2013年5月末、ミラノカッフェと共に発売されたイタリア5都市の最初の香り。もともとは、イタリア人の著名な?漫画家が書いたCorte Sconta detta Arcanaというものの中に登場していくる場面にインスパイアされたそうです。裁判所で有罪確定を受けた後、観光名所として名高いため息橋を渡り投獄されるわけですが。囚人にとってため息橋から見る風景が、最後のヴェネツィアの景色となると言われています。なんと、その前に3ヶ所の庭が用意されていて、そこでしばしの時を過ごせるのだそうです。

陸地のないヴェネツィア人にとって、海の上の土地というのは限りある大切な場所であり、細い路地を迷路のように張り巡らすほど緻密なつくりになっています。その場所の中で、土地を建物ではなく庭にしてしまうというのは裕福な人の証ですよね。皆さん、所狭しと小さな庭を設けてガーデニングや自然を楽しんでいるようで、こんな画像を見ることが出来ます。

隠すかのように作られた小さな庭たちは、シークレットガーデンそのもの。そのヴェネツィア人にとって大切な場所を香りとして表現したわけですが、これがまたTawafに匹敵するほど素晴らしく美しいジャスミンなのです。Tawafの祈りを捧げるジャスミンと違うのは、こちらにはハーブのアロマティックな香りとグリーン香が加わっている点にあります。妖艶でセクシーな香り、特にクレオパトラのようなイメージではなく、もっとナチュラルガーデンのイメージが広がるのです。ラストノーはフローラルノートもアロマティックなハーブもなくなり、ほぼミルラが残るのですが、これは樹脂香やオリエンタルのイメージではなく、苔むした石が並んでいる感じにすら思えますので、古いヴェネツィアの建物や風景には溶け込んで感じられるのではないでしょうか。

彼はオリエンタルな樹脂香やワイルドな香りたちがお好きで、どうしてもそちらに向かうことが多い印象ですが、こちらは美しくまとめられた天然香料の良さを感じられる1本で、美しい花々からミルラに変化して残る辺り、かっこいいなぁ、と思います。

(06/06/2013)