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Sampleレヴュー (Memento)

Filippoにとって縁深い場所を記憶(Memento)として香りにしたコレクションが2024年に発売となりました。最初の香りは全8種で、ボトルキャップには実寸大のFilippoの腕が模られました。何ともインパクトの強いコレクションですが、3本指の形はキリスト教の三位一体、つまり神、神の子(イエスキリスト)と聖霊を意味し、残った2本はキリストの神性と人性の2面性を意味しているとされます。十字を切るときはこの指の形にするわけで、絵画などにもよく見られる形ですが、もちろん彼にとってはなじみ深い、無意識の形なのでしょう。100mlのExtrait de Parfumが280ユーロで発売に。サンプルセットは78ユーロです。

 

 

また、それぞれの香りにはテーマとなった場所があるわけで、それぞれを地図に落とすとこのようになります。Sacristie des Arbre(森の聖具室)はFilippoの住む町にしてあります。

 

 

1つだけParisのノートルダムがありますが、その他は全てイタリアにあります。

 

 

ローマから入り、ヴァチカンのサンピエトロ大聖堂を起点とし、電車でTerniまで行き、そこからバスでRosa Fiorita。次はAssisi、海沿いに出てAnconaに宿泊してLoretoのSanta Casaを見て、彼の故郷を見ながら北上し、ヴェネツィアでサンマルコ寺院、そこから電車でミラノに向かいドゥオモ。最後はミラノからパリに向かい、ノートルダムで終わるという香りの聖地巡礼のような旅も出来ます。(08/04/2024)

 

 

■Basilica di Assisi (2024年)

アッシジのバジリカをテーマとした香り。アッシジはフランシスコ会の祖である聖フランチェスコ出生の地であり、キリスト教の巡礼地の1つとなっています。サン・フランチェスコ大聖堂の聖具室の引き出しの香りだそう。最寄り駅からタクシーで丘を上った先にある大聖堂は、とてもゴシックで美しいのですが、一度大地震で被害を受け、再建されています。

 

 

トップ:レモン、ベルガモット、ペティグレン、フランキンセンス
ミドル:ホワイトローズ、ナッツ、パチョリ、ラブダナム
ベース:トンカビーン、ベンゾイン、スティラックス、アンバー

トップでガルバナムのグリーンが弾けるのに、香りはそこからとてもオリエンタルウッディなトーンに歪んでいく。大聖堂の前には芝生があり、ガーデンもあったような記憶があるのですが、ローズがアクセントになっています。フランキンセンスらしさは強くはなく、ナッツの香ばしさもグルマンというほどではないのですが、肌の上ではフロリエンタルがクラシカルな佇まいで広がっています。とても静謐な香り。後半はパチョリが前に出てきて、古き良き香りとなって落ち着きます。昔のフォーミュラだよ、と言われたらそうなのかと納得してしまいそうな香りです。(12/04/2024)


■Chiesa d'Oro (2024年)

黄金の教会と名付けられたのは、ヴェネツィアのサンマルコ寺院。東洋からヴェネツィアにシルクロードを通ってもたらされたものは、スパイス。だからスパイスなしでは成り立たない。二度訪れたことがあるサンマルコ寺院ですが、年々水位が上昇し、床も波打ち、美しいモザイクが歪んでしまっている様子は環境破壊の恐ろしさを感じさせます。

 

 

トップ:ベルガモット
ミドル:ダマスクローズ、ジャスミン、カーネーション
ベース:バニラ、トンカビーン、アンバー、ムスク

カーネーションにはクローヴが欠かせず、シナモン調のフローラルノートなどを重ねて表現していくのですが、こちらもジャスミンやローズにスパイスを重ねてカーネーションに仕立てています。そのベースにはオリエンタルノートがあり、コンスタンチノープルが全盛期だった頃のオスマントルコを感じさせる、スパイシーなフロリエンタルに。全く流行を意識していない昔から愛されているであろう香りが、保守的なイタリアを感じさせます。肌に残るラストノートの中には仄かにアニマリックだったりもして。(12/04/2024)


■Domm (2024年)

1386年に建てられたミラノの大聖堂をテーマとした香り。聖具室には家具がたくさんあり、神聖な儀式に使用される司祭の衣類が収納され、今でも現役で活躍しているそう。

 

 

トップ:ベルガモット、シダーウッド、ブラックペッパー
ミドル:ジャスミン、チョコレート
ベース:パチョリ、スティラックス、ムスク

スパイスとウッディ強めのチョコレートという印象です。チョコレートがグルマンではなくウッディノートに包まれ、スパイスと共に広がっていくのです。ジャスミンも強くはなく華やかさはありません。チョコレートパチョリのオリエンタルはルタンスやヴァンクリーフなども手がけていますが、全く違うテイストで、やはりクラシカルなトーンが強く、少しスモーキーなテイストも見え隠れしています。このスモーキーさはムエットでは感じ取れなかったので、是非肌に乗せてお試しを。(11/04/2024)

 

 

■Notre Dame Notte di Natale (2024年)

これは、Filippoが大聖堂の聖具室を訪れた時の記憶の香り。教会暦(典礼年)に合わせて、いろいろなお香を用意して焚くのだそう。季節やシーンに応じて変えているんですね。その中のクリスマスの香り。

 

 

トップ:トンカビーン、フランキンセンス、アンバー
ミドル:オレンジブロッサム、チョコレート、アトラスシダーウッド
ベース:ヴァージニアンシダーウッド

クリスマスと言えばオレンジポマンダーやチョコレートの印象がありますが、オレンジではなくオレンジブロッサムにたっぷりのウッディノートを重ね、グルマンではない少しコーヒーっぽさを感じるようなオリエンタルとなっています。ムエットではスパイシーなグルマンに感じられたのですが、肌の上では印象が随分と変わり、後半は少しスモーキーなハニーノートがメインとなり、ハニーウッディとなって落ち着きます。(10/04/2024)


■Pont. Max. (2024年)

ヴァチカンのサンピエトロ大聖堂の香り。タイトルは橋を作る人という意味で、5世紀から続いている司祭職の最高位のこと。この3月も出かけたのですが、Filippoのローマ店はヴァチカンのすぐ近くにあります。彼にとっては切っても切れないつながりの場所ですよね。

 

 

トップ:ヴァージニアンシダーウッド
ミドル:マリンノート、ジャスミン
ベース:ベンゾイン、フランキンセンス、アンバー

マリンノートとあるだけで構えてしまう方もいるかと思いますが、スモーキーなフランキンセンスにジャスミンをアクセントとしたオリエンタルな香りに、トップだけ少しマリンノートが香るというもの。ウッディノートも力強く存在感を放っており、8種の香りの中では一番今までの彼らしいテイストなのではないかと思うと、一番日常的に香っていたフランキンセンスを主体にし、献花をジャスミンとし、空に立ち上るフレッシュな空気感をマリンにしたのかと思うほど。安心して香っていられる彼らしい1本です。(10/04/2024)


■Rosa Fiorita (2024年)

ウンブリア州のカッシア(という小さな町)にある聖リタの大聖堂をテーマとした香り。1457年、リタがカッシアの修道院で病に侵されていた時、彼女はいとこに地元のローズを持ってきてくれないかと頼まれました。彼女の願いを聞き入れた神は、冬に雪の中で咲くローズを用意したのだそう。毎年5月にはイベントが開催され、その終わりには人々がアカイバラを空に掲げて祝うのだそう。このように

 

 

トップ:ゼラニウム
ミドル:ローズドゥメイ、スズラン、アイリス
ベース:ダマスクローズabs、ハニー

ムエットで香った時から、一番印象的で、一番高価な香りに感じられたのは、少なからずダマスクローズのabsが感じられたからでした。彼のラインの中にフローラルらしいフローラルはライラックのLascia ch’io piangaしかありません。それに続く、ワイルドなローズ。大聖堂の前には地面にローズが描かれ、その場所にとってローズがとても大切なものであることが感じられます。香りもフランキンセンスにこだわらず、美しいローズを捧げるがためにまとめられたような芳香で、余計なトーンは1つもありません。アイリスやスズランはローズをまとめるあめの部品であり、ローズのニュアンスを柔らかくすめためだけのものであり、存在感はありません。(09/04/2024)


■Sacristie des Arbres (2024年)

森は神秘に満ちた場所であり、静けさと美しさはそれだけで物語のよう。耳を傾けて森の話を聞こう。

トップ:パインウッド、ヴァージニアンシダーウッド、フランキンセンス、ミント
ミドル:ダマスクローズ、ガイヤックウッド
ベース:バニラ、ベチバー、ベンゾイン、アンブレット、アンバー

彼が生まれ育った環境の中で、森がとても近しいものだったのでしょう。森の香りというのは、実際には苔むした冷たく湿気た空気と、樹木の葉から放出されるフィトンチッドなどの香りであり、おが屑のようなウッディノートは樹木を切らないかぎりしていないのですが、彼はとてもユニークで、ハニーローズにスモーキーなウッディノートを組み合わせたフロリエンタルとなりました。しかも、トップノートにはピネン類の多いパインウッド(松)が香るのです。ピネン類のアロマティックノートがアクセントとなり、遺跡に蔦や藤など蔓性植物が絡んで森の奥に隠されている・・・そんな風景が思い浮かぶよう。8種の中ではフレッシュではありませんが、一番アロマティックな香りです。(09/04/2024)


■Santa Casa (2024年)

聖なる家はロレート大聖堂のキャンドルと煙の香り。ロレート大聖堂は少しアクセスが悪いため観光客にはなかなか行きづらい場所にあるのですが、カトリックにとっては大切な巡礼地の一つであり、ナザレから天使たちによって移築された聖母マリアが生まれた(受胎告知の)洞窟の壁が祭壇に祭られています。

 


from Wiki

 

トップ:オレンジ、ベルガモット、フランキンセンス
ミドル:マリンノート、タバコ、ガリカローズ
ベース:バニラ、サンダルウッド、アンブレット、ベンゾイン、アンバー、ムスク

ローズをアクセントとしたフランキンセンスタバコ。スモーキーなトーンに微かなローズがアクセントとなり、ゆっくり静かに広がっていきます。マリンノートは強くはなく、存在感はある香りではあるものの、とても動きのない、つまりは騒々しくないオリエンタルで、押しつけがましいアンバーグリスも、主張の強いスパイスもなく、次第にベンゾインの効いたアンバーオリエンタルへと形を変えて落ち着きます。少しずつ変化していく騙し絵を見ているような香りで、8種の中では一番アンバーノートの効いた香り。(08/04/2024)

 

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