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Duo des Fleurs / デュオ・デ・フルール


<香 調> フローラルムスク
<仕 様> ユニセックス
<容 量> 50ml
<濃 度> EDP

トップ
ローズドゥメイ、サンバックジャスミンabs、ダヴァナ、ダチュラリーフ
ミドル
ローズオットー、ジャスミン、ローズペタル、ジャスミンバッド
ラスト
サンダルウッド、ムスク、アッターミッティ



 

Leo DelibesによるオペラLakmeの中の「花の二重唱(The Flower Duet)をタイトルとした香り。ロマンティックな小説を残したフランス海軍士官のPierre Lotiの自叙伝的小説「ロティの結婚」を原作としたオペラですから、もちろん内容もロマンティックなものに。

19世紀後半、イギリス統治下のインドが舞台です。どの時代も描かれた恋愛、それこそマダムバタフライにも通じる悲哀がテーマで、イギリス人将校のジェラルドとバラモン教徒の僧侶の娘ラクメのストーリーです。

 

 

バラモン教はヒンドゥー教の源流と言われるインド最古の宗教の一つで、イギリス人が他の宗教と区別するために名付けた呼称だとされています。そこからもわかるように、東インド会社によるインドの植民地支配の頃からイギリスはそれまで統一されていなかったインドの公用語を英語に切り替えていくのですが、もちろんそこから反英闘争が起こります。

物語の舞台はそうしたバラモン教が弾圧された背景の中、僧侶の娘ラクメが宗教を救う役割として、バラモン教寺院の敷地内で開催された祭りへ侍女のマリカと出かける第一幕の場面で「花の二重唱」が歌われます。

 

<ラクメ>
ジャスミンとローズが集まったアーチ
花の岸辺、涼しい朝が私たちを呼ぶ。
さぁ、行きましょう。
さざめく水面をゆっくりと漕ぎながらたどり着く岸辺には、鳥たちが歌う。
ジャスミンのアーチが私たちを呼んでいる。

<マリカ>
ジャスミンとローズが集まったアーチの下で、
花咲く岸辺はのどかな朝を迎える。
一緒に下りていきましょう。
そうっと滑るように素敵な流れに乗って
さざめく水面をゆったりと漕ぎながら
行きましょう、泉が眠り鳥たちが歌う岸辺へ。
ジャスミンとローズが集まったアーチの下へ
下りていきましょう。

(翻訳引用元 : こちらこちら)

 

ラクメとマリカは、ジャスミンとローズが咲く小川を小舟で下り、蓮の花を摘みに出かけたのです。

その後、バラモン教寺院の敷地内で歌っているところに、興味本位で立ち入ったイギリス人将校のジェラルドと友人たち。ジェラルドはラクメに一目ぼれするも、大切な宗教の聖なる寺院にイギリス人たちが立ち入ったことに、父である老僧侶ニラカンタが激怒し、2人の恋は悲哀へと導かれていくことになるのです。

 

 

当然のように、タイトルの「花の二重唱」の花摘み部分から香りが生まれたのだと思いました。ストーリーの中でも特に華やかで美しい場面なのですから。しかし、ボックスの中にあるカードには逃避行するラクメとジェラルドが描かれていたのです。

物語の後半、老僧侶ニラカンタの言いつけにより、ラクメは町の広場のマーケットで美しい歌を披露します。その歌に惹きつけられてジェラルドが登場するのです。

 

 

ニラカンタに見つかったジェラルドは、ニラカンタの手下に刺され、ラクメの侍女に連れられて森へと逃げていきます。第三幕では、森の中でラクメに癒されたジェラルドの場面が描かれるのですが、帰国しなくてはならない軍人の使命を思い出すのです。願いが叶わないと知ったラクメは、ダチュラの葉を噛み、自害することで永遠にジェラルドの心の中に生きることを選びます。

 

 

もちろん使用された花はジャスミンとローズで、ジャスミンはインドらしくサンバックジャスミンとジャスミンのダブル。そしてインドと言えば、土を蒸留して得られるというアッターミッティがベースに配されました。オペラの中にそうしたシーンがあるのかどうかわかりませんが、ジェラルドはインドに来てアッターをたくさん使用したと、オフィシャルのストーリーには書かれています。

そしてもう1つ、インドと言えば誰もが想像するサンダルウッド。ダチュラが花ではなくダチュラリーフとなっているのは、自害のシーンが葉だからです。全草が毒草であるダチュラは、毒をテーマとしたブランドのラインで度々登場しますが、こうした脇役のアクセントは珍しいのではないでしょうか。メインではないけれど、組み込まれたことで香水が物語となり完結するのです。

 

 

逃避行するラクメとジェラルドは壮大なイラストとなって、ボックスの装飾となりました。この香水は花の二重唱のシーンだけでなく、ラクメの白い肌(ジャスミン)、刺されて流れたジェラルドの血(ローズ)を合わせ、2人の香りとなっているのです。

 

 

香りは、物語のようにジャスミンとローズを軸として広がります。まさに花の二重唱です。ジャスミンは2種類が使用されていますが、ローズよりもずっとサンバックジャスミンが強く前に出てきます。奥まったところにそっと咲いているのがローズ、手前にあるのがジャスミンなんですね。香りはサンバックジャスミンとローズのコンビネーションで始まり、微かなグリーンノートを伴い、時間と共にそこに土っぽいアーシーな香りが感じられるようになります。それがミッティです。通常土っぽいニュアンスはパチョリやナガルモタなどで表現されることが多いのですが、強すぎると美しいフローラルの邪魔をしてしまいます。だから、そっと支えるサンダルウッドに合う、ミッティを選んだのでしょう。ミッティとはインドで作られている大地の香りのアッターオイルで、乾季の後、最初の雨が降った後に土を固めて焼き、その殺菌した土を蒸留し、蒸気をサンダルウッドオイルにくぐらせて香りを移したものです。このミッティについてはこちらをご参照下さい。

 

 

美しいフローラルを支える大地の香り、ミッティ。インドならばチュベローズを合わせた香りやスパイスを多用した香りも多いのですが、この香りは余計な部分をそぎ落とし、美しいままに仕上げた香りとなっています。持続も長くはないのですが、儚げに消えていくのもストーリーには合っているのではないでしょうか。

(26/08/2019)

 

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