元の丘、農地を歩くツアーも企画していて、アグリツーリズモの香料バージョンみたいなことをしているのです。楽しい、とっても楽しいぞ。友人はシロップが入ったら子供用の風邪薬みたいだと評価していましたが、ワイルドなハーブのチンキなんてそんなもの。薬草なんですから。

 

 

オランダのFrancesca Bianchiからの新作はLover's Tale。肌の上に野獣がいる・・・アニマリックなカストリウムとレザーがオリエンタルに広がるのです。ギリギリなアニマリックさ。でも、クセになるのがそうした香りの良いところ。

 

 

ロンドンから参加したのはSana Jordin。2017年に7つの香りでデビューしたのですが、調香は全てCarlos Benaimで、モロッコの香料農家で花を摘む女性たちの手助けになるというフェアトレードを目的としたラインです。だから、きちんとモロッコ産の精油を15〜20%含んでいるそう。サンプルセットは30ポンドで、送料25ポンドで日本に送付してくれます。少し高いのですが、とても美しい香りでした。

 

 

いつもユニークな発想で楽しませてくれるEtat Libre d'OrangerからはI Am Trush、つまりゴミをテーマとした香りが公開に。

 

 

Robert Piguetから昨年リリースされたNuit Veloursはグルマン系。 昔の香りの復刻品クラシックな香りは抜群に良いのですが、最近の香りは退屈だよね、というのがジャーナリスト仲間たちとの共通認識です。

 

 

Nicolaiはこの春にCaps Neroliという香りを発売しましたが、秋にはNeroli Intenseという香りが追加に。もう少し想像を押し広げてくれるようなタイトルにしてくれたら良いんだけどなぁ。 でも、ボトルは昔と比べ物にならないほど良くなりましたよね。

 



実験的にスタートしたParfum J.U.Sが本格始動するそうです。このブランドは8つの香りと3つのデコラティブなボトルの2ラインで、なんと処方を全て公開するというのです。素材があれば誰でも作れる香りということに。画期的ではあるけれど、香料はそんなに簡単に集められないものですよね。Joyaux Eniquesは75mlのパルファムが230ユーロ、 Joyaux Sensorielsは100mlのパルファムが180ユーロで発売に。

 

 

新たにフレグランス業界に参入したFranck Muller。一流の調香師たちを起用しての5つの香りは、全てが時計のデザインやモチーフにつながっており、ボトルも時計の表示板そのもの。キャップはネジの部分というそれらしいデザインに。香りは全てが良かったわけではありませんが、キラリと光る香りもありましたよ。

 

 

なかなか実際に手に取ることのなかったGrossmith。ご家族と仲良くさせていただいている分、二割増しの印象の良さですが、パルファムを試すことは展示会でもできませんでした。初めてHasu no Hanaのパルファムを肌に乗せたら・・・往年のMitsoukoを思わせる酔いしれる芳香が広がりました。幸せ〜。銀座の資生堂ですずろのパルファムを初めて試した時の感動に似ています。

 



ちょうど展示会二日目の夕方、Campomarzio70というディストリビューター(流通会社)の直営店がフィレンツェにオープンしました。展示会が終わった後、オープンのカクテルパーティーへ出かけたのですが、そこで3年振りにMona di OrioのオーナーであるJeroen Oude Sogtoen氏にお会いしました。真っ白なスーツに違和感がない。なんとクールないで立ちだろう。そして、今回はMonaの後を継いでハウスパフューマーとなったはFredrik Dalman氏もいらしていて、名刺交換をして新作を説明してもらいました。スウェーデン人である彼にとって思い出の香りとはいかに?

 

 

最新作のSantal Nabataeaはヨルダンにあったナバテア王国をタイトルとしたもの。ペトラ遺跡が有名なその場所のあの壮大な風景を、色をサンダルウッドを軸にして表現した、とても滑らかで肌馴染みの良い香りでした。

 

 


出展はしていないけれど、会場には行くよ、と事前に連絡をくれていたPantheon RomaのLeone君とはもうすっかりお馴染み。イタリア人らしくきちんとしたスーツ姿で颯爽とあるく長身の彼は俳優のよう。Pantheon Romaはこの後10/1からカンヌで開催される展示会で新製品を公開する予定なのだそう。まだタイトルも何も決まっていないという新作のサンプルをいただいてしまいました。さて、今度の新作はラファエロとどのようなつながりがあるのでしょうか。情報解禁後にレヴューしたいと思います。知らなかったストーリーを読み解きながら香るのはいつも楽しいことなんです。

 

 

Campomarzio70をそそくさと後にして、次に出かけたのはFilippo Sorcinalliの新作公開イベントでした。 毎回趣向を凝らしたイベントで楽しませてくれる彼ですが、この構想はすでに春にあったもの。秋は映画ハンニバルのロケ地でイベントするからね、とお聞きしていたのでした。

 

 

あの激しい映画をまともに観るのは辛いという方もいるとは思いますが、レクター博士が逃げ隠れていたフィレンツェのアパート。そこからクラリスに手紙を書くというシーンがあるのですが、そこは昔のイタリア貴族の館だった建物Palazzo Capponiなのです。普段は観光などで入ることが出来ない場所。そこで彼はピアノの演奏と、ヴォーカルを楽しむというイベントを開催したのです。そこに合わせて公開されたのはbut_not_todayという香り。真っ赤な血、室内の赤い壁をイメージしたメタリックなレッドアコードにフィレンツェの紋章であるユリの花の香りを合わせた、とても個性的でクールな香りでした。

 

 

 

 

ここでクラリスへの手紙を書いたのです。この部屋には、古い資料が山のようにあり、それを1つ1つめくって説明してくれました。そんな貴重な資料を素手で触って良いものなの? と心配になってしまうほど。

 

 

Capponi家のご主人が貴重な資料を説明してくれた後、ピアノの間で音楽をワインと共に楽しみ、他の部屋を見て回ることが許されました。

 

 

18世紀の壁紙そのままだそうですよ。この赤、なんとセクシーで重厚感があることか。

 

 

展示会でもいつでも、クールというよりシャイな彼ですが、実はメインクーンを愛する愛猫家。でも、犬だってもちろん大好き。OnyricoのオーナーであるEmilia Chinigoの愛犬、まだ3ヶ月のトイプードルを抱っこしてこの笑顔ですもん。

 

 

巨大な靴を見せてくれたJ.F. SchwarzloseのTomiくんは、目線を合わるためにはこんなにかがまないと・・・とジョークで楽しませてくれます。

 

 

アレどうだった? 僕はぜーんぜん好きじゃないなー。うっそマジでー? なんて情報交換するジャーナリスト仲間、Fragrantica RussiaのSergey氏。もう何年も前からFragrantica Japanを担当してくれと言われ続けているのですが、あんなに膨大な情報を更新していくのは大変すぎると、とお断りとつづけてきました。でも、個人じゃなくてもチームでやればいいんだよ、という一言で「あ、だったらできるかも」と思えてきました。そうか、英語を訳せる人たちでチームを組んでproficeとして管理すればいいのか。

 

 

フェラガモの最新作を手がけたMane社若手のホープ、Alex Leeくん。カリフォルニア育ちのパリジャンです。どこにいても頭一つ出ているので、すぐに分かるんですよね。半袖の僕と、スーツの彼。オシャレは我慢が必要なもの。暑くて僕は着てられません!!

 

 


そうそう、これくらいカジュアルじゃなきゃね!! なんて撮影したのはNot PerfumesのJohanna Venablesと、この秋からV/siteurというパフュームブランドをスタートさせるJanne Rainer Vuorenmaa。共にスウェーデン人です。スウェーデンの歴史や文化はまだ知らないことがたくさん。日本人にとってはミステリアスな国ですよね。特にヴァイキングの歴史なんかも。

 

 

ランチを食べていたら、ここ空いてますか? と聞かれて座られた初老の紳士。いろいろとお話をさせていただきながら、Zoologistを知っているというので名刺交換をしてびっくり。どこかで見たことのあるお顔だと思っていたら、Michael Edwards氏じゃないですか。Fragrance of the Worldという書籍を毎年リリースしているのですが、香水ファンにはパヒュームレジェンド: 世界名香物語の著者という方がわかりやすいかもしれません。なんだ、あなたがレジェンドだよ!! ローマの香水店のオーナーさんと3人で予想外の展開となったランチを楽しむことが出来ました。

 

 

小さくなった、少ないなどと散々不満が出てきた今回でしたが、やっぱり行ったらそれは楽しいもの。だって知り合いたちが世界中から集まるのだから。新しい発見もあるし、新たな知り合いも増えていきます。特に今回は展示会の前にカラブリアを旅したことで、南イタリアの田舎を知ることも出来ましたし。

展示会の初日から今日で一週間。先週の出来事が遠い昔のことのように目まぐるしく動いた一週間でした。頂いたサンプルやボトルを美しく撮影をして、来週から新作レヴューを開始したいと思います。

(21/09/2018)

 

 

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