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調香体験セミナーを開催したり、香料を販売していく中で、日々様々にご質問を頂くようになりました。香水というものが80、90年代に比べてグッと身近なものとなり、若い世代の皆さまがどんどん消費する時代となったことで、逆に今まで使うことのなかった大人の世代へも文化が浸透することとなりました。柔軟剤をはじめとしたファブリック市場は空前のブームとなっていますが、香水を愛用している人たちは、そういったもので香り付けするのではなく、やはり香水を使用したいというのが本音のようです。

癒しブームからナチュラル志向を経て、どなたでも簡単にエッセンシャルオイル(精油やアブソリュート)を手にすることが出来るようになりました。香料1本では何もなさなかったものたちが、いくつかをブレンドすることによって形を変える、というのが楽しさの真骨頂ですよね。このコンテンツでは、アロマセラピーと香水の違いやブレンド精油ではなく香水としてまとめられるよう、香水を手作りする過程を簡単にご紹介していきたいと思います。

 

 

 

香水を手作りする前に、精油を扱うことになれている皆さんが1番間違えやすい注意事項を抑えておきましょう。

天然香料と合成香料、安全なのはどちらだと思いますか?

各所で頻繁に記載していますので、ご存知の方はとっくの昔に気づいている事柄だと思いますが、答えは合成香料です。とても皮肉なことですが、害虫や自然から身を守るために精油分を蓄えている植物たちのエキスを濃縮したエッセンシャルオイルというのは、容量、用法を遵守しないと毒になりうる可能性を秘めています。毒にも薬にもなるのが自然の力。自然のもの・・・例えば卵だって小麦だってメロンだってマンゴーだってアレルギーがありますよね。食べても平気な唐辛子だって、皮膚に擦りつけたら炎症を起こしてしまうでしょう。自然のものは、必ずしも安全ではありません。

ところが、合成香料というのはフレーバー(食品香料)としても使用されるものも多く、例えば間違って少量が口に入ってしまったとしても安全だと確認されたものしか許認可されないのです。もちろん許可がなければ製造だって出来ませんよね。ですから、皮肉なことに合成香料の方が安全性は高いのです。

また、天然香料を使用することは必ずしもエコでもありませんし、地球に優しいわけでもありません。乱獲、伐採によって絶滅を危惧されている植物もありますし、作付け面積を広げるために森林伐採している国だってあります。植物保護のために規制をしている国だってあるんですよ。「100%天然由来だから身体に優しい」というのは単純に消費者に買ってもらうための売り文句であり、事実ではありません。そうした売り手の文句に惑わされないよう、正しい知識をもってはじめましょう。

 

 

 

香水を作ってみようと思った皆さま、まずは道具を揃えなくてはなりませんよね。調香に必要なのは、以下のものたち。

まずは香料。天然香料と合成香料を購入しましょう。これだけは欲しい、という精油は後ほどご紹介。
試香紙を用意しましょう。作った香り、香料たちを全て肌で試していては腕がいくらあっても足りません。 さほど正確でなくともも構わない、という場合はシリンダーとビーカーで十分。ただ、しっかり正確に作りたい、と言う方は電子スケールを使用しましょう。

精油の中にはプラスティックを溶かしてしまうものもありますので、ガラス製であることが大切です。しかし、プラスティックしかない場合は必ず、エタノールなどの溶剤を先にビーカーに入れ、最後に精油を加えるようにしましょう。

通常、シリンダーというのは最小でも1mlからしかメモリがありませんので、どうしてもごく少量というのは電子スケールを利用して重さで計算するか、正確ではありませんが、滴数で計算することとなります。
香料を入れるにはスポイトが必須。小さなスポイトは残留が少ないため、香料を無駄にすることなく使えて便利。 0.01gが計れる電子スケールを用意しましょう。右のジュエリー用のものはとても安く購入が出来ますよ。

 

 

■エタノールを希釈する

香水というのは、変性アルコールと香料と水で出来ています。変性アルコールというのは、工業用に発売されている苦味のついた(飲めないようにした)アルコールのことなのですが、手作りされる場合は無水エタノールを使用しましょう。薬局で発売している無水エタノールと精製水を用意します。

10%のオー・ド・トワレを100g作る場合、10gの香料と、95%のエタノールを90gを混ぜます。しかし、この際、95%のエタノール90gというのが分かりづらい方は、最初から95%のエタノールを作っておくことをおススメします。それはとても簡単なこと。無水エタノール95gに精製水5gを足すだけ。これで95%のエタノール100gが完成します。精製水を僅かながらでも入れるのは、エタノールのツンとした香りたちを和らげる効果があるから。精製水の濃度が高いと白濁しますし、香料が分離してしまうので、香水を作られるのであれば、エタノールの含有量は85〜95%くらいにしましょう。

 

後は、ノートと計算機、そして香料を希釈するためのスポイト容器(ドロッパーボトル)くらいでしょうか。あ、完成品を入れるアトマイザーやボトルも必要ですよね。

 

 

 

■香水はオンスで表記されます

とても勘違いされやすいのですが、香水の単位は容積ではなく重さです。香水はオンスという単位を用いていますが、オンスとは重さの単位であることをご存知でしょうか? 1オンスは約30mlとして計算しますが、正確には約28.35gです。何故こんな違いが出てきてしまうのかというと、香水の基材であるエタノールと水の重さが違うからなのです。

右の画像をご覧下さい。精製水と無水エタノールを分かりやすく色づけしていますが、同じ10gです。同じ重さなのにこんなに容積が違う!! とびっくりされると思いますが、ブルーが精製水で、イエローがエタノールなのです。エタノールの方が軽いんですよね。ですから、1オンス(約28.35g)のエタノールは容積にすると30mlに近くなるのです。

重さで計る上での利点はまだあります。べっとりと粘度の高いベンゾインの1滴と、さらさらとしたベルガモットの1滴というのは、同じ1滴ながら比重が違います。また、香料というのは全て液体だというわけではありません。固体であったり粉末の香料というのもとても多いんですよ。ですから、重さで計算するというのが一般的なのです。

でも、全てを重さで計算するのは面倒だ、という方は、多少の誤差は生まれますが、容積で計算しましょう。

 

 

 

精油を扱っており、手作り香水を楽しまれたり、精油をブレンドして楽しんでいる皆さまが1番失敗しやすいのは原液で計算することにあります。精油というのはとても濃厚なエキスですので、希釈しないと良さはわかりません。また、調香というのは足し算しか出来ませんので、入れすぎた場合のリカバリーに、別の香料を大量投入せざるを得なかった・・・なんて経験もあることでしょう。その回避方法は、予め希釈して使う・・・ただこれだけです。

 

■香料は必ず希釈しましょう

スポイト付きのボトルを使用するのが望ましいのですが、香水の場合はオー・ド・トワレで10%、オー・ド・パルファムで15%、20%以上はパルファムだとお考え下さい。もちろん多少の前後はありますが、10%で希釈した香料を使用すればオー・ド・トワレにした時の香りのイメージがつかめます。その濃度で幾度か試作品を作ってみて完成品とするレシピが完成して初めて、原液でブレンドすれば良いのです。失敗作はもちろん原液の1/10ですし、何よりも香りを確認しやすくなります。香料の1つ1つは原液のイメージと希釈した際のイメージが全く異なるものが少なくありません。醤油を想像してみてください。そのままだと飲むことはできず顔をしかめてしまいますが、薄くすると出汁のような美味しさを感じることが出来るでしょう。香料というのは原液そのままで使うことはほとんどありません。最後にはなんらかの基材で希釈されて商品化されていることがほとんどであり、シャンプーやシャワージェルは1〜3%という濃度だったりするんですよ。

原液のままブレンドしていくのは最後の最後。それまでは失敗しても平気な濃度で試しましょう。

世界中のどの香料会社でも、使い捨てのスポイトを使用しています。ただ、スポイト内に残留してしまう香料がもったいないとお考えの方は、右のように爪楊枝を使っても良いでしょう。粘度の低い香料の場合は、つつつつつーっと、1滴と言わずダラダラと入ってしまうもの。きちんとした1滴を計算していく上ではこうした慎重な姿勢も大切です。もちろん電子スケールを使用する際でも同じことですよ。香料の比重によって1滴の重さが変わりますので、微量な調節はやはりスポイトの方が便利です。

 

 

 

香料が揃って全て希釈が出来たら、今度はムエットを使用して香りを記憶しましょう。この時に大切なのは必ず自身の言葉にしてメモをすることです。香りのイメージというのは三者三様で、違っていて普通なもの。でも、その素材自体のイメージ、香りの特徴を知らないと使いこなすことが出来ません。これは、食材にも通じる内容で、鍋やフライパンは揃ったけれど、野菜やスパイスの使い方、何に使うのか、どうしたら美味しいのか・・・等、その食材の特徴を知らないと料理することが出来ないでしょう。

特徴を捉えて記憶するには、必ず自身の言葉に置き換えて、記憶することが必須です。普通の生活をしていたら、大人も子どもも香りの表現は「くさい」と「いい匂い」の2つしかないでしょう。どのようにくさいのか、どのように良い香りなのか・・・と考えることがあまりないからなのですが、香りには必ず1つ修飾語をつけるつもりで記憶していくと、いろいろなカテゴリーに分かれ整理しながら記憶が出来るはずです。

また、香りを記憶すると同時にトップノート、ミドルノート、ベースノートのどこに使われる、どこに配置される香料なのかを、ムエットの残香性を確認しながら学びましょう。

香料がある程度頭に入ってきたら、今度は香水を作るテーマ作りです。

 

 

 

■何をつくるのか、きちんと決めてから作るのが成功の秘訣

調香していく上で大切なことは、テーマをしっかり作りこむことです。10人が同じ花を見ても、感じ方はそれぞれ違うでしょうから、別々の形となることももちろん当然の成り行きです。テーマというのは、何を作るのか、という大切な骨子。完成形がきちんとイメージできていてこそ、失敗が少なく済むわけですし、あれもこれも・・・と詰め込みすぎないよう注意も出来ます。

焼きソバを作ろうと思ってカレーライスになっちゃう人はいませんよね? 焼きソバを作ろうと思ったからこそ、初めて麺やソースが必要になるわけで、どんな野菜を入れようか・・・というところで初めて「選択する」という行為が埋まります。その完成形のイメージの中にカレーのルーや、デザートなどは登場しないはずです。

テーマを決めたら今度は調香です。いざ、調香!! となる前に、まずはレシピを決めましょう。使用する香料を選択し、その分量を決めていきます。
トップノート、ミドルノート、ベースノートの割合をテーマに沿って決め、そこに使用する香料を当てはめてみます。そして、いろいろと割合を変えながら調整してみるのです。通常、香水を作る場合は1,000を基準とするのですが、調香体験セミナーでは150を基準としています。そして、mlではなくまず、1滴、2滴とドロッパーで希釈した香料を滴下していくスタイルとしています。香料によって比重は違いますが、10%の希釈であればほぼエタノールの比重に近いということで、150滴でおおよそ3mlのオー・ド・トワレの試作品を作ることが出来ます。

 

香料名
1回目
2回目
3回目
4回目
完成
A
20
10
5
15
20
B
10
20
10
15
5
C
5
5
20
5
10
D
40
30
20
10
30
E
15
20
25
30
15
F
10
20
20
25
25
G
4
6
6
6
6
H
3
3
8
8
4
I
2
2
2
4
4
J
1
1
1
1
1
K
5
5
5
1
3
L
5
3
3
5
3
M
10
5
10
10
8
N
20
20
15
15
16
合計
150滴
150滴
150滴
150滴
150滴

 

これだけ試してみて、レシピが完成となりました。次は、その完成品レシピを元に、原液で調香していけば良いのです。
上記レシピを元に原液で調香すれば3mlの香料が完成しますので、10%でオー・ド・トワレ30ml、15%のオー・ド・パルファム20ml、20%のパルファム15mlにすることが出来るのです。

 

■大切なのは妄想力とセンス

どんな希少で素晴らしい絵の具が揃っていたとしても、上手な絵が描けるかどうかはその人の経験とセンスによりますよね。物作りに大切なのは妄想に近い想像力とセンスです。バラの花を見てバラとしか感じない方と、バラの花を通して貴婦人が見える人、真夜中のローズガーデンが浮かぶ人、花弁のウエーブから真っ赤なドレスが思い浮かぶ人だっているかもしれません。どれ1つ間違いなどなく、イメージは人それぞれです。どこまでイメージを作りこめるか、ストーリーを明確にして楽しめるか、というのが1つ、そしてそれをどこまで上手く表現することが出来るか、というのがもう1つ、2つのセンスで香りは出来上がります。

細かく表現しようとすればするほど、沢山の種類の香料が必要となってきますし、バランスも細かくなってきます。香料と香料の相性や使い方等は経験が全てだと思いますが、学ぶ書籍の方にあるような書籍を読んだり、調香体験セミナーなどのレシピを基にいろいろと試してみてください。

プロになろう、手に職を付けて調香師として活躍したい、というのでない限り、簡単に混ぜて楽しめるのが調香です。物作りを楽しむだけならば、それほどハードルは高くありません。ただ、1つ1つの素材は安くとも、種類が増えてしまうために結果としてお金がかかってしまう遊びなのです。それでも少しずつ増やしていけば、使い方も相性も自然に学べるはずです。とにかく、楽しく調香を楽しみましょう。

 

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