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■何故、今バルセロナなのか。

 

 

フィレンツェでの展示会が終わり、速攻でバルセロナに向けて飛び立ちました。僕にとっては二度目のバルセロナ。でも、何故今バルセロナなのか・・・それは、Carbonnelというスペインの香料会社を訪れるためでした。バルセロナにあるならば、近い場所なら行ってみたいと思っていたのですが、市街地からわずか10数キロだという好立地な上、数年前にこの会社の三代目、Christian Carbonnel氏と知り合っていたのです。

 

 

■隅々まで案内してくれる

Christian Carbonnel、通称クリスの車で到着したのは彼のオフィスがある工場。そこで初めて彼の会社の歴史を知ることとなりました。1925年に祖父Maurice Carbonnel氏が創設した会社。当初はスペイン産の精油、スパイクラベンダー、ローズマリー、タイム、ラブダナムなどを蒸留して販売していたそうです。今では、バルセロナだけでなく、フランス、ドバイ、ブラジル、コロンビア、エクアドル、エジプト、インド、インドネシア、イラン、ヨルダン、モロッコ、ナイジェリア、ペルー、フィリピン、ポルトガル、タイ、ベトナムなど各国を拠点にしています。祖父は早くに亡くなられたそうですが、今は親子で調香師としてご活躍。

彼の説明で初めて知ったのは、Molinardの古き良き時代、今のようにお土産品を作っていたわけではなかった頃のお宝パルファムたちを製造していたのは、バルセロナの彼の会社だったということ。ボトルには彼の会社名が製造元として刻まれています。

 


 

当時のグラースにも製造する会社はあっただろうに、Molinardはバルセロナの彼の会社を選んだわけですよね。当時も今も、香料会社と言えばスイスとグラースがメインだと誰もが思っているでしょう。でも、実際にはスペインがかなり力を持っていることはあまり知られてはいません。大手香料会社に香料を卸していたりもするそうなのですから。彼の会社は海外の産地に農家を抱えていますので、自社精油がたくさんあります。それらが大手の名のもとに流通していくわけですよ。彼は、スペイン発なのだと言いたいと。それは今年出かけたカンボジアの良質なペッパーが、タイやベトナムに運ばれ、タイ産、ベトナム産と名乗られてしまうことに似ています。その要因は、会社を創設した曽祖父がそういう方だったから。前に前に出るようなタイプではなく、縁の下の力持ちであろうとしたのです。会社にはその当時の貴重な資料、つまり原料価格やレシピなどが残されていました。お宝ですよ、お宝。書籍になるような代物です。

 

 

彼のお宝コレクションをまずはチェック。この棚には基本的にMolinardのヴィンテージがぎっちり。ラベルもありました。

 

 

そして、その背後に見えているのは、彼の会社が手がけた香りたちがぎっしり。彼の会社は中身だけ作るOEMと、調香から全てを行う事業とを行っています。だから、調香した処方を持ち込んで中身(ジュース)を作ってもらうことが可能なのです。今、僕が作っている香水を大分のオフィスで作るか、バルセロナの彼の会社に委託するべきか考えていたのです。それに、理由はもう1つ。自分が使っている香料が彼の会社にあるのかどうか、あれば香りの違いをも比較したいという思いから。

 

 

彼の会社にはたくさんの調香師がいますが、彼が手がけた香りは、Santi BurgasXerjoff、Sospiro、KemiKajal、The Fragrance Kitchen、Rance 1795・・・最近ではMasque MilanoのMandara、ZoologistPandaなど。そう、Pandaを完全に作り替え、ランクアップさせたのは彼。

 

 

彼に依頼をすると、様々な利点があります。まず、無くなってしまった、販売が終了してしまったコンパウンドがあったとしましょう。彼らはそれに近い香りを作り出し、個人用に保管をしてくれます。もちろん僕のフォーミュラの中にあるオリジナルのコンパウンドも作って保管しておいてくれます。精油でも同じで、近い物にしてくれるわけです。

 

 

彼の作る香りにはたくさんのウードが使われています。でも、それは彼の会社の顧客の多くが中東にあるというのも大きな理由の1つでしょう。彼らは中東向けの商品作りを行うことで成長したのです。そんな理由もあり、彼の会社のオルガンには8種類の天然香料のウードがありました。8種共に産地が違い、香りも全く異なります。ウードってこんなに種類が多かったのか、と目からうろこでした。これならば、どのような形であれど、それもウードの1つなのかもしれません。

 

 

奥の香料部屋では、調香師たちが使用する香料が少ない容量で保管されています。これはうちのオフィスでも同じこと。

 

 

天然香料はこの棚の中にぎっしりと。アルファベット事に、産地違いも含めてフルラインナップ。ナガルモタのみがアルファベットから外れてコーナーとなっていたのですが、それはそれだけ近年の需要が高いことを意味していました。みんなが良く使うから個別にしているのだそう。

オフィスのある棟の横には広い工場がそのまま隣接していました。容器を洗浄しているスタッフ、彼は親子で従業員。ここにはそうした家族単位で働いている方が少なくないそう。みんなみんな昔からの仲間なんですね。その他にもたくさんの香料ボトルが並んでいました。ウードも寝かせてあるというものがとにかくたくさん。それを見てしまうと、彼が「本物を使用している」のは明らかです。

工場内ではまさに出荷待ちの荷物がたくさんありました。その先は中東がメインでしたが、中にはベトナムもありました。コンパウンドを輸出するだけでなく、製品化しての出荷も行っていますよ。

 

 

クリスは一見強面ですが、とってもユニークです。集めているのはドクタースランプの小さなフィギュア。彼の車で流れていたのは宇多田ヒカルと浜崎あゆみでした。偶然ではなく、彼はいつか宇多田ヒカルのコンサートに行くのを夢見ているそう。なかなか開催しないんだよ〜、と。

彼の会社のロゴマークは、バラがモチーフです。でも、それとはわからない。だから、彼は自分の世代になったらどんどん変えていくのだと言います。工場の在り方も、事業の進め方もどんどん新しく時代に合わせていく、と。

 

 

この日、僕がお会いしたのはクリスだけではありませんでした。なんと、バブル期からたくさんのファッションフレグランスを手がけてきた、いわばレジェンド、マスターパフューマーであるRosendo Mateuさんがいらっしゃいました。彼は、リタイア後息子さんと自社を立ち上げ、そこで様々な企業とコラボして作品を作り、昨年から自身のラインをスタートさせました。彼の香水もCarbonnelで作られていますし、調香師としてCarbonnel社に参加しています。この日、こちらにいらしたのは、10月23、24、25日と3日間Carbonnel社で調香セミナーを開催するから。原料となる香料の説明、アコードの説明、そしてブレンドまでを教える3日間。最大で5名だそうですから、参加は争奪戦となること必須です。直接の指導だなんてラッキーすぎます。

 

 

そのラッキーな直接指導の一端を体験してきました。彼が今手がけている作品たちを、いろいろと香らせていただいたのです。とにかく、楽しい。とにかく、ステキ。今こだわっているベチバー系のウッディノートは、様々なバリエーションがあるけれど、僕は合成香料が好きなんだ、と言います。そう、調香師はみな合成香料が好き。精油は例えていうならば掘りたての野菜のようなもの。玉ねぎだって土を落として洗浄し、皮を剥くじゃないですか。そうして初めて美しい姿になる。精製された天然香料や、精油から分離精製された主成分などを香っていると、精油そのものが粗雑に感じられることが少なくないのです。アロマラセピーならばそれで良いでしょう。薬効が目的なのですから。でも香水とするには洗練された姿にしなくてはならない。彼が発売した5種の香りの中で、No.1のレヴューを僕は、「とても品質の良い精油感漂うシトラスが弾けます」と書きました。1か月後、この会社でその理由が判明したのです。彼はCarbonnelが取り扱っている最高級のシトラス精油を使用していたのです。価格は通常品の数倍。僕が彼の香りの中で好きな部分、残念な部分、販売するのに必要と思われる要素など、忌憚ない意見を直接お伝え出来たのもこうした場所ならではのこと。

僕が今作っているのは、こうこうこういう香りで、こういう香料なんかを使っていて・・・と説明したら、その香料は私も大好きでね、世界で一番最初に香水に使用したのは私なんだよ、だって!!

 

 

その次にお会いしたのは、この会社に製造を委託しているRamon Monegalです。彗星のごとく数年前に登場し、一気に高級市場で名を挙げたブランド。Rosendo Mateuさんと同様に、かつてスペインの香料会社に所属し、数多くのフレグランスを手がけてきたマスターパフューマーであるRamon Monegalさんの自身のブランドです。驚くなかれ彼らのルーツはMyrurgia(ミルーヒャ)にあるのです。Myrurgiaをご存じでない方もいるかと思いますが、ChanelがNo.5を生み出した時代から活躍しているスペインの老舗パフューマリーです。1900年代初頭、Esteban Monegalによって創設されたMyrurgiaは、その後もMonegalファミリーの手によって大切に守られてきました。

 

 

Myrurgiaの輝かしき歴史を書籍を見ながら説明下さいました。そこには、偉大なる遺産が・・・。そして記念に・・・と最新作のフラメンコをサイン入りで頂戴してしまいました。

 

 

フラメンコはプラスティックではない新素材で作られたハードボックスに収められ、190ユーロという高価格帯の商品です。でも彼らがこの価格帯の商品を次々と発売しているのにはもちろん理由がありました。この画像の中央右奥にあるフラメンコダンサーが見えますか? 彼らは、昔に自分たちが作り出した香りのモチーフを利用し、デザインを再現し、現代に蘇らせていたのです。なんと素晴らしい!! Ramon Monegalさんは4代目、そして隣にいるのがOscar Monegalさんで5代目。彼には息子さんがいるので、その子が6代目になるそうです。た、楽し過ぎる!! 実際、この日は次の香りの制作に入っていて、手書きのレシピがありました。調整を行っていたようです。

 

 

全員調香師だよね、と4名での記念撮影。彼らにスペインの香水美術館を教えてもらい、Ramon Monegalの本店に行く約束をしました。その様子はまた別の記事にて。クリスにはこの後も、食事やら観光やらとにかく終日お世話になりました。こんなに楽しい訪問になるなんて予想をもしてなかったよ。

 

 

調香師というのは、ブランド側がクローズドにしたいと言われたら名前を明かせない職業です。それゆえ、クリスも名を伏せて調香した香りが山のように存在しています。えー、あれもそうだったの? と驚くものがあったりなんかもして。その香りが僕は大好きだったりもして。

作り手たちはいつも笑顔で迎えてくれます。直接話をし、思いを聞くことで初めて知ることもあれば、隠れていたエピソードに驚かされることもたくさんあります。でも、やっぱり大切なことは人となりを知ることですよね。今回の訪問を機に、様々な方たちとのご縁が生まれ、帰国後もやり取りをするようになりました。ありがたいご縁を紡いでくれたクリスに心から感謝!!

 

(26/09/2017)

 

 

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