Jean-Claude Ellena氏とLucien Ferrero氏という2名のマスターパフューマーによって4つの香りが作られました。Lucien Ferrero氏はLaboratorio Olfattivoにより自身のラインが発売となりましたので、そのご縁でそのまま手がけることとなったのでしょう。Jean-Claude Ellena氏はエルメスを退職し、昨年からフリーの調香師としてリスタートしました。キャップは他のラインと違いゴールドで、ラベルはブラウンに。価格も145ユーロと少し高めで発売に。

■Baliflora (2019年)

テーマはバリ島。フランジパニの咲く南国ですが、落ちた花は神に捧げられるそう。だから髪に花を飾ることも、祈りの意味が込められているんですね。

マンダリン、オレンジブロッサム、フランジパニ、リリー、ゼラニウム、ロータス、ジャスミン、ムスク

香りはダイレクトにフランジパニを再現したわけではなく、Jean-Claude Ellena氏らしいミニマムな調香で、エアリーなジンジャーリリー風フローラルとなりました。シンプルで少しありがちなテイストではありますが、瑞々しいフローラルの香る風景をまとめたのでしょう。ユニークではないにしても、インパクトが薄い分、愛される幅も広いと言えます。最後はウッディムスクが優しく肌に残ります。(20/06/2019)


■Tuberosis (2019年)

チュベローズは夏から秋にかけて咲く花なのですが、最後の1本が冬間近に咲き、その香りが開けたドアから入ってくる・・・という風景を香りにしたようです。

インディアンカーネーション、チュベローズ、コリアンダー、スパイス、ムスク

これは少し変わったチュベローズとなりました。チュベローズらしいココナッツ調の甘さが強く出たフローラルにスパイスが重なってスタートするのです。スタートこそスパイスで驚かされましたが、香りは次第にチュベローズらしいセクシーな香りへと変化し、肌の上でしっとりと艶やかに香ります。これはチュベローズの香りがお好きな方であれば間違いないタイプなのですが、アブソリュート感はありませんので、ココナッツ系トロピカル系チュベローズだとお考え下さい。(20/06/2019)


■Tantrico (2019年)

ヒンドゥーの密教を意味するタントラがタイトルとなりました。サンダルウッドは神と会話するツールであると。

トップ:ジュニパーベリー、ライム、クラリセージ、グレープフルーツ
ミドル:サイプレス、山椒、サンダルウッド
ベース:ホワイトムスク、ファーバルサム、アトラスシダーウッド

これはとてもアロマティックな精油らしいテイストがスパークして始まります。精油のトゲトゲした部分をホワイトムスクが優しく包み込み、精油らしい部分はトップで賑やかに香りますが、霧が晴れるようになくなり、その後はサンダルウッドとシダーウッドを中心としたウッディノートがムスクと共に香り続けます。とてもアロマティックで、このブランドの中に今までになかったテイストで楽しませてくれます。(19/06/2019)


■Vetyverso (2019年)

タイトルからして、これはベチバーがテーマとなったんですね。ハイチを含むアンティル諸島を旅した際、火山の裾野で栽培されているベチバーを見たそう。

トップ:クローヴ、ナツメグ、ビターオレンジ
ミドル:ベチバー、ブラックペッパー、ピンクペッパー、グレープフルーツ
ベース:シダーウッド、クラリセージ、サンダルウッドアコード、ホワイトムスク

ベチバーのもつ香ばしいトップノートにナツメグ、クローヴ、ペッパーを合わせた、くすんだスパイシーさで始まります。シトラスノートはそれとわかるほど強くはないけれど、きちんとその役割を果たしてスパイスをリフトアップしています。シトラスとスパイスが弾けた後はベチバーが主軸となって香りますが、今度はベチバーのもつアーシーなウッディトーンへと切り替わり、そこにクマリンが柔らかさを添えて香ります。ウッディノートはベチバーを支える縁の下の力持ちで、クローヴの香りがベチバーと重なり、スパイスの中では一番長くけん引されています。カテゴリとしてはスパイシーウッディなベチバーですが、アーシー過ぎずにアロマティックなトーンで支えているあたり、ユニセックスを意識したのでしょう。少し懐かしさを感じるベチバーですが、2022年の展示会ではベチバーをテーマとした香りが目立ちましたから、再注目されている素材です。30、100mlのEdPが74、148ユーロで発売に。(17/11/2022)