2022年6月、30個限定発売された香り。調香の最後に and Loveと記載されているのは、この香りが最愛の父に捧げられたものだから。

初回ロットは30本のみで169ユーロ。もともとはヨーロッパのコンテストのために作られた香りで、審査のために1リットルを作ったのだそう。ファイナリストに残ったものの、その先の審査にフォーミュラの提出を求められたため、途中で辞退されたのです。1リットルって、何百人で審査するんだ、という感じですよね。オンラインで発売することなく、直接の連絡のみで30本の限定発売となりました。完売したら、新たにローズオイルを購入して販売用のロットを確保するそうです。

香りは紛れもなくローズオイルやローズアブソリュートの香りで、精油をそのまま使用した、品質の確かさを示す香りが広がります。トップノートはローズオイルのワイルドな部分が強く広がりますが、数分で香りは落ち着き、少しフルーティーな柔らかいローズ香へと変化していきます。ローズだけではない、まろやかさ。でも、しっかりと軸にあるローズの確かさ。ローズの香料はそれだけではとてもワイルドなため、柔らかさを出すためと、リフトアップさせるためにアイリスが役立っています。もともとローズに厚みを持たせリフトアップさせるためにヴァイオレットを使用することが多いのですが、アイリスにはヴァイオレットに通じる成分が入っていますので、とても理にかなった組み合わせなのです。

また、昔はなかなかライラックの天然香料はありませんでしたが、今ではアンフルラージュでアブソリュートを得たり、CO2でエクストラクトを得ている蒸留所がブルガリアにあるようです。香りはそこから少しお香を感じるような寺院系のニュアンスとなります。そう、サンダルウッドですね。ローズのインセンスを焚いたような残り香となり消えていくのです。それでも持続は4、5時間ありますので、しっかりとしたEdPで、特別なハレの日の香りです。

(04/07/2022)