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Sampleレヴュー

■Provence (2022年)

精油の産地として最も有名なのはプロヴァンスなのではないでしょうか。Sebastien Crespはラベンダー、ラバンジン、ラバンジンアブソリュート、クラリセージ、クラリセージアブソリュート、ヒソップ、コリアンダーなどをプロヴァンス産として使用したようです。

 

 

ラベンダー、ヒソップ、クラリセージ、スペアミント、コリアンダー、ナツメグ、ブラックペッパー、ベルガモット

ラベンダーが颯爽と香る爽快な香りかと思うとそうではなくて、アブソリュートをいくつか使用して落ち着いたトーンのアロマティックな香りに仕立てています。ラベンダーを軸としたフレグランスの中では少し異質にも感じられるトーンで、おそらくベースには合成のウッディノートとムスクがたっぷりと添えられているのでしょう。精油感は強いけれど、全体としてはとても香水らしく感じられるのです。ラベンダー好きな方には少し物足りなさを感じるテイストかもしれませんが、とてもユニークなバランスだと思います。(31/05/2023)


■Chaco (2022年)

ラテンアメリカで二番目に大きな原生林がタイトルとなりました。だからテーマは南米。調香はAlexandra Monetで、ペティグレン、マテアブソリュート、ガイヤックウッドなどが南米産として使用された香り。

 

 

ペティグレン、マテ、ガイヤックウッド、ベルガモット、レモン、オレンジ、アトラスシダーウッド、ヴァージニアンシダーウッド

パロサントなのかガイヤックウッドなのか。南米では聖なる樹木(パロサント)とガイヤックウッドのことを呼ぶようですが、精油としては別物で、パロサントとして流通しているのはフランキンセンスと同じBurseraceae科の樹木です。オフィシャルではそれを混同しており、どちらが使用されているのかわかりません。これは実に面倒な問題です。彼女はマテとシトラスを用いてコロンのようなティーアコードを作り出したそうですが、香りは本当にフレッシュなシトラスで始まります。それを柔らかなウッディノートで支えているため、使用されたのはガイヤックウッドではなくパロサントだと思うのですが、オフイシャルにはガイヤックウッド、ムエットにはパロサントと記載されてあります。トータルとしてはシトラスとウッディノートをまとめたブレンドで、確かに肌に残る少しバニラが香るウッディノートは穏やかで美しいのですが、とても単調で香水というよりもアロマブレンドに近い感覚です。160ユーロならばもう少し楽しい他の香りに惹かれてしまうかも。(31/05/2023)


■Sulawesi (2022年)

ボルネオ島の隣にあるインドネシアのスラウェシ島はパチョリの産地。調香はNicolas Bonnevilleが担当です。インドネシア産として用いられたのは、パチョリ、ナツメグ、ベチバー、ベンゾイン、クローヴです。

 

 

パチョリ、ナツメグ、ジャワベチバー、ベンゾイン、クローヴ、テキサスシダーウッド、ヴァージニアンシダーウッド

これはもう、最初から最後までウッディノートです。パチョリもありますが、シダーウッドの方が強く、トップの弱いロースタートなシダーウッドのトップをパチョリとスパイスが補っているという香り。おが屑調のウッディノートがスパイスと馴染んで残り香になる頃、柔らかな甘さがウッディノートの中に感じられるようになります。トップこそスパイスがありますが、全体としては穏やかで、肌寒い春先に薄手のカーディガンを羽織っているような感覚です。ただやはり精油がメインですので、全体のトーンはとてもシンプルです。近年過剰に使用されているアンバーウッディノートやアンバーグリスが強く残らないため、最後まで穏やかなのです。


■Tierra Maya (2022年)

メキシコのマヤをテーマとした香りは、Ilias Ermenidisによる調香で、中米産のグリーンカルダモン(グアテマラ産)とペルーバルサム(エルサルバドル産)が選ばれました。

 

 

カルダモン、ペルーバルサム、ローズドゥメイ、ダマスクローズ、シナモン、ヴァージニアンシダーウッド

サンプルを間違えたかと思うほど、ハニーフローラルでスタートして驚きました。香りはそこから微かにシナモンを感じさせるフロリエンタルへと変化していくのですが、予想していたほどカルダモンは強くはなく、アレルゲン成分があることから0.41 % までしか使用できないペルーバルサムも強くはありません。ローズなのかもしれないけれど、ローズらしさは強くはなく、シダーウッドもあるけれど、シダーウッドも強くはなく、何だかテーマとなった二つのエッセンスの良さをあまり感じられないオイリーでクマリンの強いシナモンウッディとなって落ち着きます。


■Grande Ile(2022年)

Frank Voelklによる調香で、テーマとなった土地はマダガスカル。マダガスカル産のバニラ、ピンクペッパー、ブラックペッパー、クローヴリーフの香料が使用されています。マダガスカルの本島のことをGrande Ile(大きな島)と呼ぶのですが、本島の北東部のSavaという地域の海岸沿いがバニラの産地です。マダガスカルはとても標高差のある島で、海岸沿いと内陸部では気候が違い、海岸沿いは熱帯で、反対側にあるNosy-Beという島はイランイランの産地です。

 

 

バニラ、ピンクペッパー、ブラックペッパー、クローヴ、ガイヤックウッド、シダーウッド、パチョリ

マダガスカルなのにイランイランがないのは、いずれイランイランをテーマとした香りを作る予定だからなのかもしれません。マダガスカルは本当に多種多様な香料植物が栽培されており、シトラス以外は全てあるのではないかと思ってしまうほど。その中から選ばれた3種は、甘いけれどスパイシーというまさにスパイシーバニラで始まります。バニラアブソリュートのリキュールっぽいニュアンスを探す前に、まずはピンクペッパーが弾けての幕開けです。ペッパーのアロマティックな余韻に重なるバニラの香り。そこにクローヴやガイヤックウッドが重ねられたのは、クローヴの中のオイゲノールや、ガイヤックウッドの中のグアイヤコールがバニラの中のバニリンを合成する際の材料となる、そんなつながりからなのかもしれません。パチョリは強くはなく、とても穏やかなバニラにオイリーなウッディノートが重なって消えていきます。ペッパー類が弾けた後の香りの変化が少なく、全体的にとてもシンプルなまま消えていくのが天然香料が主体であることを物語っています。ただ、精油がメインなのに重くないのは、スズラン調の合成香料やジャスミン調の仄かな合成香料が全体のトーンを明るくしているからです。90%ナチュラルということは、10%は合成であるということ。EdPは多くても20%となると、半分は合成香料が使えるわけです。でも、天然香料の良さを邪魔しない程度の軽やかなトーンのものに使用を制限した、ということでしょう。(29/05/2023)

 

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