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樹脂系の香りを比べてみよう!!

フランキンセンス(オリバナム、乳香)
フランキンセンス、オリバナムと言い方はいろいろあるのですが、産する植物の素性が産地によって様々なようで、B.caeteriiから採取されたもののみをオリバナムと言うという説もあります。そう、この香りは樹木から採れるResin(樹脂)なのです。東北アフリカ、南アラビアまたインド等の痩せ地に自生する潅木から採れるようで、ゴムのように潅木に傷をつけて樹液を採取します。樹皮の内側に樹液を蓄える組織があり、傷が出来るとそこを保護しようとして樹液が出てくるわけですが、その樹液は乳白色です。空気に触れると固形化し、色も黄色く変化していきます。良質なものは透明感があります。

フランキンセンスはミルラと歴史を同じくしており、古代の呪術師(首長)によって、宗教上の儀式に用いられてきました。エジプト、ギリシア、ローマの古文書や宗教書にも度々登場する香りです。また、仏教では線香、抹香のイメージですが、キリスト教はこのフランキンセンスやミルラを薫香として使用してきたことでも有名です。樹木から生じる樹脂には不思議なパワーが宿っていると信じられていたため、民間薬としてもリューマチや神経痛の薬として広く用いられてきました。水蒸気蒸留によってオイルを得るようになったのは16世紀になってからのことです。採取が簡単な樹木もあるようで、その樹木から採取されたものが代用品として広く用いられているようなのですが、正式なフランキンセンスとは主成分が違うために、焚いて判断をするようです。

ミルラ(没薬)
ミルラはフランキンセンスと同じく樹木から採取出来る樹脂で、ウルシ科、ミルラノキ科の樹木より採取します。東アフリカ、南アラビアの特に紅海沿岸の乾燥した地域に自生する潅木で、樹木のイメージは僕は「カラタチ」でした。

樹液は最初黄色なのですが、空気に触れると赤褐色となって凝固します。甘くスパイシーなバルサム調で、苦味と辛味もあるそうです。これは後ほど確認しますが。フランキンセンスと同じく、香料として、薬として用いられてきたようです。香料としての使用はギリシャ神話まで遡るようで、「樹に姿を変えられたアドニスの母が嘆き悲しんで流した涙から転じた」とあるようです。「出エジプト記」では「聖なる油」と記しているようです。ミイラを造る際、死体保存のために詰められていたことは有名ですよね。

フランキンセンス同様に、等級というか質があるようで、樹皮上から摘み取ったものが1級品(画像参照)、地面に落ちて砂などを巻き込んだものが2級品となるようです。桜の樹から採取されたもので、焚くとミルラの香りがするものをミルラとして販売しているのもあるそうですが、それが3級品だそうです。東洋や中東では、このミルラを粉砕して抹香や線香に練って入れて使用しています。

同じ系統の樹脂では「オポポナックス」がありますが、オポポナックスは甘いのですが、ミルラは薬物的な辛さがあるのが特徴だそうです。これも以下で試してみましょう♪

それぞれの精油とフランキンセンスの通常品と上質品、ミルラの通常品と上質品と用意しました。
アラビアでは、フランキンセンスを、朝昼晩とアラーへ祈りを捧げる際にも焚いているそうです。
とても日常的に使っているのですね。 逆に、ミルラは日常的には焚いていないとのこと。
こちらは、粉砕して少し焚くとか、混ぜてインセンスとして使用することがあるのだそうです。
日常的に焚くのはフランキンセンス、特別な時に焚くのがミルラなのですね。
いざ、焚いてみましょう♪

■フランキンセンス
通常品(アラビア産)
上質品(アラビア産)
このようにして香炉の上に専用の炭を置き、炭に火を付けてから欠片を乗せます。すると、もくもくと燃えるわけですよ

実際に燃やしてみると、明らかに精油とは違いますね。通常品と上質品も全く違う香りで、上質品の方が甘さがあります。とても良い香りでクセになりそうなくらい。精油は、通常品のフランキンセンスの沢山入った袋を香ったり、そのものを触った手に残っている香りの方が近いように感じます。上質品の方は、袋から香るとレモンっぽい酸味があって、すっきりとしているんですよ。やはり焚くという行為は、煙を伴いますから、スモーキーな香りが強く出てきますし。イタリアでたまたま入った教会で焚かれていたのはこのフランキンセンスにセージとかハーブを焚いた香りだったのかなぁ。薬局とか教会の香りですよ、フランキンセンスって。海外を旅行して経験のある方ならば記憶が蘇る香りなんじゃないかなぁ。やはり、上質のものの方が香りがすっきりとしていますね。

■通常品→袋のまま/精油っぽい、焚く/教会で香るようなスモーキーさ
■上質品→袋のまま/レモンっぽい酸味がある、焚く/通常品よりも甘さがあり、香りが深い



ここからが 追記分です。

イエメン産
ケニア産
インド産

イエメン産とケニア産はとても似ていて、固形のままでしっかりと香ります。一方インド産は固形ではほとんど香らないんです。焚いてみると、イエメン産とケニア産が焦げていくのに対し、インド産は溶解します。香りはインド産が一番クリアな香りなんですよ、びっくりです。どれが上質なんだかさっぱりわからなくなってきました・・・。

■ミルラ
通常品
上質品
こちらも両方を燃やしてみました。通常品の方が香りが薄くて、雑多な感じがします。でも、精油はこちらに近いんですよ。上質品の方はスパイシーさがあって、焚き火のような香りもするし、甘さも辛さも感じます。これは、教会で香っていた香りとは少し違うので、やはり日常的には使っていないんだろうなぁ。上質品はどこなくお香っぽさも感じるので、お香に組み込まれているのもわかります。香りも上質品はとても強くて、ブワーッと煙も立ち上がり、辺りに広がります。この上質品はまだどことなく柔らかさが残っていて、手で崩れてしまいます。少し崩して、欠片を焚いてみたわけです。

■通常品→袋のまま/ドライフルーツのよう、焚く/あまり強い香りはなく、スモーキーさが強い
■上質品→袋のまま/ドライフルーツのよう、焚く/スパイシーで少し甘く、よーく香ると精油っぽさを感じる



総括精油そのものの香りではないのですが、しっかりと精油の香りを含んでいることがわかります。特に、フランキンセンスは通常品の香りの中に精油っぽさを感じます。
もっと強い香りかと思ったら、わりと穏やかな香りで、フランキンセンスは日常使いしていても平気だなぁ、という印象でした。ベンゾイン他の樹脂系のものも手配していますので、追って試して追記したいと思います。


と、ここまでをアップしていたのですが、後日談として以下の追記を致します。

■炊き方
香炉で炊くとスモークが強くなってしまいます。炭を使うのだからしょうがないんですけど。そこで、アロマ用の製品を100円均一で購入してきました。100円均一のもので、上に器を置くタイプだったのですが、その器の代わりに、直接お弁当用のアルミを乗せます。そして、下から無香料のキャンドルを付けるわけですよ。すると、純粋に香りがわかるようになります。

これは画期的!!

左の画像をクリックすると大きな画像になりますので、よーく見て下さい。樹脂が溶けていますよね。そこからすーっと煙となって立ち上っていくわけです。ちなみに、画像のものは「ベンゾイン」です。200円で完成しちゃうんだから、すごいです!!


ということで、この簡易香炉を使用して新たに購入したレジン系を試してみました。

■コパル
コパル(メキシコ産)
ブラックコパル(メキシコ産)
ゴールドコパル(メキシコ産)

中南米のアステカ文明やマヤ文明で使われていた樹脂系の薫香で、ヨーロッパではミルラと同等の扱いをしていたようです。産出樹木ははっきりとしていないのですが、やはり国によってまちまちなのかもしれません。産出国が一緒ということで3種を購入してみたのですが、通常のコパルはとても細かいんですよ。まるで砂のようです。大きなものほど高価なんじゃないかなぁ、とこれを見て感じました。

コパルとは、琥珀と呼ばれる地域もあるようですね。琥珀も樹脂ですから似た感じなのはしょうがないんですけど、琥珀よりも溶解しやすいのだそうです。ということで、レッツ、チャレンジ!!

■コパル、ブラックコパル、ゴールドコパル
張り切って試してみたのですが、大きな違いがわかりませんでした・・・。ゴールドコパルが少し雑味のない澄んだ香りのように感じ、ブラックとコパルは雑味があるちょっと複雑な香りでした。でも、ミルラとかフランキンセンスと香りは大きく違わないですよ。やっぱり樹脂系って似てますよね。

■ミルラ
ミルラ(ケニア産)
ミルラ(アラビア産)の通常品
ミルラ(アラビア産)の上質品

上で試してみたミルラはアラビア産なんです。そして、粒も大きいです。しかし、新しく購入したミルラは、これまた砂利のような細かさなんですよね。で、色もカラフルなんです。上で焚いてみたミルラとは全く違う雰囲気ですが、焚いて比較してみました。

■ミルラ(ケニア産)、ミルラ(アラビア産)の通常品と上質品
ケニア産のものと、通常品のものは加熱しても溶解せずに焦げて行きます。それだけ不純物が多いということなのでしょうか。上質品だけが香りがよく、解けて香っていきます。購入する時は、不純物の少ないクリアなものを購入した方が良さそうですね。溶解しないで焦げていくと、煙だけが出ますから。ベンゾインやコパル、フランキンセンスに比べて甘みが少なく、渋めな樹脂香です。

■ベンゾイン(スティラックス、安息香)
ベンゾイン
ベンゾインの精油
ベンゾインは精油があるので、精油と比較してみました。精油はとても粘度が高く、粘度というより、硬度という感じでべったりとしています。かけらを取り出して、アルコールに漬けておくと溶解して希釈液が出来ますので、それと比較してみました。

■ベンゾイン
溶解した精油希釈と精油そのものがまず違い、希釈したものよりも精油そのものの方がバニラのような甘さがあります。でも、実物を焚いてみると、確かに甘さはあるのですが、精油ほどの甘さは出てきません。 でも、他のものと比較すると一番甘いんだよなぁ。結構好きな香りです。

■ググル(グガル、グッグル、Guggulu、Guggul)
インド産
カンラン科の潅木のググルツリーの樹脂です。ググルって、アーユルヴェーダでも有名なハーブ樹木で、漢方なんかにも用いられているようです。インドからアラビアにかけて広くある樹木で、ゴムの樹から樹脂を得るように傷をつけて採取します。香りも似ていることから「インドミルラ」とも呼ばれていて、大切な薫香として用いられているそうです。

■ググル
そのものの香りはあまりないのですが、焚くと香りが広がります。ミルラとは全く違っていて、少し甘く、焼きとうもろこしのような香りがします。やっぱり種類によって違うのだと思いますが、うちのものは2種あるうちのどちらもこのような香りでした。

■ラブダナム(ロックローズ、シスタス)
主にスペイン地方で採取されるロックローズ(シストローズ)の葉から取れるゴム状の樹脂。葉からの採取なのですが、香りは樹脂系です。アンバーやムスクの香気もあるため、香料としてはよく利用されていますよね。これは、べっとりと塊なのに少しまだ柔らかいんです。薄緑色をしているものが高価なのだそうですが、これは黒褐色に緑が入った感じです。一般品でしょうね、きっと。なかなか固まりで入手は出来ないようですから、貴重な一品です。でも、焚いてみるんでありますw

■ラブダナム
すごくべっとりとしていて、カッターで少しだけ切って焚いたのですが、カッターの刃についたものがとれないくらいにべっとりしています。香りは精油と全く違っていて、甘く苦く、、動物的です。そうか、アンバーやムスク的香気を補助するという役目はぴったりな気がします。

■マスティック
ギリシア中心に生育しているマスティックという樹木の樹液なのですが、焚くというよりは古代から「ガム」として利用されてきたようです。マスティックについての記述はこちらに詳しいサイトがあります。これを噛むことで、歯がきれいになるだけでなく、口臭が甘い香りに変わるとして人気だったようです。日本でも、歯磨き粉やガムとして出回っているので、見た方も多いのかも。その、樹脂は薄い黄色でとてもキレイなんです。マスティック自体は、香料として香水に使用された例は、僕は知らないんですけど・・・。パンやお酒の香り付けに使われたり、トルコではアイスクリームにも入っているそうですよ!

■マスティック
解けてしまう樹木の香り。すっきりとしていて、少しだけレモンっぽい香気もあります。香りは樹木というよりも葉の感じですっきりとしたハーブ香というべきかも。とても優しい香りです。

■琥珀(アンバー)
古代から薫香として使われてきた琥珀。琥珀だって樹脂ですからね。焚くと甘い香りがするといわれていて、動物香料のアンバーグリスと香りが似ているなんて話もあります。(アンバーグリスとアンバーの関係は諸説するのですが、個人的には区別するためにマッコウクジラの方にグリスを付けたという説が好み)果たして、アンバーグリスは香りが似ているからアンバーグリスという名前になったのか、色が琥珀色だったからなのか、香りを確認することで個人的に納得が出来るかな、と。ご自身で採掘されたハルソラさんに貴重な琥珀を分けていただきました♪

■琥珀(アンバー)
他の樹脂系と同じく溶けてしまう部分と炭化するものとあります。香りはやはり独特な樹脂香で、甘さは他のものの方が強いなぁ。アンバーグリスと似ているかと言われると微妙です。アンバーグリスは樹脂系の香りではないので、根本的に違うんですよ。でも、薫香系と言われるとなんとなくわかる気がします。でも、僕は色が琥珀色だった説に一票だなぁ。直接火をつけると燃え上がります。その中に含まれる香りは、うーん、広い意味で樹脂香で、アンバー系の香水とは似ても似つかない香りでした。これも、アンバーの産地や採取樹木が関係しているの?琥珀のアンバーで天然香料は採取可能なのかなぁ。いや、樹脂系の香りが出来ているんだから可能なはずですよね。焚く香りと精油は別なのかなぁ。謎が深まってしまいました・・・。

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