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■調香師の東京観光。

 

 

Esxenceに向かうための出国当日だった3月29日、朝一番の飛行機で東京に向かいました。数か月前から、Nishaneの香りをほとんど手掛けているトルコ在住の調香師Jorge Lee氏とお会いすることになっていたのです。僕の出国は夜だったので、午後は全部空いていると伝え、東京観光をすることになったのです。本来であれば彼とはミラノの展示会でお会いするはずだったのですが、ご縁って不思議ですよね、彼は友人の結婚式のために来日したのです。

今年(2016年)の桜と言えば、咲く咲く詐欺のような状態で、例年であれば3月下旬は満開のはず。彼には最高の状態の桜がみられるよ、と伝えていたのに・・・。皆さんだったら、外国人をどちらにご案内しますか? 桜のシーズン真っ只中だとしたら・・・。26日に東京赤坂セミナーを終えた後、27日に一人で新中野の神田川へ向かいました。高円寺にオフィスがあった頃は毎年出かけていた大好きな花見コースだったのです。高層ビル群を背景にした桜並木はとても美しいので、是非見てほしいと。でも、27日は1部咲きにも満たないほど、開花宣言直後の様子だったのです。無理だ、これでは花見にならない!!

予報では29日に満開を迎えるはずだった東京の桜は、ちっとも開花しないまま当日を迎えてしまいました。朝一の便で東京に向かった僕には大きな問題が1つありました。それはスーツケースです。3週間の旅行を控えたスーツケースは30kgの特大サイズだったのです。どこかに手荷物預かり所はないだろうか・・・。東京駅にはあるけれど、東京駅に向かっている時間はない。待ち合わせは四ッ谷でした。

事前にいくら調べても見つからず、新宿駅のコインロッカーをしらみつぶしに当たっても、大きすぎて入りません。これは、困った!! 海外ならば、半日タクシーを借り切って荷物をトランクに詰めたまま観光するという手もありますが、東京では高くつきすぎます。困った僕が選んだのは、ダメ元で彼の宿泊していたホテルに頼むというもの。でも、さすが日本のホテルですよ。あっさりと快く受け入れてくれたのです。宿泊者を案内するという事情を説明した上で、ということだったわけですが、彼に会うことよりも荷物のことで頭がいっぱいだった出会いでした。

 

 

Jorge Lee。英語だとジョージ、フランス語だとジョルジュですが、何故か僕の頭ではホルヘと変換されていました。会ってまず聞いたのはホルヘで言いよね? という確認。彼はコロンビア生まれの調香師です。コロンビアってスペイン語だったよね? そうだ。メキシコ人だと思っていたからホルヘと呼んだのです。ちょっと違っていたけれど、発音は会っていた!!

そんな彼をまずは案内したのはランチです。本心で言えば満開の桜が見下ろせる高層階のレストランを予約したかった。でも、咲いていない以上、美味しい日本料理が良いよね・・・、と悩んだ末に決定したのは小田急にある「なだ万」でした。

 

 

偶然にも、小田急に友人がいることを思い出して久しぶりに連絡を取り、あっさりと窓側の予約を取り付けることに成功。彼の好き嫌いを知らないため、海鮮がダメだったら、生魚がダメだったら・・・イスラムだったら・・・と、苦肉の策です。小田急のなだ万は、中でコースも良し、アラカルトも良し、鉄板料理もあるよ、という当日選べる内容だったのです。良し、とテーブルに付いて選んだのは懐石料理のコースでした。

1つ1つお品書きに記してあったのですが、食べてしまってから美味しいと言われてもその鉢に入っていた料理がわからず四苦八苦。さらに、なんと説明したら良いのかわからない日本料理に四苦八苦。

でも、見た目に美しい日本料理にとても興味深々で、美味しくランチは終了です。画像の左側に映っているスクリュー缶は日本の桜の香りだよ、と渡した桜のアコードでした。この他にも、オリジナルの桜風を15mlで作って持って行ったのでそちらをプレゼント。荷物にならない大きさです。彼はなんとお土産として小さなカップと彼のオリジナルの香水をプレゼントしてくれたのです。びっくり!! これがまたジャスミンアブソリュートを贅沢に使用した香りで、外に出てから肌に乗せ、その香りについていろいろと話すきっかけとなりました。(使用している香料とか)

 

 

小田急を出た僕らが向かったのは新宿御苑でした。中央線に乗りながら、なんとなく「咲いてる風」に見えた一角が御苑の中に見えていたからです。さすが新宿御苑。桜の種類も豊富で50種ほどが植わっており、早咲きタイプが開花していたのです。良かったよ、これで桜を見せられたよ。

桜の中でも大島桜の葉を塩漬けにするとクマリンが香りだすという話をしたり、桜のアコードの取り方を説明したりしていたら、なんと彼はトルコの自宅に桜を植えていると言うではありませんか!! でもあまり香りはないよ、と。でも、この日僕らの鼻は桜の香り、クマリンをちゃんとキャッチしていたのです。歩きながら、話をしながら、顔を見合わせて「今、香ったよね? あっちから?」なんて香りの出どころを探しながら散策する楽しさったら、マニアにしかわからないだろうなぁ。

 

 

新宿御苑に咲いていたのは日本水仙。日本水仙は香料用の植物ではないこともあり、彼にその香りの特徴を伝えると、まさにその通りと大きくうなずきます。そう、日本水仙は他の種類よりもクレゾール香が強いのです。グリーンで、シトラスで、クレゾールで・・・ちょっとネロリっぽいよね。なんて会話が続きます。

この他に新宿御苑にあったのはヒノキでした。精油分が多いから良く燃える、火の木という意味合いという説もあるんだよ、と説明しながら初めて香るというヒノキの葉の香りに感動していました。そう、彼は香るとその場でメモをするのです。感じたことをすべて書き込む。ヒノキの葉の成分は多くかピネン類ですが、彼はその中にたくさんのスパイスを感じたようです。ジンジャー、カルダモン、ペッパー・・・。もちろんその香りが精油分に含まれているわけではありませんが、その中に感じたということは相性が良いという指針になります。つまり、調香のヒントをメモしていたのです。楽しすぎる!!

彼のメモ帳をのぞき込みながら、ユニークな発想はこうして生まれるのだと理解をした花見でした。

その後は、タクシーで明治神宮に立ち寄り、一通りの見物を。宗教ですから、ちょっと難しい箇所があるのかな・・・と思っていたら、さすが観光地、英語の説明も随所にあって案内するには便利ですよね。でも、そこで歩きながら話していたのは別のことでした。プレゼントしてくれたジャスミンの香りの話、コロンビアの話、もちろんNishaneの話。何故30%という高濃度にこだわるのか、という話などなど。あまりに個人的すぎる内容も含めて楽しかったですよ。

 

 

さぁ、ホテルに戻ろうか・・・と新宿から中央線に乗り換えようと思ったら、ホームがない。東京を離れたわずか1年の間にホームが移動していたなんて!! しかも、それをホルヘに教えられるなんて!! 何故彼が知っていたのかというと、午前中にヨドバシカメラに買い物に出かけたからだそう・・・。携帯の充電が出来ず、ケーブルを購入したのだそう。

ホテルに向かいながら、ちょっとお茶しようよ、と彼が入りたいと言ったお店に・・・。なんとそこは僕も初めてのジャズ喫茶でした。音を楽しむための喫茶店ですから、私語厳禁・・・だよ? え? ここで良いの? 彼はスマホをいじって流れている音楽をアプリで検索して喜んでいます。凄いよ、自動検索なんてあるんだね・・・と使いこなしている彼に感心したら、なんと3つしか年がかわらないことが判明。一気に親近感倍増です。

顧客からのメールに対応していた彼は、無理難題を言うんだよ・・・と顧客からのメールを見せてくれました。なんと、シトロネラの石鹸を依頼されている様子。えー、虫除け以外に使うことあるの? とか、何がしたいんだか良くわからないとか、裏事情をコソコソと目の前にいる僕とメッセージでやり取り。なんとお茶目な。

ジャズ喫茶のコーヒーはあまり美味しくなかったと言う彼が、今朝凄く美味しいコーヒーを飲んだから、是非そこでもう一度コーヒーを飲もうよ、と言うのでついていったら、なんとそこはドトールコーヒーでした。コーヒーと言えば誰もが思い浮かべる産地、コロンビア。コロンビア人である彼のこだわりにフィットしたのはなんとなんとなんと、ドトールだったのです!! 侮るなかれ、灯台元暮しな感じで衝撃的でした。そう言えばインド人のNeela(NVC)がお土産にと欲しがったのは、日本の庶民的なゴールデンカレーだったもんなぁ。

ソムリエさんの話をお聞きするとノンアルコールだったり、ノンスモーカーだったりする方が多いようですが、調香師はそんなことありません。喫煙者がじつに多い!! 彼も喫煙者なんですよ。そう言えば新作はタバコの香りだったよなぁ・・・なんて。どうってことない無駄話をしていたら夕方になり、夕方からはまた別の方とアポがあるというので、その待ち合わせの場所まで案内をしてのお別れでした。

彼は、この後1週間滞在したため、無事に満開の日本の桜を堪能できたと連絡がありました。一安心です。彼とは、9月にまた今度はトルコでお会いする予定です。半年の間にお互いの国を行き来する予定があるなんて、なかなかない偶然ですよね。トルコには植物園もあるけれど花の咲く美しい樹木は少ないと言います。でも、いろいろ案内するからと約束してくれたので、9月を楽しみに待ちたいと思います。

(19/05/2016)

 

 

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