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■The Scent of Excellence

 

 

今年は初めての3月上旬開催となりました。日本よりも若干寒いはずだと、まだ冬の名残の衣類を用意していたのですが、会場は暖房が効いていて暖かく、いや暑く感じられるほどでした。今年は前回、前々回よりも広いホールとなり、参加社数もさらに増えての開催に。会場の端で打ち合わせして、反対の隅で待ち合わせして、会場外のホテルで打ち合わせして・・・と会場内をグルグルと歩き回ることとなり、例年以上に足を痛めた展示会でした。それでも、会場が広くなったおかげで1つ1つのブースも広くなり、展示はゆったりとしていたのも印象的で。また、関係者日が3日間、一般開放は最終日のみとなったのも今年が初めてのことでした。

 

 

毎年、凄い人数が押し寄せるのですが、会場が広かったこともあり、今年は比較的ロースタート。いつものような混雑はなく、初日の午前中が空いているという初めての出来事。それでもお昼には例年のような賑わいとなりましたが。毎年、各ブースを順路に沿って歩くようにゾーニングされていて、それがとても面倒で嫌いだったのですが、今年はそれをしてしまうと最終部に誰もたどり着かなくなるだろうことが予想されたのか制限はなくなり、全ての移動が自由となりました。これはとても楽なのですが、ブースを見つけにくいのは毎年のこと。壁を色分けたり、もう少しわかりやすい工夫をして欲しいところですが、デザイン重視のイタリアでは難しいのか。

 

 

真っ先にたどり着いたのはFilippo Sorcinelli のブース。Filippoはインタヴュー(取材)のため不在でしたが、時間通りにスタンバイしていたAlessioにご挨拶。彼はローマ店の店長さんですので、ローマに旅行される際は是非バチカン近くのお店にお立ちよりください。彼がいるはずです。今回、展示会に先駆けて僕はローマ店も訪れていたため、Alessioにまずご挨拶したのでした。

 

 

Filippo Sorcinelli の新作は9つ。親指、人差し指、中指はキリスト教において父(神)、子(神の子)、霊(聖霊)が三位一体となっていることを示すハンドサインであり、祝福のしぐさでは必ずこの指の形で行われます。残りの閉じられた2本の指は神性と人性の両性を指しているとされています。その形をFilippo自身の手で型を取ってキャップにしたもの。彼が関与した8つの教会や場所がそれぞれ香りとなりました。巨大なオブジェの迫力は、会場でもかなり目立っていましたよ。バリエーションに富んだ8つの香りが発売に。

 

 

もう1つXSEのコレクションにホワイトボトルが仲間入り。セックスをテーマにしたキャップはいわゆる皮付きという下ネタ前回な形ですが、今回は香りもそうした内容で、初めてのセックスがテーマとなりました。タイトルもQuickie and Coffee (素早いセックスとコーヒー)で、トイレットペーパーやトイレの便座のイメージから白いボトルになったのだそう。トップはオゾンやグリーンでしたが、その後はとんでもなくアニマリックなムスクが残りますのでご注意を。

 

 

L'Orchestre Parfumからは、展示会より前に公開となり、すでに発売となっているMono Cachemireが公開に。セカンドスキンをイメージさせるウッディムスクで、そのトップには微かなアルデヒドがアクセントに。ゆったりとした音楽を聴きながらの夜の散歩のよう。

 

 

Jacques FathのFath's EssentialにEncens Copalが加わりました。フランキンセンスだけではなく、マスティックやエレミなども活躍している樹脂系のまとまりです。この他にIsaveyの方ではrue de la PAIXという住所がタイトルとなった新作が公開されたのですが、それは1924年創業のIsaveyの100周年を祝うもの。まだテスターのみでギリギリ間に合わせた感じでしたので、発売はもう少し先になるかと思います。調香はPatrice Revillardが担当。Patriceと言えば、今回僕はNombre Noirのサンプル(5mlくらいのミニボトル)を2つ用意していったのですが、1つを彼にあげたのでした。香ったことはあるかと聞いたら、昔に香ったことがあるとのことでしたが、いろいろと役に立つと思うよ、ということで。もう1つはLuca Maffeiにあげたのですが、その際横にいたAntoine Lie(彼はLucaのいるAFMの所属の調香師となりました)が、Nombre Noirは昔かなり好きで実際に使っていた思い出の香りなのだと話してくれました。こうした話のネタになるのがお土産の良いところですよね。

 

 

昨年の展示会で初対面だったArt Meets ArtのTangyですが、その年のうちにNose Shopでの取り扱いがスタートし、来日してイベントまでしたという日本とのご縁を感じている方。今回新作はなかったけれど、次の構想はあるそう。楽しみですよね。

 

 

ボトルリニューアルをしたHiram Greenからはアニマリックなカーネーション、Philtreが公開に。こちらもすでに発売されている香りです。きちんと時間を取って(アポ取って)話をしたかったよ、と言われましたが、アポの時間って展示会だとなかなか守れないんだよ〜。

 

 

えー、もう10周年なの? ってことは出会って10年経ったってこと? と思わず声が上ずってしまったほど。Maison IncensのPhillipが10年前一緒に撮影した画像を見せてくれたのでした。今年は日本をテーマにした3種がデビューです。Osmanthus Shiborii、Santal Wagasai、Rose Umeiiの3種で、Osmanthus Shiboriiは長らくあれこれ名前を変えたりなんだりしていた10年前のものがようやくこのタイトルで落ち着いたのでした。Santal Wagasaiは柔らかなサンダルウッドで、Rose Umeiiはとてもクールな個性的ローズでした。あれ? もう1つありますよね。それは発売日が決定するまで内緒ということで。

 

 

今年はメキシコの画家Frida Kahloをテーマとした作られたHomoelegansのPaloma Y RaicesがGini Parfumに仲間入り。これを機に少しリフォーミュラしたそう。 コーヒーとバニラの強い香りだったのですが、チュベローズがかなり強くなり、チュベローズコーヒーへと変化していました。

 

 

Angela CiampagnaによるLabel Fine Perfumesに続く3つ目のラインThenThereが展示会で初公開に。スペインのマドリッドで活躍しているイラン人ミュージシャンのために作られたもので、4つの香りでデビューです。安っぽい液体が豪華なボトルに入っているのをよく見かけるけれど、私は逆にしたの、と。このシンプルなボトルに真の価値ある香りを詰めたのだと。今年の展示会の中でおススメを聞かれたらこの4つの香りを挙げていたほど、僕は気に入った個性的な香りたちでした。ボトルはこれからゆっくりリニューアルしていけば良いのです。オフィシャルサイトを見るとイメージ画像がそれぞれアップされているのですが、それらは全て生成AIによるもの。時代だなぁ。

 

 

Angela Ciampagnaのブースには他にもKiliquiaが初お目見えしていました。彼女のブースにあったのは、Kiliquiaを製造したのが彼女だったから。アルメニア人のDavid Hovhannisyanによるブランドで、彼は歌手。そしてAngela Ciampagnaと同じくスペインのカナリア諸島テネリフェ在住なのです。アルメニアはまた行ったことがないのですが、少し行きにくいんですよね、情勢的に。Kiliquiaにはまだフレグランスはなくディフューザーのみでしたが、これから石鹸や香水も発売になるそう。楽しみです。

 

 

Angelaは昨年お会いした際に激やせしていたのですが、癌の闘病によるものだったそう。でも、克服して元気な姿になり、とても生き生きと人生の第二ステージょ謳歌していました。だからこの陽気です。ちなみに中央の大柄な男性がDavid Hovhannisyanです。Spotifyで彼のアルバムが聴けますので、ご興味のある方は是非。

 

 

Pantheon Romaからはラファエロから離れたテーマで新作が公開に。Neroneはウードにココナッツとレザーを重ねたオリエンタルウッディレザーに。

 

 

会場入り口でコートや荷物をクロークに預けると、預ける時も受け取る時も大行列で時間がかかってしまう。そんな時には僕はPantheon Romaのブースのバックヤードに置かせてもらっているのです。疲れるといつも商談用の椅子に座りお水やコーヒー出してもらって休憩するという、展示会のオアシス。本当にいつもいつもありがとう、Leone!! 今回は展示会の前にローマ店(本店)に立ち寄り、限定品を購入したのですが、その後に店内の商品が全て完売してしまったのだそう。凄い〜。

 

 

何だか年々痩せていく気がするのですが、Michelは元気です。Room 1015からは初めてのマリンノートが発売に。

 

 

Wavechildは南海岸のサーファーたちがテーマになっているよう。そりゃボトルはブルーだよね。強すぎないマリンが今年の展示会のキーノートになっていたようです。マリンノートの回帰な感じですが、あの頃のマリンノートとは種類が違い、塩っぽかったり、パワフルではなかったりして、スパイスのように使われているのが特徴です。

 

 

Coreternoからの最新作もマリンでした。Ocenoirは夜の海。

 

 

Parfums Dusitaからの新作Pelagosもマリンレザーウッディ。でもマリンはスパイスのような扱いで強くはなく、逆にスパイス類の方が強く感じられるほど。力強いメンズの香りとなりました。ブラックボトルは初めてですよね。しかもExtrait de Parfumなのも久しぶりです。

 

 

De GaborからはAlchermes De Gaborが公開に。ベリー系のフルーツが香るフルーティーフローラルなのかと思いきや、レッドサフランをアクセントとしたとても渋めなオリエンタルレザーでした。もともとSMNのこの真っ赤なリキュールにインスパイアされたのだとか。

 

 

Meson SolのTamas Tagschererとももう10年を超えたお付き合い。また香りは3つですが、早ければこの秋に1つ、来年もう1つ増える予定だとか。

 

 

Tamas TagschererはもともとJ.F. Schwarzloseにいたのですが、独立して企業。でもブランドはオーナーのLutz Herrmannがそのまま続けていて、昨年発売されたEtrangoが新作として公開に。ということは、Lutzももう10年を超えたお付き合いなんだな。

 

 

Parco 1923からの新作はフレグランスではなくキャンドルでした。3つの香りは全てディフューザーと同じ香りで、1つ精油感の強いアロマティックな香りがあるのですが、それが大好き。

 

 

Santi Burgasからも新作はなく、キャンドルでした。 1つは既存のフレグランスと同じですが、他の2つはナッツ系のグルマンとトマトリーフが印象的なグリーンで新作。キャンドル先行でフレグランスが後発という可能性もなくはない。

 

 

Houbigantからはペアが印象的に香って始まるフレッシュフルーティーフローラルのPetales de Magnoliaが公開に。Perris Monte Carloからの新作はなく、次回なのだそう。とても日本人好みな香りでしたよ。後日レヴュー予定です。

 

 

Ciatuからは2つのExtrait de Parfumが追加に。1つはBronthというピスタチオが特産で有名な街をタイトルとしたピスタチオクリームのとっても美味しいグルマンな香り。もう1つは海底でシチリアを支えているという伝説のColapesceをテーマとしたマリンフローラルに。展示会の前にシチリアを旅していて、SiracusaのCaituを訪れたり、Andrea夫妻と食事したり大変お世話になりました。本当に楽しかったのでそれはまた別ページに。

 

 

初日は本当に足が攣りそうなほどクタクタに疲れたのですが、基本的に友人たちへの挨拶が終わってしまった気がします。でも、それもまた例年同様のことなのですが。会場が広すぎて細かく見てられないというか、疲れすぎて見る気を失うというのもあるんですよね。仕事の終わりはまずスプリッツァーで乾杯。そこで気持ちを入れ替えて、この後はパーティーに出かけたのでした。

(14/03/2024)

 

 

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