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■5つの土地から生まれた「Profumi delle Cinque Terre」

13年前の1997年に世界遺産登録されたイタリアの5つの土地、「Cinque Terre」。11世紀に作られた海岸沿いの5つの村は、陸路と運路を使わないとたどり着くことが出来ず、取り残された土地となっています。孤立したこの村々は色とりどりの家が崖に張り付くように建てられており、とても美しい町並みを形成しています。Riomaggiore、Manarola、Corniglia、Vernazza、Monterossoという5つの村を結ぶのはバスと徒歩とフェリー。それも全ての場所が繋がっているわけではありません。RiomaggioreからManarolaへ向かう海沿いの道はLovers Laneと呼ばれていて、恋人たちの人気観光スポットとなっていたりします。まだまだ日本国内ではマイナーな観光地ですが、数年前まではフランスのモンサンミッシェルも似たような感じだったことを思い出すと、この5つの土地も近い将来もっともっと人気の土地となりそうです。Cinque Terreは切立った崖と小さな入り江の街。何世紀にも渡って崖を開墾し、石垣を築いて作った段々畑でわずかな葡萄栽培を行い、その名もCinque Terreというワインが特産です。あまりに過酷な土地のため、葡萄の実りは多くなく、おかげで濃縮された葡萄が実るのだそうで、とても甘いデザートワインが生まれるのです。石垣は海風によって風化してしまうため、今でも地元の方々はせっせと毎日修復をしているのだとか。

そんな5つの土地から2009年、4つの香水が生まれました。Profumi delle Cinque Terreです。もともとは更に遡ること2年前、Pier Carlo Pinottiの営む薬局の100周年を祝う品として自身の住んでいる街の香りを作ろうということで手がけられたものだそうです。だけど、香りに関しては素人だったため、友人の調香師に依頼をすることになりました。それがProfumi di Pantelleriaを手がけたMaurizio Cerizza氏だったのです。彼の調香により5つの土地の香りが4種類生まれたのです。当初はお土産ものとして現地でわずかに売られていただけだったようです。昨年の9月、Firenzeで開催されましたPitti Pragranzaというニッキアフレグランスの展示会でようやく世界に向けてお披露目された香り。

ボトルはラルチザンを彷彿させる8角形ですが、ひとつひとつの面が曲線を描いており、まるで教会の天蓋のようです。底面にテーマカラーが彩られていることで、ボトル全体がグラデーションのように見えるという手法を用いた素敵なボトル。

EDP、100mlの1サイズのみで、まだ世界的には発売されていません。流通はまだとってもとっても狭い商品です。その香りをいち早くproficeにご紹介したいと思います。(一足お先にSNSの方ではご希望の皆さん全てに香りをプレゼントさせて頂きました♪)

1、Agave

Agaveとはリュウゼツランのことでボトルカラーはイエロー。この街の崖にはリュウゼツランが自生しています。輝く海と果てなく広がる空。岩の隙間に生えるリュウゼツランが空と海に映える。

トップ:ラム、ルバーブ、ミント
ミドル:オールスパイス、エレミ、サフラン
ベース:オーク、ラブダナム、ムスク

香りはリュウゼツランと全く関係のないようなベチバーです。あれれ?と思うくらいにベチバーの香りで始まるのですが、次第にベチバー自身の持つ香ばしいウッディ香が和らいでとても穏やかなウッディ香となって落ち着きます。ラム酒やミント、ルバーブも全くわからず、ラブダナムも存在感がありません。強いて言えばこのほんのりとした甘さはサフランだな、ということだけが見えてきます。特別主張の強い個性的な香りではないのですが、ラバーズレーンの途中で、街と海を見下しながら海風を感じる・・・そんなシーンにはフィットしそうな「穏やかさ」を感じられる香り。

2、Tentazione di fico

イチジクの誘惑と名づけられた香りでボトルはグリーン。イチジクの木陰から覗く空と海・・・。それはホッとする空間を生み出す香りたちの吹き抜ける場所。

トップ:フィグリーブス、バジル、カラントリーブス
ミドル:ジャスミン、クラリセージ
ベース:シダーウッド、サンダルウッド、トンカビーン、ムスク

ガルバナムの青さではなくて、フィグを中心としたグリーンリーフ系の香りです。シトラスノートとグリーンリーフが爽やかに香り、ベースノートはあまり出てきませんね。一応香料としてはジャスミンとローズもあるようなのですが、基本的にフィグリーフの香りが強いです。果実のようなこってりとしたココナッツ系の甘さはとてみ控えめで、飽くまでもハーバルなアロマティック香として楽しめるグリーンな香り。EDPなのですが香りはとても軽やかでコロン感覚です。

3、Respiro di Risacca

打ち寄せる波の呼吸と名づけられた香りでボトルはブルー。海とは切っても切れない海辺の町ならではのマリンアクアノート。

トップ:ユーカリ、アクアノート
ミドル:ゼラニウム、ジャスミン、ホワイトタイム
ベース:ホワイトムスク、パチョリ、トンカビーン

思いっきりアクアノートが弾けます。でも、瞬間的にあれれ?ミントがあるの?と思わせてくれるさっぱり感が顔を出すのです。これ、ユーカリなんですね。ジャスミンは強くないのですが、タイムとゼラニウムはわかります。タイムとゼラニウムに仄かな(アニス風の)甘さを加え、それを包むようにアクアノートが香っている、という感じ。強いアクアノートはあまり好きではないのですが、これはユーカリのカンファー香がスースーして鼻通りが良くなるような香りで体温を下げてくれそうです。塩っぽい香りを感じるのも美しい地中海にはぴったりです。


4、Fiordaliso di Porto Venere

ポルトヴェネーレ(ヴィーナス港)のヤグルマギクと名づけられた香りでボトルカラーはピンク。このポルトヴェネーレにだけ咲く固有種のヤグルマギクがあるのだそうです。その花の色がボトルカラーになったもの。この花は見たところヤグルマギクというよりもアザミに近いような気がします。

トップ:ヴァイオレットリーブス、ガルバナム
ミドル:ローズ、カロカロンデ、ピンクペッパー
ベース:ベチバー、ムスク、アンブレットシード

この4種の中では1番フローラルなのですが、華やかなフローラルではなくて青さを持ったとても自然の中のフローラルです。ピンクペッパーとヴァイオレットリーフも効いていて、とてもユニセックスな香りになっています。全くセクシーな華やかフローラルではありません。僕はカロカロンデの香りがわからないのですが、ローズ香は少なめです。明確なマリンノートでないにしても、どこかしら涼しげなアクアノートを感じるすっきりとしたグリーンフローラル。早春の草原のようにも感じられます。

4つの香りはどれも軽やかで瑞々しく、屋内というよりも俄然、屋外が似合う香りたちです。海風を感じながら午後のひと時を散歩する、そんな空間を切り取ったような香りたち。クラシカルなテイストは全くないのですが、過剰な華美さや個性的な部分が出ておらず、ハーブをメインにアクアノートテイストでまとめている辺りがイタリアらしいと言えそうです。大切にしたのは5つの土地の「空気感」なのですね。

(19/02/2010)

 

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