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Sampleレヴュー

■Philtre (2024年)

ボトルリニューアルをして最初の香り。フィルトルは惚れ薬、媚薬のこと。トリスタンとイゾルデの物語のように、シェイクスピアの真夏の夜の夢のように。そこで彼は現代の香りの惚れ薬を作ったわけです。

 

 

フラワーステム、ブラックペッパー、カーネーション、クローヴ、ジャスミン、レジン、ローズ、バニラ

カーネーションを軸としたスパイシーフローラルです。ムエットで香った際には少しアニマリックにも感じられたのですが、サンプルではとてもアブソリュート感のある天然香料らしいカーネーションにクローヴがスパイシーに重なって広がるのです。ただ、濃度的に力強さはそこまでなく、パワフルではあるけれど、身体が付かれるほどのものではないという感じですね。レジン類はベンゾインやスティラックスがメインなのではないかと思いますが、ハニー調のオリエンタルなレジンをベースにした、全体としてカーネーションアコードといったところ。ただ、天然香料のみのアコードですから、それはそれはリッチな香りで、ハニーノートがかなり長く持続します。(25/04/2024)


■Slowdive (2017年)

けだるさを感じるインドの夏の風をモチーフとしたタバコをテーマとした香り。

ネロリ、オレンジブロッサム、タバコフラワー、ビーワックス、ドライフルーツ、チュベローズ、レジン

これは、タバコというよりもハニーです。グルマンにはならないような、美味しくないハニー。こってりと甘いトロンとしたハニーが、シナモンやアニスのようなスパイスと共に香り、その中にアクセントとしてタバコがあるかないか、というもの。ドライフルーツやチュベローズのようなフローラル感は感じられるほど強くはなく、ネロリやオレンジブロッサムの爽やかな部分もインパクトがありません。もう少し緩急つけた方が香水としては良かったのかな、と思うのですが、とにかくハニーが直球過ぎてそれだけでクラクラしてしまいました。グイグイと迫りくる甘さに好みは分かれそうというのが第一印象でした。でもどうしてインドでハニーなのだろう。最初の香りから天然香料率が高かったのですが、リリースしていくごとに合成香料の使用率が増してきましたね。(16/01/2018)


■Arbole Arbole (2016年)

スペインの詩人で劇作家のFederico Garcia Lorcaのポエムにインスパイアされた香り。シダーウッドとサンダルウッドを軸としたウッディな香りのイメージに。

トップ:パチョリ
ミドル:シダーウッド、サンダルウッド
ベース:バニラ、トンカビーン

トップにバニラを配置するとはユニークな調香だと思って香ると、ウッディではなく香りはグルマン系にも思えるパウダリーなバニラでした。アーモンドのニュアンスの強いバニラで、平坦なオポポナックスベースのよう。深みがなくあっさりとしているので夏でも使えそうではあるのですが、少し調香としては貧弱にも感じます。ヘリオトロピン、クマリンとアーモンドをバニラとシンプルなウッディノートで包み込んだような印象で、それ以上でもなくそれ以下でもない香り。ただ、Guerlainのオポポナックスベースにも通じる香りですので、GuerlainのShalimar辺りがお好きな方はお好きな系統だと思います。(27/02/2017)


■Dilettante (2016年)

ボトルリニューアルをして発売となった4つ目の香りで、タイトルはイタリア語で素人の愛好家、好事家のこと。でも、うわべだけの知識しかない人のことも指す軽蔑の言葉でもあります。

オレンジブロッサム、ベティグレン、オレンジ

イタリア語ということでオレンジなのでしょうか。シトラスの香水は山ほどあるわけで、135ユーロなんだからそれなりの驚きを感じるほどのものでないと無理だよ、なんて思っていたのですが、香ってみてびっくりでした。これはオレンジブロッサムアブソリュートを使用しつつ、ワイルドさを軽減したような蒸留所の窯から漏れてくる香りを思い起こさせるものだったのです。ビターオレンジやオレンジブロッサムアブソリュートの特徴ある苦みを感じさせつつも、メンズっぽくはならない形でまとめられており、とてもパワーを感じる香りです。ただ、天然香料が多い分持続は短く、感動したトップから残り香になるまでがわずか10分で、その後は薄っすらとした残り香が数時間続きます。ビターハニーなこのラストノートも悪くはないのですが、トップのパワーが素晴らしかっただけに少し残念に感じてしまうのです。(24/08/2016)


■Voyage (2015年)

限定250本として作られた香りで、テーマはインドのピコラ湖(Pichola)。湖に浮かぶ18世紀に建造された宮殿を改築したホテルが人気の場所。とても神秘的な湖です。

シトラスノート、アンバー、スエード、バニラ

3つ目の香りにして早くも合成香料を使用した香りとなりました。香りはシトラスアンバーが軸なのですが、シトラスノートが明るくはなく、オリジナルで作り出したアンバーノートにスイートオレンジを足した、という感覚の香りです。柔らかな温かみのある香りが広がりますが、スエードも意識するほど強くはなく、なんだかとても「ありがち」なテイストに感じられてしまいます。肌に残るラストノートは教科書的なアンバーノートですから。テーマがインドですから、もっともっとトップでスパイスが弾け、カラフルなイメージで楽しませてくれた方が135ユーロの価値はあったのかな、と感じてしまいました。(25/02/2016)


■Shangri La (2014年)

シャングリラは桃源郷ということでしょうか。やっぱりピーチを使った香りに。タイトルはもちろん1933年に出版されたJames Hiltonの小説Lost Horizon(失われた地平線)の中の理想郷であるShangri Laです。

トップ:シトラスノート
ミドル:ピーチ、ジャスミン、ローズ、アイリス、スパイス
ベース:ベチバー、オークモス

ピーチの香るフルーティーフローラルにしたのではなく、往年のコティのシプレを目指したそうで、香り自体もクラシカルなシプレ調のものとなっています。ピーチの精油やアブソリュートが存在するのかどうかはさておき、抽出エッセンスや天然由来の分離したピーチアルデヒドなら存在します。でも、それを使用してまで天然100%と謳うくらいなら、合成香料を使用してまとめた方が、価格的にも香り的にも良いのではないかと思えてなりません。トップでは確かに精油感、アブソリュート感の豊かなフローラルシプレとしてまとまっているのですが、時間と共にシナモンやクローヴの残り香を感じる甘さを伴ったスイートウッディへ変化して落ち着いてしまい、シプレ感を長く楽しむことが出来ません。もちろん決して悪い香りではないのですが、価格を考えると他の商品の方が楽しいかな、と思えてしまうというのが正直なところ。(15/12/2014)


■Moon Bloom (2013年)

天然香料100%であることにこだわらない方が素敵な香りが多いと思うのですが、チュベローズアブソリュート率が高ければ、どのような配合でも素敵な香りのはず。

チュベローズアブソリュート、ジャスミンアブソリュート、イランイラン、ココナッツ、グリーンノート、スパイス、レジン

香りはそれと一発でわかる高品質。やはりチュベローズアブソリュートがたっぷりと使用された香りでした。ジャスミンアブソリュートも多く、往年のJoyに通じるジャスミンアブソリュートがチュベローズとココナッツと共にセクシーに広がります。ココナッツは以前ならば天然香料など流通はしていなかったのですが、さすがに天然香料を求める動きに研究が進んだのか、近年ではオイルが生産されているのです。それでもフローラルノートを生かすためのアクセントですので多量に配合されているわけではありません。チュベローズとココナッツがセクシーに香った後、香りは少しずつジャスミンが強くなり、ココナッツではなく樹脂の甘さと共に薄れていきます。(15/12/2014)

 

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