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extrait de musique / エクストレ・ドゥ・ミュジーク

 

 

2016年9月の展示会の二日目、彼は展示会を早めに抜け出し、パラティーノの丘の上にある教会へと向かいました。夕暮れから夜に切り替わる頃、その教会で彼のオルガンコンサートが開催されたのです。彼の香水は香っていますし、アルバムも聴いていますが、コンサートで生音を聴くのは初めてのこと。特に教会音楽、パイプオルガンの重厚な音色が好きな方にはたまらないひと時。女性ボーカルとのコラボということで、音と声が響き渡ります。(27/10/2016)

 

 

彼のこのラインはSAUFからextrait de musiqueと改められ、ボトルやパッケージがリニューアルされました。価格も95ユーロから155ユーロへと引き上げられたのですが、その分商品はしっかりとした高級感を感じさせるものに。

 

 

このラインは、全てが教会で使用されるパイプオルガンのパーツ、そこから発する音を香りで表現したものとなっています。最初の3つの香りは全て右側にあるストップレバーがタイトルに。8、16、32の数字は小さいものほど高音になるそうです。こうして、音を重ねて厚みを生み出すんですね。(27/09/2018)


■Trompette 8 (2023年)

パイプオルガンの音色の中でもオーケストラ調にする際に使用されるそう。トランペットの音色なんですね。

 

 

トップ:ベルガモット、ピンクペッパー、エレミ
ミドル:シダーウッド、チリペッパー
ベース:フランキンセンス、ラブダナム、ブラックペッパーabs

トランペット調の音色を香りにしたらどうなるのか。今回は彼らしいたっぷりのフランキンセンスを軸にエレミが重なりました。エレミはレモンとペッパーをフランキンセンスに足したような香りのため、ベルガモットでトップのフレッシュさを強調し、更に3種のペッパーで弾ける高音を強化したようです。もともとフランキンセンスは樹木の樹脂であるため、フランキンセンスの樹脂を焚いた時のリアル感を表現するにはウッディノートを足した方が良いのですが、シダーウッドを足すことでそれを表現したというとても理にかなった調香です。それとわからないほど少量のラブダナムはベースノートの安定剤のようなもの。火花のようにパッとシトラスとペッパーが弾け、フランキンセンスが煙が後に残るという、花火にも例えられそうな香り。(13/04/2023)


■Unda maris 8 (2018年)

ラテン語のタイトルの意味はWave of the seaで、オルガンの右側にあるストップレバーの名称です。二つの管の片方が少し短くなっていることで、同時に空気を送り込むとフルートの響きのように共振する揺れを生み出すのだそう。


 

調香は公開されていないのですが、冷たさと温かさを合わせて表現したような香りです。マリンではない冷たさを感じる金属的なノートがアニス調の甘さ、オリエンタルな樹脂の甘さと共に香り、とてもアロマティックなノートがアクセントとして入っています。金属的な冷たさは持続をせず薄れていき、肌に残るのはビターなオリエンタルノート。ファーバルサムや松脂に少しハニーを足したような香りですね。そして最後の残り香の中にフランキンセンスらしさを感じることができます。Extrait de Parfumながらとても軽やかに感じられるのは、カーネーションなどに使用されるフローラルノートがたっぷりと配合されているから。軽い香りを多く配合することによって、高濃度でも軽やかなのです。これが近年流行のスタイル。(27/09/2018)


■Violon Basse 16 (2018年)

パイプオルガンには、木製または金属製のペダルがあるのですが、そこから出る音の中でもヴィオラ・ダ・ガンバと呼ばれる中世のヨーロッパで普及した脚で支えるヴィオラがタイトルとなりました。

 

 

香りは重低音を思わせるスモーキーなウッディオリエンタルです。タールのスモーキーノートがそのまま樹木から漂ってきたような香りで始まり、クマリンでまろやかになったアンバーベースのオリエンタルノートへと引き継がれていきます。それでも、ムスクの強いオリエンタルさでもなく、バニラの強いノートでもなく、スモーキーさを持続させるベースとしてあるような印象です。だから、基本的にはとてもシンプルな構成で、香りのインパクトの弱い軽めな香料がいくつか重ねられているのでしょう。スモーキーウッディですが、レザー感はあまりありませんので、メンズっぽく力強い香りになっているわけではありません。(27/09/2018)


■Contre bombarde 32 (2016年)

砲撃に備えて・・・というような意味なのですが、どうしてこのタイトルになったのかは彼の頭の中だけに・・・。 上記の画像のように、音色を変えるストップレバーのタイトルが香りになっています。砲撃のような重低音なのでしょう。忘れられない音楽の風の中に身を置く、その瞬間の幸福感のようなものを表現したようです。

 

 

トップ:エレミ、ジュニパー、ビターオレンジ
ミドル:シダーウッド、サンダルウッド
ベース:アンバー、カラメル、バニラ

一瞬、これはスパイシーだぞ、と感じたのですが、少しクミンっぽいスパイシーさがトップで香ります。エレミやジュニパーのアロマティックさ、レモンやペッパー系の特有香は強くはなく、スイートウッディの中へ溶けていきます。3種の中でこちらだけはフランキンセンスを使用していないのですが、雰囲気としてはフランキンセンス系で、エレミがそう感じさせているのかもしれません。微かにキャンディー調の甘さに感じるにはカラメルがあるからだと思うのですが、甘さは強すぎるようなことはなく、ウッディノートをドライにさせない良いベースとなっています。(27/10/2016)


■Plein Jeu III-V (2016年)

光とフランキンセンスの調べをコロンのような軽やかさで表現したもの。彼は香水とはプチミュージックだと語っています。香りは良く音楽にたとえられますからね。

トップ:レモン、ジンジャー、ミモザ、ブラックペッパー
ミドル:ジャスミン、フランキンセンス、アンバー
ベース:ベチバー、シダーウッド、ファーバルサム、モス、パチョリ、サンダルウッド

光の筋のようなフレッシュさを期待すると少し違うのですが、レモンとジンジャーがスイートアンバーと共に香り始まります。結構な甘さがトップから感じられ、一瞬キャンディー風にも思えるのですが、香りはすぐにフランキンセンスへとつながっていきます。フランキンセンスの配合はたっぷりで、フランキンセンスが軸であることをしっかりと主張しています。その周りの香りたちが全てフランキンセンスを盛り立てるために配置されているのですから。甘さ、モス、ウッディノート、どれ一つとしてフランキンセンスを邪魔することなく、温かみを加えており、3種の中では一番オーソドックスなフランキンセンス系の香りと言えそうです。(27/10/2016)


■Voix humaine 8 (2016年)

人間の声というタイトルなのですが、人間にとって一番古い「香水」をイメージしたようです。

トップ:ベルガモット、カルダモン、エレミ
ミドル:ジャスミン、アンブレット、オレンジブロッサム
ベース:アンバー、レザー、フランキンセンス、モス、ムスク、バニラ

GuerlainのHabit Rougeのようなスイートパウダリーオリエンタルで始まります。これはかなり甘いぞ、と思っていると、香りは次第に、柔らかく甘いふわふわとしたムスクに包まれたフランキンセンスへと変化していきます。樹脂のワイルドさを軽減し、優しい声で包み込む子守歌のようなフランキンセンスとなっているのですが、このようなフランキンセンスのフレグランスは珍しいのではないでしょうか。とても良い夢を見られそうです。このラストノートは往年のフレグランスらしい形となっていますので、クラシカルな香りがお好きな方にも良さそうです。(27/10/2016)

 


 

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