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extrait de musique / エクストレ・ドゥ・ミュジーク

2026年6月、Esxenceにて発表されたのは新たな7種の香りでした。今までの香りを全て廃止し、新たにテーマを設けて作り直したのです。それは思い出の風景、記憶の中の香りと音楽をつなげるというもの。7つの香りは7つの記憶と共に音と香りにつながり、7つの組曲のようでした。

教会で行われたイベントでは、1曲ごとに少しずつ前に進み、最終的にオルガンの目の前で聴くというもので、語りとオルガンと香りの空間でした。オルガンが流れる中、スタッフが香りの入った箱を持って周り、参加者たちは鼻を近づけて香りながらの演出でした。展示会で関係者に配布されたサンプルにはレコードがついており、そのレコードには7つのそれぞれの香りのオルガン曲が収録されています。香りながら、オルガンを聴きながら楽しみましょうということで、2026年6月末まで、オフィシャルサイトでフルボトルを購入するとレコードがギフトで頂けます。(16/06/2026)

 

 

■Organ #6 (2026年)

ノートルダム大聖堂の青いステンドグラスの窓をテーマとした香り。彼にとってのノートルダムは青の光の空間であり、オルガンの音が荘厳な音色で包み込む特別な場所。オルガンの音が空とノートルダムをつなげ、共感する。

トップ:ベルガモット、マンダリン、レモンリーフ
ミドル:ナツメグ、ジュニパーベリー、ラベンダー
ベース:セージ、サンダルウッド、シスタス

青を感じさせるエッセンスはあまり多くはなくて、ラベンダーやアイリスがテッパンです。この香りもラベンダーを軸組まれたシトラスアロマティックウッディムスクで、7種の中では一番アロマティックな香り。レモンリーフ、つまりはレモンペティグレンの香りがラベンダーやジュニパーと共に弾け、とても爽快なスタートではあるけれど、それを浮つかせないオリエンタルなベースが支えます。メンズっぽいフゼアではありませんが、肌に残るラストノートには微かなクミン調があり、オポポナックスベースのようなパウダリーオリエンタルウッディとなって終わります。(18/06/2026)


■Organ #5 (2026年)

フィリップにとって、土曜日の午後の思い出。#1の様子も土曜日の午後でしたが、母親が教会の掃除に出かける土曜の午後、彼は母についていき教会のカーペットを洗っている間、彼はキーボードに座っていたそう。その頃はまだオルガン奏者でなかったけれど、その空間に広がる金の光、水の音、温められた空気に広がる洗濯物の匂い。彼にとっての教会は神聖で厳粛ではあるけれど、どこか家庭的な雰囲気をも感じさせる場所のよう。

トップ:サイプレス、クローヴ、ゼラニウム
ミドル:ガジュンバルサム、シプリオール
ベース:アイボリー、シスタス、ブラックアンバー

洗いたての洗濯物の匂いが広がるとなるとアルデヒドやソープ系のムスクにスズランを合わせていくのがテッパンですが、彼は全く違うイメージだったのでしょう。精油感の強いアロマティックノートで始まるのです。しかもそこからはバルサムの効いたシトラスアンバーにクローヴが重なる、つまりはハーブたっぷりのオレンジポマンダーのような香りとなって落ち着くのです。何だかとてもイタリアらしくて牧歌的。フランキンセンスではないけれど、樹脂香がそれらしいトーンを感じさせてくれます。(18/06/2026)


■Organ #4 (2026年)

聖遺物箱の匂い。聖なるお祝いの日に、聖遺物箱が祭壇に配される。金と銀の布に彩られ、キャンドルの炎に照らされる。メタリックでほんのり甘い匂いがお香とワックスを思い起こさせる空間。そこで彼が奏でるオルガンの音が祭壇を包みこみ輝く。崇拝と敬意を金属的な香りとバルサムノート、キャンドルの暖かさで明るく表現した香り。

トップ:マンダリン、カルダモン、ブラックペッパー
ミドル:ピオニー、アイリス、真鍮
ベース:スティラックス、アンバーウッディ、オークウッド

ある意味とても異質な香り。アイリスが利いた冷たく暖かいアンバーウッディに彼が金属的と表現するメタリックなトーンが強く重なります。それはアルデヒドではなく、よくあるメタリックな香りではなく、フレッシュノートとして使われる香料にある少しオゾンを感じさせる香り。そう、全体を2000年代のオゾン系フレグランスを感じさせる香りが包み込んでいるのです。でも、そこに包まれた香りはあの頃の香りではなく、もっと個性を放つもの。(18/06/2026)


■Organ #3 (2026年)

一番個性的だった香り。それはエンジンルームの匂い。オルガンのキーボードの奥にある滅多に立ち入ることのない空間。金属的で熱を帯びた塵が歯車の中をゆっくりと流れ、オルガンのふいごを揺らす。レバー、タービン、エアダクトによってエネルギーが音に変換される空間であり、フィリッポにとってある意味神聖で気分が高揚する場所。

トップ:グレープフルーツ、タイム、シベット
ミドル:ローズ、コパル、ジャスミン
ベース:シダーウッド、レザー、シプリオール

ムエットではスモーキーに感じたのですが、意外にもトップから調香通りにシベットが香りだしました。シベットとタイムという異質な組み合わせに冷たく少しオイリーなレザーが重なっていく。冷たい石の上をすべるオイルのよう。シベットの香り方が悪臭ではなく1つのパーツになっている点がとても心地良く、シベットの香料の中でもインドールに近い香りをジャスミンに合わせて使うことで表現しているのだと思います。(17/06/2026)


■Organ #2 (2026年)

おそらくは一番今までの彼らしい香り。2つ目は復活祭の日の想い出。ステンドグラスの窓で濾過され、祭壇に集まる光。光は集約されて強まるけれど柔らかく広がる。キャンドルが燃える中で響くオルガンの音が塊となり、教会全体が共通の思いに包まれていく。喜びが誇らしげに音となり、復活祭を祝う。

トップ:フランキンセンス、ピンクペッパー、リメット
ミドル:ラブダナム、ウード
ベース:オークモス、フランキンセンス、スティラックス

安心して香っていられるフランキンセンス主体の教会の匂い。今までのラインのそれと違うのはオークモスが利いている点でしょうか。ラブダナムやウードが重いオリエンタルノートを形成するのではなく、キラキラと光に散るフランキンセンスではなく、重低音と共に低く煙が漂うようなトーンで広がっていきます。彼のステンドグラスを通る光が濾過されるという感覚、表現がとても素敵で、それだけでこの香りの価値がありそう。最後はスティラックスの効いたスイートフランキンセンスとなって終わります。(16/06/2026)

 

 

 

2016年9月の展示会の二日目、彼は展示会を早めに抜け出し、パラティーノの丘の上にある教会へと向かいました。夕暮れから夜に切り替わる頃、その教会で彼のオルガンコンサートが開催されたのです。彼の香水は香っていますし、アルバムも聴いていますが、コンサートで生音を聴くのは初めてのこと。特に教会音楽、パイプオルガンの重厚な音色が好きな方にはたまらないひと時。女性ボーカルとのコラボということで、音と声が響き渡ります。(27/10/2016)

 

 

彼のこのラインはSAUFからextrait de musiqueと改められ、ボトルやパッケージがリニューアルされました。価格も95ユーロから155ユーロへと引き上げられたのですが、その分商品はしっかりとした高級感を感じさせるものに。

 

 

このラインは、全てが教会で使用されるパイプオルガンのパーツ、そこから発する音を香りで表現したものとなっています。最初の3つの香りは全て右側にあるストップレバーがタイトルに。8、16、32の数字は小さいものほど高音になるそうです。こうして、音を重ねて厚みを生み出すんですね。(27/09/2018)


■Trompette 8 (2023年)

パイプオルガンの音色の中でもオーケストラ調にする際に使用されるそう。トランペットの音色なんですね。

 

 

トップ:ベルガモット、ピンクペッパー、エレミ
ミドル:シダーウッド、チリペッパー
ベース:フランキンセンス、ラブダナム、ブラックペッパーabs

トランペット調の音色を香りにしたらどうなるのか。今回は彼らしいたっぷりのフランキンセンスを軸にエレミが重なりました。エレミはレモンとペッパーをフランキンセンスに足したような香りのため、ベルガモットでトップのフレッシュさを強調し、更に3種のペッパーで弾ける高音を強化したようです。もともとフランキンセンスは樹木の樹脂であるため、フランキンセンスの樹脂を焚いた時のリアル感を表現するにはウッディノートを足した方が良いのですが、シダーウッドを足すことでそれを表現したというとても理にかなった調香です。それとわからないほど少量のラブダナムはベースノートの安定剤のようなもの。火花のようにパッとシトラスとペッパーが弾け、フランキンセンスが煙が後に残るという、花火にも例えられそうな香り。(13/04/2023)


■Unda maris 8 (2018年)

ラテン語のタイトルの意味はWave of the seaで、オルガンの右側にあるストップレバーの名称です。二つの管の片方が少し短くなっていることで、同時に空気を送り込むとフルートの響きのように共振する揺れを生み出すのだそう。


 

調香は公開されていないのですが、冷たさと温かさを合わせて表現したような香りです。マリンではない冷たさを感じる金属的なノートがアニス調の甘さ、オリエンタルな樹脂の甘さと共に香り、とてもアロマティックなノートがアクセントとして入っています。金属的な冷たさは持続をせず薄れていき、肌に残るのはビターなオリエンタルノート。ファーバルサムや松脂に少しハニーを足したような香りですね。そして最後の残り香の中にフランキンセンスらしさを感じることができます。Extrait de Parfumながらとても軽やかに感じられるのは、カーネーションなどに使用されるフローラルノートがたっぷりと配合されているから。軽い香りを多く配合することによって、高濃度でも軽やかなのです。これが近年流行のスタイル。(27/09/2018)


■Violon Basse 16 (2018年)

パイプオルガンには、木製または金属製のペダルがあるのですが、そこから出る音の中でもヴィオラ・ダ・ガンバと呼ばれる中世のヨーロッパで普及した脚で支えるヴィオラがタイトルとなりました。

 

 

香りは重低音を思わせるスモーキーなウッディオリエンタルです。タールのスモーキーノートがそのまま樹木から漂ってきたような香りで始まり、クマリンでまろやかになったアンバーベースのオリエンタルノートへと引き継がれていきます。それでも、ムスクの強いオリエンタルさでもなく、バニラの強いノートでもなく、スモーキーさを持続させるベースとしてあるような印象です。だから、基本的にはとてもシンプルな構成で、香りのインパクトの弱い軽めな香料がいくつか重ねられているのでしょう。スモーキーウッディですが、レザー感はあまりありませんので、メンズっぽく力強い香りになっているわけではありません。(27/09/2018)


■Contre bombarde 32 (2016年)

砲撃に備えて・・・というような意味なのですが、どうしてこのタイトルになったのかは彼の頭の中だけに・・・。 上記の画像のように、音色を変えるストップレバーのタイトルが香りになっています。砲撃のような重低音なのでしょう。忘れられない音楽の風の中に身を置く、その瞬間の幸福感のようなものを表現したようです。

 

 

トップ:エレミ、ジュニパー、ビターオレンジ
ミドル:シダーウッド、サンダルウッド
ベース:アンバー、カラメル、バニラ

一瞬、これはスパイシーだぞ、と感じたのですが、少しクミンっぽいスパイシーさがトップで香ります。エレミやジュニパーのアロマティックさ、レモンやペッパー系の特有香は強くはなく、スイートウッディの中へ溶けていきます。3種の中でこちらだけはフランキンセンスを使用していないのですが、雰囲気としてはフランキンセンス系で、エレミがそう感じさせているのかもしれません。微かにキャンディー調の甘さに感じるにはカラメルがあるからだと思うのですが、甘さは強すぎるようなことはなく、ウッディノートをドライにさせない良いベースとなっています。(27/10/2016)


■Plein Jeu III-V (2016年)

光とフランキンセンスの調べをコロンのような軽やかさで表現したもの。彼は香水とはプチミュージックだと語っています。香りは良く音楽にたとえられますからね。

トップ:レモン、ジンジャー、ミモザ、ブラックペッパー
ミドル:ジャスミン、フランキンセンス、アンバー
ベース:ベチバー、シダーウッド、ファーバルサム、モス、パチョリ、サンダルウッド

光の筋のようなフレッシュさを期待すると少し違うのですが、レモンとジンジャーがスイートアンバーと共に香り始まります。結構な甘さがトップから感じられ、一瞬キャンディー風にも思えるのですが、香りはすぐにフランキンセンスへとつながっていきます。フランキンセンスの配合はたっぷりで、フランキンセンスが軸であることをしっかりと主張しています。その周りの香りたちが全てフランキンセンスを盛り立てるために配置されているのですから。甘さ、モス、ウッディノート、どれ一つとしてフランキンセンスを邪魔することなく、温かみを加えており、3種の中では一番オーソドックスなフランキンセンス系の香りと言えそうです。(27/10/2016)


■Voix humaine 8 (2016年)

人間の声というタイトルなのですが、人間にとって一番古い「香水」をイメージしたようです。

トップ:ベルガモット、カルダモン、エレミ
ミドル:ジャスミン、アンブレット、オレンジブロッサム
ベース:アンバー、レザー、フランキンセンス、モス、ムスク、バニラ

GuerlainのHabit Rougeのようなスイートパウダリーオリエンタルで始まります。これはかなり甘いぞ、と思っていると、香りは次第に、柔らかく甘いふわふわとしたムスクに包まれたフランキンセンスへと変化していきます。樹脂のワイルドさを軽減し、優しい声で包み込む子守歌のようなフランキンセンスとなっているのですが、このようなフランキンセンスのフレグランスは珍しいのではないでしょうか。とても良い夢を見られそうです。このラストノートは往年のフレグランスらしい形となっていますので、クラシカルな香りがお好きな方にも良さそうです。(27/10/2016)

 


 

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