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様々なアンバー

アンバーとは一体何なのか。琥珀のように言われることもあれば、アンバーグリス(下画像)を指すという意見もあります。もともと、琥珀というものの精油は存在しません。何故存在しないのかというと、琥珀は化石化した樹脂の総称であり、その元になっている樹木が特定が出来ないのです。樹脂から香料は採取されます。フランキンセンスやミルラが有名ですね。同じ手法をとれば、採取出来ないことはないはずです。もともと薫香として琥珀(になる前のコパルと言われる状態)は瞑想の香りとして使われてきました。5000年の歴史があるインドのアーユルヴェーダでは琥珀のアンバーの香りをオイルにして使用していたそうです。

一方アンバーグリスはというと、マッコウクジラの結石です。クジラが食べたタコやイカの硬い嘴などが消化されずに結石したもので、中国では漢方として使われてたりもします。捕鯨が禁止された今、管理捕鯨の分でわずかな量が採取されるのみだと言われています。アンバーグリスの香りは合成だとFirmenich社のFixateur 505、Henckel社のAmbroxan、IFF社のGrisalvaなどがあります。中には今でも僅かながら純粋なチンキを使用しているブランドも存在します。

そこで、香水のアンバーは何を意味しているのでしょうか。

もともとのアンバーはアンバーグリスを模倣した香りであったが、アンバーグリスの香りを作り出すのに樹木の樹脂を使用していたため、「アンバー」が「琥珀」を模したものなのか、「アンバーグリス」を模したものなのかわからなくなってしまった。

アンバーという言葉の1人歩きですね。

香水をいろいろと香っていると、アンバーと名のつく香りがいくつかに分類されることがわかります。

甘さと深みを持った樹脂系のウッディノート、アニマルノートを含んだもの、インセンス系のもの、アンブレットシードを使用した植物性のもの、甘い琥珀色のイメージのもの・・・

もともとアンバーグリスの模倣しか存在しなかったはずのアンバーですが、現在ではいろいろな「タイプ」の香りが存在しており、アンバーグリスそのものの香りとは全くかけ離れてしまっているものが多くあります。アンバーグリスそのものはオリエンタルなアニマルノートですが、全くウッディノートではないのです。でも、ウッディ系のアンバーノートはとても多くあるのです。

厳密に言えば、アンバー系は3種に分けられます。

1、一般的にアンバー(甘い樹脂の香り)。
2、アンバーグリスの合成香料(少しドライで固そうな鉱物っぽいアンバーノート)
3、実物のアンバーグリス

2番は合成香料の香りそのものを知らないとわかりにくいですし、3番はなかなか香る機会がありませんよね。市販されている香水の中には、さらにアンバーグリスの香りとウッディノートを足したようなアンバーウッディノートと呼ばれる香料たちがたくさん使われています。それらもなかなか個人では香る機会がないですから、なかなか分かりづらいのです。


アンバーの比較
1、Eden BotanicalsのAmber Essence Oil
強い樹脂香を持ったパフュームオイルで、ラブダナムが効いています。渋さ、重さ、艶やかさを感じる香り。

2、Eden BotanicalsのAmber Royale
上のものに比べて、オウド(沈香)を使用している分ウッディが強くなっている香り。

3、Eden BotanicalsのAmber Rose
ローズゼラニウムの配合率はそれほど高くないようなのに、ゼラニウムっぽさが出ているワイルドなアンバー系ローズの香り。

4、Palazzo VecchioのAmber Gris
典型的な動物香で、強く動物香が出ています。アンバーグリスそのものではなく、シベットを使って動物香を出している可能性はありますが、1つの指針となる香りです。

5、Palazzo VecchioのAmber del Nepal
樹脂系のアンバーとしてのクセを丸めて押さえ、とても使いやすい香りに仕上げた香り。それでもカジュアル感はなくて、艶やかさを持っています。バランスの良い香り。

6、Palazzo VecchioのMuschio e Ambra
ホワイトムスクが強く出ていて、すっきりとした香りを持ったアンバー。香りの中にアヘンチンキが組み込まれています。

7、Patykaの02-Amber
琥珀でもなく、アンバーグリスでもなく、「琥珀色」をイメージしたのではないかと思う香りで、バニラとシトラスですね。

8、Il ProfvmoのAmbre d'Or
比較的カジュアルっぽくまとめられたシンプルな香りで、印象としては甘い樹脂系です。松脂も入っているのですが、それほど強くは感じません。

9、HermesのAmbre Narguile
強い甘さがある香ばしい香りで、それほどスモーキーさとアンバーの樹脂っぽさは感じないのですが、ムエットで甘さが出ていない状態ではスモーキーな樹脂的な感じを受けます。

10、Nez A NezのAmbre a Sade
一番変わった系統の香りで、ベリー系のジューシーフルーツが強く出ています。ラストノートになると、艶やかさを持ったアンバーが顔を出してきます。

11、CashanのAmbra
どちらかというとインセンス系のアンバー。トップとラストノートには樹脂系のアンバーの香りがどっしりと香るのですが、次第にいろいろなものが見えてきて、ミドル以降はベチバーとタバコとアンバーという印象の香りになります。

12、L'OccitaneのAmbre
とてもカジュアルで使いやすいアンバーなのですが、ラストノートはインセンス系になります。甘い樹脂香としての艶やかさはなくて、使いやすいライト感があります。

13、Santa Maria NovellaのAmbra
パウダリーさを持ったアンバーで樹脂というよりはインセンス系です。一応フィレンツェの本店では「琥珀」と言われたアンバーで、動物香は使用していません。

14、ReneeのAmber
典型的な甘さを持ったアンバーで、強い樹脂的な香りはありません。合成香料っぽい香りがベースにあり、独特のクセが残ります。

15、EstebanのAmbre
一般的に思われていそうな典型的アンバーで、甘い樹脂香です。トップにシトラスがあり、使いやすいアンバーになっています。トワレ以外の製品は調香が少し違いますが、日本でも取り扱いしていますよ。

16、Attar BazaarのPersian Amber

強い甘さと樹脂香を持った香りで、濃厚さは最強です。1滴で延々と香る粘り気も独特です。

17、Attar BazaarのTunisian Amber
ペルシアンアンバーに比べるとさらっとした感じのあるアンバーで、甘さがペルシアンアンバーに比べて少ないです。でも、しっかりと樹脂系のアンバーな香り。

18、Bath & Body WorksのSensual Amber
アンバーっぽさはあまり感じない甘いウッディ系の香り。とてもカジュアルで気兼ねなく使える香り。

19、Parfum d'EmpireのAmbre Russe
独特な香りで、甘さが強く出ています。ハチミツっぽくもありますが、スパイスも効いています。この香りの中のアンバーは動物的で、強いクセを感じます。

20、Perfumers WorkshopのTea Rose Amber
トップからミドルに掛けてインセンスっぽさを感じるアンバーです。甘さとかティーローズ系の香りは強くなくて、インセンスっぽさが強いですね。ラストノートは落ち着いてグリーン系のウッディが残っています。

21、ReminiscenceのAmbre
パウダリーさを持ったインセンス系のアンバーで、樹脂っぽさはあまり強くありません。パウダリーなウッディムスク系という印象です。

22、Serge LutensのAmbre Sultan
独特な香りで、一瞬動物っぽい香りを感じますが、アンバーが重くなりすぎないようにハーブが効いています。類似品が見当たらないあたりがルタンスらしいです。

23、Maitre Parfumeur et GantierのAmbre Precieux
強い樹脂香を持った非常に男性的な香りで、ラストノートはパウダリーなウッディになります。典型的アンバー系ウッディと言えるかもしれません。

24、Marc JacobsのSplash Amber
コロン感覚で使えるような後を引かないアンバーで、カジュアルな軽さを持っています。髪に付けても驚くほどは持続しないので就寝時にぴったりな感じがします。

25、LothantiqueのFleurs d'Ambre
うーん、これはそれほどアンバーを感じませんね。シトラスフルーツとホワイトフローラルがメインな感じです。

26、Ave LuxeのAmbra Tibet
クリーミーさがあって、とっても使いやすいアンバーの香り。試しているのがパフュームオイルのタイプなので、肌に馴染むように広がっていきます。動物香もなく、落ち着いたアンバーです。

27、Tom FordのAmber Absolute
こちらも典型的な樹脂系のアンバーで、甘さ、渋さ、ウッディ、樹脂という香りをそろえています。ただ、インセンスっぽさを感じるかというとそうではなくて、まとまりのあるアンバーです。Attar Bazaar等に比べると洗練された感じがするから不思議です。

28、JalaineのAmber
どうも価格が高いわりにはどっしりと合成香料を使っているような感じがします。香り自体は樹脂系のムスクの香りなのですが、時間とともにムスクがどんどん強くなっていきます。

29、CreedのAmbre Canelle
アンバーとシナモンの組み合わせなのですが、アンバーグリスっぽいというよりは軽めなアンバーでクリスマスのポマンダーっぽいシトラスクローヴ的な香りでもあります。アンバーグリスだったら、Orange Spiceの方が強いと思います。Orange Spiceはアンバーグリスの動物香を感じますよ。

30、La via del ProfumoのAmbra Gris
動物香料であるアンバーグリスのチンキそのものです。チンキ剤なので、濃縮されているわけではなくてそのまま使用するタイプのものなのですが、動物臭は驚くほど強くはありません。でも、動物香なんですけどね。シベットほどでは・・・。


琥珀のイメージ系(濃厚なもの)
Eden BotanicalsのAmber Essence Oil (この種類全部ですね)
Attar BazaarのPersian Amber 強烈なインパクトです
Tom FordのAmber Absolute 洗練されたキレイな香りです

琥珀のイメージ系(使いやすいもの)
Palazzo VecchioのAmber del Nepal 良さを残して使いやすくした感じ
Ave LuxeのAmbra Tibet オイルなので緩やかな香たちです
Il ProfvmoのAmbre d'Or クセが押さえられていてわりとシンプルです

アニマル系の香り
Palazzo VecchioのAmber Gris ちょっと身体につけるのはどうかと・・・
La via del ProfumoのAmbra Gris 本物の天然香料です
Parfum d'EmpireのAmbre Russe 動物臭はするけれど、僕は好きです

インセンス系
ReminiscenceのAmbre パウダリーさが一番強いです
Santa Maria NovellaのAmbra 樹脂っぽさよりもパウダリーさが強いです
CashanのAmbra メンズのインセンス系という印象

カジュアルで使いやすい系
Marc JacobsのSplash Amber 樹脂っぽさも動物臭もインセンスさもないけれど、これが「合成香料のアンバー」
Bath & Body WorksのSensual Amber 樹脂っぽさも動物臭もインセンスさもないけれど、これが「合成香料のアンバー」
L'OccitaneのAmbre 少しインセンスっぽさはありますが、香りたちがライトです

少し毛色の違う系
Nez A NezのAmbre a Sade ベリー系と組み合わせたのはこれだけかも
HermesのAmbre Narguile 甘さが強くて独特です
Serge LutensのAmbre Sultan 唯一無二系

総括
アンバーと一口に言ってもいろいろと種類があるわけで、アパレル系のいわゆる量産品に使われているアンバーというのは「少し甘いウッディ系」と「少し甘いインセンス系」のどちらかだと思います。上のカジュアルで使いやすい系のものが典型なんですけど。香りが濃くなるにしたがってマニア向けな香りとなっていきます。アンバーの香りは、他の香りとの相性も良く、持続も長いことからベースノートに使われていますが、単独でも濃厚であれば全く問題なく大きな主張を持った香りだと思います。

こうして見ると、アンバーグレスを模倣していたはずのアンバーですが、アンバーグリスっぽい香りがいかに少ないのかわかります。 時代とともに香りのイメージも使いやすく変化してきたんでしょうね。

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